2014年7月22日火曜日
抗菌薬の下痢に整腸剤は効くのか?
下痢に整腸剤(プロバイオティクス製剤)は効果があるのか?の続き。
抗菌薬とセットで整腸剤が処方されてくることは多いので、
抗菌薬による下痢に対して整腸剤は効果があるのか?を調べてみた。
用語の定義が不安だったのでおさらい、
・プロバイオティクス probiotics
腸内フローラを改善し人に良い影響を与える微生物
・プレバイオティクス prebiotics
腸内細菌の栄養になったり、腸内環境を改善する物質(オリゴ糖、食物繊維など)
・シンバイオティクス synbiotics
probiotics + prebiotics
参考:健康用語の基礎知識(ヤクルト) http://institute.yakult.co.jp/japanese/dictionary/
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Probiotics for the prevention and treatment of antibiotic-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis.
JAMA. 2012 May 9;307(18):1959-69.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22570464
P:抗菌薬を服用している人に対し
I:プロバイオティクス製剤を併用することは
C:プラセボや無治療と比較して
O:抗菌薬による下痢(AAD)の頻度を減少させるのか?
<検索>
DARE, Cochrane Library of Systematic Reviews, CENTRAL, PubMed, EMBASE,
CINAHL, AMED, MANTIS, TOXLINE, ToxFILE, NTIS, AGRICOLA
言語は特に規定しなかった。
clinicaltrials.govも検索し、International Journal of Probiotics and Prebiotics.を手検索した
<対象>
プロバイオティクスによるAADの治療や予防に関するRCT
菌種:Lactobacillus, Bifidobacterium, Saccharomyces, Streptococcus, Enterococcus, Bacillus
<Study selection >
2名が独立して行った。
不一致はレビューチームによるディスカッションで解決した。
15214件→2426件→82件
<risk of bias>
コクランのrisk of biasツールを用いて行った。
試験の質は低。59試験で評価するための情報が不足していた。
<データの抽出>
2名が独立して、規定の形式にのっとって行った。
不一致はディスカッションにより解決した。
<出版バイアス>
Eggerの回帰検定とBeggの順位検定で検討した。
<primary outcome>
下痢の発生数 68試験11811人
RR = 0.58 (0.50 to 0.68), RD = -0.07 (-0.10 to -0.05), NNT = 13 (10.3 to 19.1)
(異質性:I2 = 54%, 出版バイアス:Egger regression test P = .26; Begg rank test P = .34)
※risk of bias の低い2重盲検RCT 44試験だと RR = 0.61 (0.52 to 0.73, I2 = 50%)
※資金提供等を明示し、利益相反のない12試験だと RR = 0.63 (0.42 to 0.92, I2 = 68%)
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試験によるバラつきや各試験のサイズ、試験の質の問題はあるものの、
抗菌薬による下痢に対してよい効果を期待しても良いみたい。
隠蔽化されていなくて下痢かどうかの評価をするのが適当なのかは疑問だけど、
risk of biasは細かく書かれていないのでなんとも分からない。
文中にあったが、ピロリ菌の除菌率向上にプロバイオティクスを使用するのは一般的?
NNTが13で、整腸剤は安いから悪くないのかも知れない。
あと、AADの中のClostridium difficileによる下痢症にはコクランレビューがあった。
Cochrane Database Syst Rev. 2013 May 31;5:CD006095.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23728658
規模のおおきなRCTがあったので、読んでみる。
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Lactobacilli and bifidobacteria in the prevention of antibiotic-associated diarrhoea and Clostridium difficile diarrhoea in older inpatients (PLACIDE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial.
Lancet. 2013 Oct 12;382(9900):1249-57.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23932219
P:65歳以上の入院患者で抗菌薬(経口、静注問わず)を使用している人に対し
I:ビフィズス菌、乳酸菌(Lactobacilli )製剤を使用することは
C:プラセボと比較して
O:下痢を減らすのか?
<使用製剤>
1Cap中に凍結乾燥した生菌6 × 1010 を含むCAP or プラセボ(マルトデキストリン)CAPを1日1回
Lactobacillus acidophilus (CUL60とCUL21)
Bifidobacterium bifidum (CUL20)
Bifidobacterium lactis (CUL34)
<割付>
1:1になるようにコンピューター生成のランダムシークエンスを用いて、
センターで層別化して、ブロックサイズが変わるブロック割付
割付順序は独立した統計学者により生成され、
データベースが完成してロックされるまでは使用できなかった。
<baseline>
だいたい同じ
<masking>
被験者:〇
医療者:〇
outcome判定者:〇
解析者:〇
<解析>
FAS(ランダム化後、介入を受けていない人を除外)
サンプルサイズ計算:α=0.05, power=80%
追跡率98.7%
<outcome>
8週間以内のAAD
微生物製剤群 159/1487 (10.7%)
プラセボ群 153/1487 (10.3%)
RR = 1.04 (0.84 to 1.28)
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菌の量は、摂取する菌の量は十分だと思う。
ちなみに、ビオフェルミン錠だと1錠中1*106~1*109 くらい。
上記のシステマティックレビュー見ても
サンプルサイズがここまで大きいRCTは他にないのでインパクトは大きい?
高齢者だからとか、小児だからとか、対象によっても効果は変わるのかな?
上記のシステマティックレビューの有効性は少し割り引いて考えたほうがよいのかも知れない。
あと、Streptococcus faecalisとかBacillus属、Clostridium属だと違う結果が出る可能性もある?
抗菌薬が処方されていたらビオフェルミンR、ラックビーR、ミヤBMとかにしてもらえるように
疑義照会をするのは正しい行動なのかもしれないと思った。
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