2014年4月29日火曜日

FDに対する六君子湯(1)

漢方でよく出る六君子湯。
老若男女を問わず、証も気にしなくても影響少ないので使いやすいのか、
よくFDの患者さんにも出るので気になって調べてみた。

六君子湯:rikkunshi-to、 (中国語読み)LiuJunZi-tang(decoction)

機能性ディスペプシア(Function Dyspepsia:FD)
 →逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍などの器質的疾患がない上腹部症状
 ・食後愁訴症候群(PDS):もたれ、膨満感
 ・心窩部痛症候群(EPS):みぞおちの痛み、灼熱感



Efficacy of modified LiuJunZi decoction on functional dyspepsia of spleen-deficiency and qi-stagnation syndrome: a randomized controlled trial.
BMC Complement Altern Med. 2013 Mar 2;13:54.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23453018

P:気滞や脾気虚を伴うFDの患者に対して
I:改良六君子湯を使用することは
C:プラセボと比較して
O:症状は改善するのか?

qi-stagnation syndrome:気滞
spleen-deficiency :脾気虚


二重盲検ランダム化比較試験

160名を改良六君子湯(CHM群)とプラセボに2:1で隠蔽化してランダム割付を行った。
被験者は、
1.RomeⅢのFDの診断基準を満たす
2.気滞や脾気虚の症状がある
3.18歳~65歳
4.インフォームドコンセントを行った

胃に器質的な異常がある患者、
GERDや過敏性大腸炎とかぶる症状を持つ患者は除外した。

<改良六君子湯 処方>
16.5% 党参(Pilose Asiabell Root)

11.0% 白朮(Largehead Atractylodes Rhizoma) 〇

11.0% 茯苓(Indian Buead) 〇
  5.0% 甘草(Liquorice Root) 〇
11.0% 厚朴(Cortex Mangnoliae officinalis)
11.0% 川木香(Common Vladimiria Root)
  6.5% 砂仁Villous Amomrum Fruit)
16.5% 延胡索Rhizoma Corydalis)
11.0% 半夏(Pinellia Tuber) 〇

上記処方のエキス製剤(顆粒)とプラセボ顆粒を
70℃のお湯300mLに溶かし、1日2回50℃で150mLずつ服用。

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日本の六君子湯は、
白朮茯苓人参半夏陳皮大棗生姜甘草。上で入っているのに〇した。
香砂六君子湯に近い?延胡索とか厚朴が入ると安中散、平胃散のような感じ?
日本の六君子湯とは別物?
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Primary Outcome
TDS(Total dyspepsia symptom scale)

8つの症状(食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感、吐き気、嘔吐、げっぷ、その他)について0~3の点数で評価した。

SDS(Single dyspepsia symptom scale )

FDの主要4症状(食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛、心窩部灼熱感)について、
頻度、症状の強さ、不快感の3点について0~3点で評価した。

Secondary Outcome
バリウムによる胃内排出速度の比較

解析はITTで行った。



TDSの変化(医師による評価)
〇結果
TDS
医師評価、患者評価ともにCHM群で
有意に減少
4週で Z = -4.629、P <0.01

SDS
結果↓
全体的にCHM群に有意差がついたが、
4週では心窩部痛が、
8週では灼熱感が有意差がつかなかった。
医師と患者の評価に大きな差はなかった。

排出速度
バリウムマーカーが
CHM群(5.16±7.53)
プラセボ群(1.50±3.21)(P = 0.036)
で有意差あり。


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心窩部痛、灼熱感は、PPI等の方が改善しやすいのかな?
PPIの上部消化器症状に対するものだと、
吐き気等が改善しにくかったような記憶がある。
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六君子湯でも中国と日本では指す処方内容が異なるかも知れないので
あまり参考にならないのかも知れない。
日本ではあまり証にこだわらず使っているような気もする。

日本の六君子湯の論文は日本語のが多い。
ツムラさんから医学のあゆみ 1998年、187巻、p207-29
をFAXで送って貰ったので、読んでみようと思う。

2014年4月15日火曜日

痔の軟膏って効果あるの?

最寄のクリニックが胃腸器、肛門科が専門なので、
痔の患者さんが多くいらっしゃる。

お尻の症状に良く出るのが、
強力ポステリザン軟膏(ヒドロコルチゾン+大腸菌死菌浮遊液)
ボラザG軟膏(トリベノシド+リドカイン)。


Drが2回使うことを重視しているので、
薬局でもなるべく続けて使っていただけるような指導を心がけている。

ふと、普段渡している軟膏って効くの?と疑問に思ったので勉強。


Local treatment of hemorrhoidal disease and perianal eczema. Meta-analysis of the efficacy and safety of an Escherichia coli culture suspension alone or in combination with hydrocortisone.
Arzneimittelforschung. 2002;52(7):515-23.

