2016年12月29日木曜日

SORT(推奨の強さの分類)ってなに?

一昨日のを読んでて、SORTってなんだ?と疑問に思ったので調べてみた。
 
Strength Of Recommendation Taxonomy:推奨の強さの分類
ということで、↓が元文献とのこと。
 
 
 
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<推奨の強さ>
A 一貫性があり、質の高い患者指向のエビデンスに基づいた推奨
B 一貫性がない、もしくは限界のある質の患者指のエビデンスに基づいた推奨
C コンセンサスや慣習的な方法、意見、症状指向のエビデンス、
  ケースシリーズ(診断、治療、予防、スクリーニング)に基づいた推奨
 
<研究の質>
 






 
<一貫性>
一貫性がある ほとんどの試験が類似したもしくは、少なくともまとまりのある結果を示す
       質の高い最新のSRやメタアナリシスが存在し、推奨を支持するような内容
一貫性がない 試験結果の間にかなりの相違があったり、まとまりが欠如している
       質の高い最新のSRやメタアナリシスが存在するが、
       推奨を支持するような一貫性のあるエビデンスがない。
************************
 
エビデンス質と推奨の強さを決める為の指標の一つのみたい。
文中にbody of evidenceという単語も出てくる。
 
文中の ~ Oriented Outcomes (Evidence) は、
患者指向のエビデンス=真のアウトカム
症状指向のエビデンス=代用のアウトカム
という意味合いみたい。
 
 
2004年の出版であるし、
最近のシステマティックレビューの推奨やエビデンスの質は、
だいたいGRADEで記載されることが多いみたいだから、
あまり使うことはないのかもしない。

2016年12月28日水曜日

胃全摘後の貧血にメコバラミン錠の内服は有効?


胃全摘後の貧血に
メコバラミン錠500μgが処方されるのをたまに目にするんだけど、
ビタミンB12は胃の内因子が吸収に必要だから、
飲んでも意味ないんじゃないの??と疑問に思ったので調べてみた。
(今さらだけど)

メルクマニュアル:ビタミンB12
内因子が欠如していても、
1000μgとかの大量服用だと吸収されると書いてあった。

日本人の食事摂取基準(2015年版)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html
によると、1日の推奨摂取量は2.4μg/日。
大用量(500μg以上)の場合でも、
内因子非依存的に投与量の1% 程度が吸収されるだけとのこと。


1%も吸収されるのであれば、
1日1錠で十分じゃないか?と思ったけど、
3錠X3で処方されることが多いので、他も調べてみた。
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P 悪性貧血の患者
I  ビタミンB12の経口摂取
C ビタミンB12の筋肉注射
O 血清ビタミンB12
<検索>
対 象:?
検 索:PubMed(1980/1/1-2016.3.31)
言 語:英語
その他:参考文献も調べた
<試験選択>
RCT2件、前向き研究3件、SR1件、症例報告6件
<データ抽出>
<risk of bias>
SORT(strength of recommendation taxonomy)
<Outcome>
血清ビタミンB12
 Kuzminsk オープンラベルRCT(ビタミンB12欠乏患者33人)
   経口2000μg 643 ± 328 pg/mL(2カ月) 1005 ± 595pg/mL(4カ月)
   筋注1000μg 306 ± 118 pg/mL(2カ月)   325 ± 165 pg/mL(4カ月)
 Bolaman オープンラベルRCT(ビタミンB12欠乏による巨赤芽球貧血患者60人)
   経口1000μg 213.8 pg/mL(90日)
   筋注1000μg 225.5 pg/mL(90日)
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上記では、
1日1000μgの内服を注射薬の代わりに推奨している。
SORTは良く分からないから、別に調べてみようと思う。
レビュー中のBolamanというのも読んでみようと思ったので、下。
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P 16歳以上のビタミンB12欠乏(血清コバラミン<160 pg/mL)の巨赤芽球貧血患者
I  20mLのフルーツジュースにコバラミン1000μgを添加して経口摂取
  10日間連日→週に1回を4週→月に1回
C ビタミンB12の筋肉注射
  10日間連日→週に1回を4週→月に1回
O ヘモグロビンレベル、貧血症状
<割付>
ブロックランダム化割付
隠蔽化は記載なし
ベースラインは男女比は異なるが、他はだいたい同じ?
<盲検化>
オープンラベル
<解析など>
ITTではない(コンプリートした人のみ)
脱落率 10/70 = 14.3%
サンプルサイズの算出方法は不明
<Outcome>
ヘモグロビンレベル(g/dL)
 経口 Day0:8.4 (sd 2.1) → Day90:13.8 (sd 0.7)
 筋注 Day0:8.3 (sd 2.3) → Day90:13.7 (sd 0.9)
血清ビタミンB12(pg/mL)
 経口 Day0:72.9 (sd 54.8) → Day90:213.8 (30.2)
 筋注 Day0:70.2 (sd 59.1) → Day90:225.5 (40.2)
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メコバラミン錠の内服でも
悪性貧血の改善には効果があるみたい。
3TX3で飲む必要があるのかは疑問だけど。

