2015年2月7日土曜日

胃腸炎の吐き気にトラベルミンって効くの?

メトクロプラミドを服用中で吐気が収まらない患者さんに何を追加したらよいかな?

と先日最寄のクリニックから質問があったので、
安くて、めまいとか酔い止めに使うからと、トラベルミン配合錠の追加をおすすめした。
はたして回答が間違っていなかったか不安だったので調べてみた。


まずおさらいとしてトラベルミン配合錠の成分と類似薬は、以下。

トラベルミン ・・・ ジフェンヒドラミン + シプロフィリン(7-ジヒドロキシプロピルテオフィリン) 
ドラマミン ・・・ ジメンピドリナート → テオクル酸ジフェンヒドラミン → ジフェンヒドラミン + 8-クロロテオフィリン
レスタミン ・・・ ジフェンヒドラミン

ジフェンヒドラミンは第一世代の抗ヒスタミン薬で、
制吐作用は、前庭系→嘔吐中枢の刺激の伝播を阻害し、
術後やめまいの嘔吐には有効とされているらしい。



急性胃腸炎に対する制吐薬のコクランレビューがあった↓

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Cochrane Database Syst Rev. 2011 Sep 7;(9):CD005506

P 胃腸炎と診断され嘔吐のあった18歳以下の人
I  経口、静注、坐剤の制吐薬
C プラセボ(もしくは他の制吐薬)
O 治療してから嘔吐が止まるまでの時間

ジメンピドリナート(坐剤)1件、オンダンセトロン6件のRCTが該当
(期間~2010.7.20)

<outcome>
吐気が止まるまでの平均日数(1試験)
ジメンピドリナート坐剤  0.60
プラセボ           0.94
MD 0.34 (-0.66 to -0.02)
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オンダンセトロン(ゾフラン)がわりと良いみたい。
日本では適応が抗悪性腫瘍薬に伴う吐気で、薬価も高いけど。。

上記のレビューのジメンピドリナート坐剤のRCTは↓
Pediatrics 2009;124(4):e622–32.



上記レビュー後のジメンピドリナートの経口薬の試験があったので参照

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Pediatrics. 2012 Jun;129(6):1050-5

P 救急受診でそれ以前の12時間以内に5回以上嘔吐があった1歳~12歳の小児
I  ジメンピドリナート1mg/kg(max:50mg/回)を6時間ごとに経口投与
C プラセボ
O 治療の失敗数(投与後24時間以内に2回以上の嘔吐)

<割付>
可変ブロック割付。8歳未満、8歳以上で層別化
<盲検化>
患者:〇、治療者:〇、評価者:治療者と同じ、検定:?
<その他>
per protocol解析
脱落 68/152=5.3%
サンプル計算 α=0.05, power=80%
7つの secondary outcomes  P = value of .05/7 = .007

<outcome>
2回以上の嘔吐
ジメンピドリナート 23/74 = 31%
プラセボ       20/70 =  29% 
差 0.02 ( -0.12 to 0.17)
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比較的吐気が強く頻繁に嘔吐してしまう患者さんには効果ないのかも?という結果。
坐剤の方で見ている嘔吐が止まるまでの期間はoutcomeとして設定されていないが、
少し短縮傾向にあるみたい(有意差はなし)。

もっと軽度の患者さんにはどうなのか?は不明。


トラベルミンの組み合わせはなくて、ジメンピドリナートの試験しか見つからなかった。
成分から考えるとだいたい同じと考えてよい?



調べても結局よく分からなかったから、
先日のおすすめはあれでよかったのかなぁ。。