P:痔や肛門周囲炎の患者に対し
I:大腸菌死菌浮遊液を含む軟膏を使用することは、
C:含まない軟膏を使用するのに比べて
O:治療効果があるのか?

(全文は見つけられなかったのでAbstractしか見ていない
6件のランダム化比較試験のメタアナリシス。

3件がポステリザン軟膏 対 軟膏基剤
1件が強力ポステリザン軟膏 対 軟膏基剤
2件が強力ポステリザン軟膏 対 ヒドロコルチゾン軟膏

炎症、かゆみ、発赤、便失禁などのパラメーターで有効性を判断。

全体1070名のうち、
ポステリザン軟膏273名、強力ポステリザン軟膏229名、その他568名だった。

満足いく治療結果は
強力ポステリザン軟膏 83%
ポステリザン軟膏 77%
ヒドロコルチゾン軟膏 75%
軟膏基剤 52%

副作用は、軟膏基剤とくらべてそれほど多くはなかった。

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効くのかな?と思っていた大腸菌死菌浮遊液にも一定の効果があるらしいことは知らなかった。
免疫を調節することで効果が出るらしい。

無治療の比較がないから分からないけど、
軟膏基剤だけでも改善する人がいるのをみると、
ある程度まじめに軟膏を使えば改善する人も多いのかな?と思う。
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トリベノシドの文献は見つけられず。

他の国だと、
ニトログリセリン軟膏やイソソルビド軟膏、アロエベラ軟膏、
Caチャネル阻害薬なんかも治療に使うみたい。

OTCのボラギノールはプレドニゾロンが含まれるので、
ポステリザンよりは強いのも知らなかった。


近くのDrの軟膏をしっかり使って欲しいという指導は正しかったんだなぁ。

2014年4月14日月曜日

ノイラミニダーゼ阻害薬って?

ノイラミニダーゼ阻害薬についてシステマティックレビューが出たそうなので、勉強。
今シーズンもよく処方が来ました。
あまりにも良く出るので使い方は間違っていないのか?が疑問だった。


このレビューによると、インフルエンザの迅速検査で陽性になった人すべてにノイラミニダーゼ阻害薬が処方されているような状況は必要ないのかも知れない。
某製薬会社のような煽るCMも論外でしょう。

元気そうな若者には、カロナールとか麻黄湯だけとか
無治療経過観察を選択するDrが増えても良い気もする。
しかし、previously healthy people の定義ってなんなんだろうか?


入院数も有意差なしだったみたいだけど、インフルエンザに罹患して入院する割合ってどのくらいなんだろう。母数が少ないだけとかもあるのかな?入院数でぐぐったら福島県のが出てきた↓http://www.pref.fukushima.lg.jp/download/1/eiseikenkyuuH25_130206.pdf
リスクの高そうなご老人や小児には今までどおり使ったらよいと思うけどなぁ。


twitterでパンデミックについては別に考えなきゃというDrがいらっしゃったが、
すぐに備蓄用はいらないというのは暴論で、もっともだと思う。





Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD008965.pub4/abstract

P:健康な人に対して
I:ノイラミニダーゼ阻害薬でインフルエンザの治療や予防をすること
C:プラセボと比較して
O:効果(症状の軽減や予防、入院の減少など)があるのか?


Methods
NIsによるインフルエンザの予防効果、暴露後の予防効果(PEP)、治療効果を検討したランダム化比較試験を収集。被験者は、健康な人(高血圧、糖尿病、ぜんそくなどの慢性疾患を持つ人を含む)で症候性、無症候性を問わず自然にインフルエンザに感染した人を対象としたが、免疫に影響のある疾患(がんやHIVなど)は除外した。intention-to-treat (ITT)を比較の対象とした。

Searches
CENTRAL, MEDLINE, EMBASE, PubMed,DARE, NHSEED, HEEDでそれぞれ検索 (2013.7.22)
また、FDA, EMA, PMDAにおける ロッシュ、GSKの承認申請時の資料も含めた

Selection of studies
oseltamivirは2名(PD, TJ)が選定を行い、不一致はディスカッションで解決した。
zanamivirは2名(ES, IO)が選定を行い、1名(CH)が調停した。