そういえば、ビタミンB12って水溶性だこら過剰症はないんだっけ?

2016年10月1日土曜日

Delphi listってなに?

システマティックレビューを読んでいて分からなかったので、お勉強。その2。

Delphi listというのが、分からなかったので調べてみた。
システマティックレビューでRCTのリスク評価に使用するリストみたい。
詳細は↓
リストの内容としては、
1.割付
 a.ランダム化割付されているか?
 b.割付は隠蔽化されているか?
2.重要な予後指標について各群のベースラインは同等か?
3.適格条件は、明記されているか?
4.アウトカム評価者は盲検化されているか?
5.治療者は盲検化されているか?
6.患者は盲検化されているか?
7.プライマリアウトカムの点推定値と変動性(バラツキ)について記載があるか?
8.解析はITT?

1998年に作成されたチェックリストとのこと。
良く見かけるコクランのrisk of bias ツールは、
1.Random sequence generation
2.Allocation concealment
3.Blinding of participants and personnel
4.Blinding of outcome assessment
5.Incomplete outcome data
6.Selective outcome reporting
7.Other bias
なので、コクランの5、6はDelphi listに含まれていないけど、
かぶっているところ所も多いね。

2016年9月30日金曜日

Newcastle-Ottawa scale(NOS)ってなに?

Newcastle-Ottawa scale(NOS)っていうのは、システマティックレビューの際に
コホート研究と症例対象研究のリスクを評価をするためのスケールらしい。
コホートのだけ見ると、
Slection
 暴露群コホートの代表性
 非暴露群のコホートの選択(同じ集団から?)
 暴露因子の確認方法(レコード?定型インタビュー?自己申告?)
 試験開始時のアウトカム有無(影響の大きい交絡因子など)
Comparability
 交絡因子の調整
Outcome
 アウトカムの確認方法(独立盲検?セキュアな方法?レコード?自己申告?)
 観察期間はアウトカムの発生に十分か
 追跡率
といった内容。
あと、検索したら引っかかった相原先生の記事によると
RoBANS(Risk of Bias Assessment Tool for Nonrandomized Studies)
というのも、リスク評価ツールとしてあるそうな。
↓相原先生による和訳のpdfもあるってすごいね。。

2016年9月29日木曜日

配合剤で服薬コンプライアンスは改善するの?

ミカトリオが承認されたというニュースを見て、
最近降圧薬の配合剤が良く処方されるけど
剤数減る以外のメリットあるのかな?
と疑問に思ったので調べてみた。

剤数減少=コンプライアンス向上は本当?
 
