2014年11月20日木曜日

SGLT-2阻害薬ってどう違うの?


SGLT-2阻害薬がいろいろ発売になり、どう違うのか?
が気になったので調べてみた。

現在5成分が承認、販売されていて、1成分が申請中?

とりあえず構造をみると、
























1のダパグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、エンパグリフロジン
2のカナグリフロジン、イプラグリフロジン

がグルコースにくっついている置換基が似ている。


各インタビューフォームから薬物動態的なものを見ると












というような感じ。
(empagliflozinはアメリカの添付文書を参照した)


だいたい構造が似ていれば、動態の特徴も似ているかなぁ。。


蛋白結合率の差とか
SGLT-2とSGLT-1への選択性の違いは、治療上の差がでるのかな?

SGLT-1による取り込みが亢進するから、
だいたい効果的には上限があるという話なので変わらない?


新しい薬だから処方が来るとびびって応対してしまう。
勉強しよう。

2014年11月16日日曜日

ピロリ菌の除菌療法に整腸剤は有用?


ピロリ菌抑制に乳酸菌が良いなんて話をたまに耳にしたり、
以前の職場で除菌率を上げるなんて話を聞いたことを思い出したので調べてみた。


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Aliment Pharmacol Ther. 2007 Jan 15;25(2):155-68.

P ピロリ菌陽性で除菌療法をする人
I  プロバイオティクス製剤を併用する場合
C プラセボを併用する場合
O 除菌成功率

RCTのメタアナリシス

<検索>
Pubmed, Embase, Chochrane Library, Science Citation Index, Chinese Biomedical Databas
別にAGAやGASTRO、欧州へリコバクター会議の抄録を検索した
著者の何人かには出版されていない試験について問い合わせた
<対象>
ピロリ菌除菌療法に対する追加としてプラセボとプロバイオティクス製剤の比較をしたRCT
除菌療法:PPI+抗菌薬2種の3剤併用療法の1次2次除菌、ビスマス製剤含む4剤併用療法
言語:英語、中国語、他は翻訳できたもののみ

<Study selection >
2人が独立して評価。不一致は、第三者を交えて解消した。
382件→
31件→14件
<risk of bias>
2人のレビューアーが、Jadad scoreを用いて評価。

不一致は第三者がコンサルトして最終的なスコアを決定した。3未満がlow quality
<データの抽出>
ITT。他は不明?
<出版バイアス>

ファンネルプロットとEggerの回帰検定で検討

<outcome>
・除菌率 (11試験1074名, P = 0.65, I2=0%
 プロバイオティクス併用群  463/554  83.6%
 プラセボ併用群  389/520  74.8%
 OR = 1.84 (1.34 - 2.54)  

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プロバイオティクス製剤(いわゆる整腸剤)を除菌療法に併用することで、
除菌率は上昇し、下痢や腹痛、味覚障害といった副作用も減少傾向。

併用による除菌率の上昇は1.12倍で、NNT は11.4。
オッズ比だと1.84で効果が大きく見えるのはなんか不思議。

出版バイアスはなさそうだけど、
小規模で信頼区間が広くて、個別には有意差がない試験が多いので、
似たような試験を統合して母数が増えたことで有意差がついたのはあるかも知れない。


何で効果があるのかはよく分からないけれど、
整腸剤はそんなに安いし、常備薬として持っている人も多いから、
除菌療法する人が手持ちの整腸剤を一緒に飲むのは悪くないかも。

おなかの調子悪くなくても整腸剤飲むと良いですよと、すすめてみようかな。



あと、全文見れないので詳細不明だけど、

J Clin Gastroenterol. 2013 Jan;47(1):25-32.
Helicobacter. 2009 Oct;14(5):97-107. 

によると、Lactobacillus や Bifidobacterium で有効みたいなので、
ヨーグルト食べたり、ヤクルト飲んだりでも良いのかも?


キノロン使ったりする保険外の3次除菌以降については不明。

2014年11月9日日曜日

ピロリ菌の1次除菌にアルコールはよくないの?

日ごろピロリ菌除菌のパック製剤をお渡しする際に、
お酒は飲んで良い?と聞かれることが多い。

ピロリ菌の2次除菌はメトロニダゾールがアルデヒド脱水素酵素を阻害するから、
アルコール併用を避けるべきなのは明確だが、
1次除菌の場合はどうなのかな?と気になったので調べてみた。



よく避けるように言われている理由は、下のようなかんじ?

1.アルコールが胃酸分泌を増やし除菌率が下がる?
2.薬を飲む量が多いのでアルコールによる肝臓の負担が増える?
3.飲酒により酔っ払って薬を飲み忘れる?



1.アルコールが胃酸分泌を増やし除菌率が下がる?

アルコールが胃酸を増やすといわれるのは、
アルコールによる粘膜刺激→ガストリン遊離→壁細胞からの胃酸分泌↑ という感じ?
少量だと胃酸分泌は更新するけど、たくさん飲むと逆に減るんだっけ?

アルコールと除菌率の関連を見ている試験が2個見つけられた。
(どちらも全文見れないので詳細不明)

Adv Med Sci. 2008;53(2):310-5.
→アルコールと除菌率に関連なし。喫煙は関連あり
Eur J Gastroenterol Hepatol. 2002 Mar;14(3):291-6.
→除菌率:非飲酒者70.1%(n=107), 軽飲酒者79.3%(n=29), 飲酒者100%(n=20)
→治療の中断率は、飲酒者29.9%, 非飲酒者12.2%、調整OR=3.24 (1.12 to 9.20)

除菌率については一緒にPPIを飲んでいるからか、
顕著に低下するということは特になさそう。



2.薬を飲む量が多いのでアルコールによる肝臓の負担が増える?

ピロリ菌の除菌の副作用で肝機能障害が出たりするのはたまに耳にするけれど、
アルコールを呑んだから、頻度が増えるかどうかはよく分からないので保留。

よほどの大酒呑みじゃない限りは、
アルコールを気にするくらいなら、併用薬を気にしたほうが良いような気もする。



3.飲酒により酔っ払って薬を飲み忘れる?

1の文献でもあったが、アルコール呑んだほうが中止率が高いし、
普通に考えて酔っ払って薬を飲み忘れることはよくあることなので、
あながち間違ってはいないのかも知れない。


じゃあ、食前に除菌製剤を飲んでおけばお酒飲んでもよいのか?と気になって調べたが、
食前服用で試験をしているようなものが見当たらなかった。

アモキシシリンもクラリスロマイシンも空腹時で吸収が落ちる等はなさそうなので、
胃に物がないことによる胃内滞留時間が短くなることがどの程度影響するのか
よく分からなかったので、メーカーさんに聞いてみた。

メーカーさんに問合せたら、
ピロリ菌除菌における抗菌薬は、胃内滞留によるものと、粘液の分泌による2ルートで
抗菌作用が期待でき、粘液分泌に伴う方がphが高く効果が大きいと考えられるので、
一般論として食前服用して多少滞留時間が短くなっても影響は少ないと思われる。
というような回答だった。




食前に飲んでもよいから1週間飲み忘れなく、飲みきることを守れれば、
多少アルコール呑んでも問題はなさそうな感じがするかな。

結局、抗菌薬はコンプライアンスが大切というお話?