oseltamivirは23試験、zanamivirは28試験について検討を行った。


Primary outcomes
【治療】
1.症状の軽減
 ・oseltamivir:健康な大人への治療で症状緩和までの時間が短縮(8試験3954名)
  MD = 16.8 hr (95%CI 8.4 to 25 hr) 7日→6,3日
 ・zanamivir:健康な大人への治療で症状緩和までの時間が短縮(13試験5411名)
  MD = 0.60 days(=14.4 hr) (95% CI 0.39 to 0.81 days) 6.6日→6.0日
2.入院や合併症
 <入院>
 ・oseltamivir:プラセボ群と比較して有意差なし(7試験4394名)
  RR = 0.92 (95% CI 0.57 to 1.50)
 ・zanamivir:入院を対象にした試験なし
 <肺炎>
 ・oseltamivir:(8試験4452名)
  RR = 0.55 (95%CI 0.33 to 0.90), RD = 1.00, NNTB = 100
 ・zanamivir:X線診断でも、自己報告でも有意差なし(11試験5876名)
  RR = 0.90 (95% CI 0.58 to 1.40)
 <深刻な合併症と試験からの脱落>
 ・ともに有意差なし(oseltamivir:6試験3675名, zanamivir:8試験4514名)
  ※サンプル数が不十分な可能性あり
3.有害性
 ・oseltamivir
  悪心、嘔吐、自己抗体は増加するが、下痢、心イベント(QT延長は増える)は減少する
  精神症状は有意差なし
 ・zanamivir
  重篤な副作用は有意差なし。 RR = 0.86 (95% CI 0.49 to 1.50),
  頭痛、下痢、悪心、嘔吐は減少。
  精神症状、腎障害は有意差なし。
【予防】
1.インフルエンザ(症候性、無症候性)とインフルエンザ様症状
 ・oseltamivir:成人で予防の有意差あり(3試験2479名)
  ※治療による副作用のインフルエンザ様症状が含まれる可能性があり
  RR = 0.45 (95% CI 0.30 to 0.67), RD = 3.05%, NNTB = 33
 ・zanamivir:成人で予防の有意差あり(4試験5275名)
  RR = 0.39 (95% CI 0.22 to 0.70), RD = 1.98%, NNTB = 51
2.入院や合併症
 <入院>
 ・oseltamivir:プラセボ群と比較して有意差なし(4試験3434名)
  RR = 1.14 (95% CI 0.66 to 1.94)
 <肺炎>
 ・zanamivir:(6試験7662名)
  RR = 0.30 (95% CI 0.11 to 0.80), RD = 0.32%, NNTB = 311
 <深刻な合併症と試験からの脱落>
 ・zanamivir:有意差なし(5試験6825名)
3.伝染の遮断(感染後のウイルス拡散予防と接触による感染防止)
4.有害性

Secondary outcomes
<治療>
1.治療終了後の再発
2.薬剤耐性
3.ウイルス排出
4.死亡率
<予防>
1.薬剤耐性
2.ウイルス排出
3.死亡率

RR = Risk Ratio
RD = Risk Difference
NNTB = Number Needed to Treat to Benefit

2014年4月7日月曜日

薬剤師国家試験に出ていた論文を読んでみた

今年の薬剤師国家試験を新人薬剤師さんに見せてもらった。
これじゃあ4年制の既卒は受からないよね。
カリキュラムが別物だもの。

問題に論文の読み方?のようなものがあったので、
例に取り上げられていた論文を読んでみた。



Systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials of gastro-oesophageal reflux interventions for chronic cough associated with gastro-oesophageal reflux.
BMJ. 2006 Jan 7;332(7532):11-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16330475

P:逆流性食道炎で咳が続く患者に対して
I:逆流性食道炎の治療(H2阻害薬、PPI、外科的処置)をすることは
C:プラセボと比較して
O:咳症状を改善させないのか?

<method>
QUOROM guidelines、コクラン共同メソッド、ソフトウェア(RevMan 4.2)を使用。
3週間以上咳の続くGORDの治療を対象としたランダム化比較試験で咳がアウトカムにあり、呼吸器疾患のないものを抽出

1次アウトカム:治療により改善しなかった割合
2次アウトカム:症状が大幅に改善しなかった割合、
         咳指数の変化、副作用、合併症

2人のレビューアーが独立して検索、評価し、
関連する出版物の参照や著者への連絡も行い、
合意を形成した。



<results>
・小児
シサプリドやドンペリドンによる
咳の有意な減少は見られなかった。
PPI等はデータが足りない。

・大人
8本の論文のうち
6本は全文、1本はアブストラクトのみ、
1本は報告書とアブストラクトが重複していた。

PPIとプラセボでの咳症状改善の比較
3試験49名
OR = 0.24 (95%CI 0.04 to 1.27) 
NNT = 5

PPIとプラセボの治療終了時の咳スコア改善
4試験77名

SMD = -0.29 (95%CI −0.62 to 0.04)

クロスオーバー試験による症状変化
2試験
SD units = −0.41 (95%CI −0.75 to −0.07)


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勉強不足でstandard mean difference(SMD)とかSD unitsがよく分からない。
効果量で、SDあたりの平均値の差で
SMD = (実験群の平均値 - 対照群の平均値)/両群のプールされた標準偏差
だそうだ。

逆流性食道炎を伴う咳は、逆流性食道炎の治療により多少は改善するみたい。
改善しない例もあるから他の原因も伴う?
経験的に逆流性食道炎の治療をおこなうのが良いとのこと。
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逆流性食道炎で咳がでるって人をあまり見ないのだけど、
私の観察が足りないだけかしら?
今度から聞いてみることにしようと思った。