調度良さそうなシステマティックレビューがあったので読んでみる
 
 
 
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P 高血圧治療中の人
I  配合錠を使用
C 同成分の錠剤を各々服用
O コンプライアンス、治療の継続性、血圧降下作用、副作用
 

<検索>
対 象:比較試験、コホート試験
検 索:PubMed, Web of Science, CENTRAL
言 語:英語
その他:2名が独立して実施
    各文献の参考文献まで調べた
    データの不足分は著者へ連絡を取った
<試験選択>
2名が独立して実施
比較試験9件、コホート6件
<データ抽出>
2名が独立して実施
<risk of bias>
2名が独立して実施
比較試験:Delphi list
コホート研究: Newcastle-Ottawa scale
出版バイアスは、ファンネルプロット、BeggsまたはEggersテストで検討
 
<Outcome>
コンプラアンス
 比較試験(2試験357人) OR = 1.22 (0.90 - 1.66)
 コホート(3試験17642人) OR = 1.21 (1.00 - 1.47)

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配合剤を使用した方が単剤でそれぞれ飲むより、
少しコンプライアンスや治療の継続性が少し良いような傾向みたい
(有意差はついてないけど)
 
 
ちなみに各観察試験におけるコンプライアンスの定義は、
 
Taylor 2003
 リフィルで薬をもらった日数/次の処方箋をもらうまでの間隔
 80.8% 対 73.8%
Gerbino 2004
 MPR(medication possession ratio)= 実際に服用した数/処方された数
 88% 対 69%
Dickson 2008
 MPR(medication possession ratio)
 63.4% 対 49.0%
 
 
1-2割でもより飲めるようになるのであれば、
薬代も多少安くなるし、悪くないのかもしれない。
 
あと、文中のDelphi listとNewcastle-Ottawa scaleが、
何か良く分からないので、別に調べてみようと思う。

2016年9月24日土曜日

PPIの長期服用は腎機能に良くない?


PPI(エソメプラゾール)をGERDで継続して飲んでいる患者さんから、
腎機能が悪いんだけど大丈夫?と質問があった。
腎機能がわからなかったので、
病院に確認したら、Scr=1.7mg/dL。
中肉中背の60代男性なので、
おおざっぱに計算するとCcr≒40mL/minで重度のCKD。
一応エソメプラゾールは腎機能で調節不要となっている。
インタビューフォームを見ると、
肝臓で代謝され未変化体の尿中排泄率は1%以下、
便中:尿中=4:1なので、問題はなさそう。
腎機能の悪化に影響はないのかな?
と疑問に思ったので調べてみた。
最近のが2報あったので読んでみる。

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P1  ARIC試験でeGFR≧60 mL/min/1.73m2の人(10482人)
P2  Geisinger Health Systemに登録されていてeGFR≧60 mL/min/1.73m2の人(248751人)
E1  自己申告のPPI、H2阻害薬の使用
E2  Geisinger Health Systemで登録されたPPI、H2阻害薬の使用
C 非使用
O1  退院時にCKDの診断、もしくは死亡
O2  Geisinger Health SystemでeGFR<60 mL/min/1.73m2の患者数
<追跡期間>
ARIC試験 1996/2/1 ~ 2011/12/31(中央値13.9年)
Geisinger Health System 1997/2/13 ~ 2014/10/9(中央値6.2年)
<脱落>
ARIC試験 11145人→10482人 663人(約6%)
Geisinger Health System データベース解析なのでなし
<交絡因子の調整>
Cox比例ハザード回帰
<その他>
ARIC試験では、maskingはされていない。
データベースのコードによるOutcomeの評価
<Outcome>
PPI 使用 vs 非使用者 
 ARIC試験
   PPI 56/322  14.2件/1000人年
   非使用者 1382/10160  10.7件/1000人年
   調整ハザード比 1.50 (1.14-1.96)
 Geisinger Health System

   PPI 1921/16900  20.1件/1000人年
   非使用者 28226/231851  18.3件/1000人年
   調整ハザード比 1.17 (1.12-1.23)

H2阻害薬使用 vs 非使用者 (調整ハザード比)

 ARIC試験 1.15 (0.98-1.36)
 Geisinger Health System 0.93 (0.88-0.99)
*******************************

 
PPIとH2阻害薬と対象群の背景の差が大きい気もするけど、
PPI使用によりCKDのリスクは上昇するらしい。
ARICは、肥満者が多かったようなことが書いてあるので、
調整ハザード比が大きいのはその影響かしら?それとも追跡期間が長いから?


もう一つの方、
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P 退役軍人のデータベースでeGFR≧60ml/min/1.73m2
E 2006/10/1~2008/9/30にPPIが新規に処方
C 2006/10/1~2008/9/30にH2阻害薬が新規に処方
O eGFR<60ml/min/1.73m2、もしくはCKDの診断
<追跡期間>
~2013/9/30 5年
<脱落>
データベース解析なのでなし
<交絡因子の調整>
Coxモデル
<その他>

感度分析でマッチチングしても結果はあまり変わらず

<Outcome>
eGFR<60ml/min/1.73m2
 PPI 48171/173321 = 27.79%
 H2B 4429/20270 = 21.85%
 ハザード比 1.22 (1.18 to 1.26)
*******************************
こちらもH2阻害薬に比べてPPIの方が、
長期服用で腎機能低下、CKDが起こりやすいという結果。
GERDの症状が落ち着いているようだったら、
一度止めてみるのをお勧めしてみても良かったのかな。。
もしくは、ファモチジン1日1回で提案してみるとかかな。

2016年8月9日火曜日

ピロリ菌の除菌療法中にビタミンCは飲んでよいの?

ピロリ菌の除菌用のパック製剤が
処方になった患者さんの薬手帳を見たら、
皮膚科からシナール配合顆粒が処方されていて、ずっと飲んでいる。
 
シナール=アスコルビン酸+パントテン酸Ca
アスコルビン酸:酸だから酸性
胃のpH下げるから除菌に良くない?
 
と思って1週間は服用を休むよう指導したけれど、
本当かな?と疑問に思ったので調べてみた。
 
 
シナールで胃内のpHがどのくらい下がるのか?
と発売元の塩野義製薬に電話してみたら、データなしと。
 
 
 
pubmedで検索したら、
アスコルビン酸やビタミンEを除菌の補助に使うような試験があったので、
システマティックレビューを1件読んでみることにした。
(俺の指導ダメじゃん・・・)
 
 
***************************
P 迅速ウレアーゼ試験または、鏡検法でピロリ菌陽性の患者
I  PPI+ビスマス+抗菌薬2種+ビタミンC and/or ビタミンE
C PPI+ビスマス+抗菌薬2種
O 除菌率
 
<検索>
対 象:RCT
検 索:PubMed, EMBASE,  Cochrane Library
言 語:制限なし
その他:2名が独立して検索
    各文献の参考文献まで調べた
    clinicaltrials.gov, controlled-trials.comから非出版と進行中の試験を検索
    データの不足分は著者へ連絡を取った
<試験選択>
<データ抽出>
2名が規定のフォームを使用して、独立して実施
<risk of bias>
Jadad composite scaleを使用
割付の隠ぺいかはコクラン共同計画の分類を使用
2名が独立して行い、不一致は著者と連絡を取った後に合意を形成した
出版バイアスは、検討していない
<結果>
ビタミンC+E併用(3試験323人)
 通常     59.12%
 ビタミン併用 69.51%,
 RR = 0.93 (0.56 - 1.53, I2 = 85.9%)
ビタミンC併用(3試験488人)
 通常     54.25%
 ビタミン併用 74.69%,
 RR = 0.83 (0.58 - 1.19, I2 = 81.5%)
***************************
 
 
ピロリ菌由来の活性酸素から胃壁を守るために
抗酸化作用を期待してビタミンC/Eを併用しようという趣旨みたい。
 
3剤併用療法ではなく直接性は微妙で、
試験の質は低いものが多く、異質性も高いので結果はどう考えればよいかな。
結果は、有意差なしで除菌率は少しよいような傾向。
 
 
除菌率が悪くなることはなさそうだから、
シナール、飲むのやめなくても良かったかもね。。(反省)

2016年7月21日木曜日

経口補水液とスポーツドリンクで塩分取り過ぎ?

夏で気温が上がってきたからか、
薬局で売っているOS-1が良く売れている。


経口補水液(ORS)は、
下痢、嘔吐、発汗、熱中症などに使うはずだけど、
そんなに売れて大丈夫か?と思ったので調べてみた。



もともとは、下痢と脱水症状の小児向け。
WHOで提唱しているのが、有名になったきっかけ?
WHO Drug Information Vol. 16, No. 2, 2002


よく見かける経口補水液とスポーツドリンクのNa,K,炭水化物のみまとめてみた。












※食塩換算は、Na量/22.99(Naの分子量)*58.44(NaClの分子量)で計算
※浸透圧は、記載のないものはメーカーへ問い合わせた。


DAKARA(白い方)にNaが含まれていないのは知らなかった。
経口補水液は1g前後(味噌汁1杯程度)、
スポーツドリンクは0.5g前後の塩分が含まれているらしい。


塩分摂取目安は、日本人の食事摂取基準(2015)によると、
成人で男性<8g、女性<7g。
ガイドラインなどで言われている高血圧治療の場合は<6g。


健康で、生活の中で身体もあまり動かさず汗をかかない人は、
水、お茶で良いのかもしれない。
飲んでもスポーツドリンク1日1本で十分な気がする。

2016年7月12日火曜日

ALSの患者さんにベンゾジアゼピン系睡眠薬は向かない?

 
ALSの患者さんから
「睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は筋肉に良くないのか?」
と聞かれてとっさになんとなく(転倒増えそう、呼吸弱くなりそう)
しか分からなかったので、調べてみた。
 
 
おさらいとしてALSは、
===================
運動ニューロンが選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患
症状は、筋萎縮と筋力低下が主体であり、
進行すると上肢の機能障害、歩行障害、構音障害、
嚥下障害、呼吸障害などが生ずる
===================
 
日本神経学会が2013年にガイドラインを出しており、
 
不眠の原因ごとの対処で改善しない場合は、睡眠薬を使用
呼吸抑制の少ないゾルピデムが望ましい。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、呼吸抑制の副作用があるため注意して使用
 
と記載あり。
 
 
 
Pubmedで調べてあまり見つからなかったので、
ネットで見れるガイドラインを見てみる。
あと、不眠症ってInsomniaっていうんだね。
 
EFNS(欧州神経学会議 2012)
不眠の原因ごとの対処でだめな場合は、
アミトリプチリン
ミルタザピン
適切な睡眠薬(ゾルピデムなど)
 
AAN(アメリカ神経学会 2009)
試験がないのでなんとも言えない。
沈静・睡眠薬は、呼吸ドライブを抑制する可能性あり
 
HAS(フランス高等保健機構 2005)
呼吸機能や不安、抑うつなどの原因を探す
抗ヒスタミン薬、睡眠薬(できればベンゾジアゼピンは避ける)

呼吸抑制→窒息が怖いから、
筋力が低下してきたら、できれば避けた方が良いのかな?
 
 
 
現状問題なさそうだから様子見で良いと思うけど、
筋力落ちてきたらDrとご相談くださいと
交付後に患者さんと相談してDr宛の情報提供書を書いてみた。
 
他の薬を提案するとしたら、
チエノジアゼピン系か、NaSSAか、アミトリプチリンか、
中枢移行のよい抗ヒスタミン薬か、かな?

2016年7月8日金曜日

アサコールと後発品は溶け方が異なる???

 
某メーカー(2社しかないけど)のMRさんが、
 
アサコールの後発品はpH7.0の溶解のデータがないんです。
アサコールとは溶け方が異なる可能性があります
 
という、???なことを言っていたので調べてみた。

 
 
アサコールは、pH依存性の徐放性製剤。
pHによる溶け方は、以下のような感じ。
アサコール インタビューフォームより
 









 
 
後発品(サワイ、ファイザー)のIFに書いてあるのは下記。
メサラジン腸溶錠 インタビューフォームより




 
 
 
 
 
 
 
 
確かにpH7.0では試験をしていない。
(電話で問い合わせたらデータなしと言われた)


自分で実験をしてみるのが一番なんだろうけど、
設備もないので、添加剤から予測してみる。

添加剤の比較は下記
※仕分け間違いはご容赦ください。。
 
 





 
 
 
コート剤は、メタクリル酸コポリマーS。
 
メタクリル酸コポリマーSは、
pH7.0以上で溶けるという規格だし、
クロスオーバー試験もしているんだから、
溶け方が異なるというのは詭弁じゃないかなぁ?
 
メーカーさんの言う事をなんでも信じるのは危ないかもね。。
 
 
 
個人的には、上行結腸~回腸の方に炎症があって、
アサコール→ペンタサに変更になった人がここ最近数名来ているので、
そっちの方が気になる。

2016年6月28日火曜日

スタチンとフィブラートの横紋筋融解症の頻度はどれくらい?

横紋筋融解症の頻度ってどのくらい?
添付文書には書いてあるけどフィブラートでも起こるの?
と近くのDrからメーカーの勉強会時に質問があったので調べてみた。
 
 
よく参考文献になっている
Am J Cardiol. 2006;97(8A):52C–60C.
のabstractに書いてあるのは、(全文は有料)

・ミオパチー
   11 /100,000 人年
 
・横紋筋融解症
  ・スタチン全般
   3.4 (1.6 - 6.5)/100,000 人年
  ・クレストール、リピトール
   4.2/100,000 人年
 
 
 
何かほかにないかな?
と思い下記を読んでみた。
 
 
**************************
P アメリカのヘルスプランに加入している人
E スタチン、フィブラート、その併用療法
C
O 横紋筋融解症の発症率
 
252460人のデータベース解析
1998/1/1~2001/6/30
処方日から180日前に同系統の処方がない場合にコホートに繰り入れ
<結果の観察>
3人の著者が暴露状態についてブラインドされて検討
<対象薬>
atorvastatin, cerivastatin, fluvastatin, lovastatin, pravastatin, simvastatin
fenofibrate,gemfibrozil
<調整>
RRは、年齢、性別、糖尿病についてポアソン回帰で調整
 
<outcome>
 
 
 
 
 
 
 
 
**************************

10万人年で3-4人くらいというのが、
今市販されているスタチンの横紋筋融解症のリスクみたい。
 
ベザフィブラートは記載ないけど、フェノフィブラートは0 (0-14.58)/1万人年。
スタチンと併用しなければ、あまり考えなくてもよいのかな?

ということでDrへ情報提供しましたとさ。

2016年3月29日火曜日

メサラジンの1日1回投与は複数回投与と比べて効果は変わらない?

 
メサラジン(5-アミノサリチル酸:5-ASA)の顆粒製剤ペンタサ顆粒94%が発売になって、
潰瘍性大腸炎の寛解維持では1日1回1包でもよいので楽ですよ
というような話をMRさんがしていた。
 
ペンタサが2012年の8月に寛解維持の場合に1日1回の用法の
承認を受けていることも知らなかったので、びっくり。
 
 
 
1日1回の方が飲みやすそうだけれど、
効果的にも変わらないのかも確認したかったので、少しお勉強してみる。
 
ちなみに、メサラジンは、
INN(国際一般名)とBAN(一般名)では、mesalazine
USAN(アメリカ一般名)では、mesalamine だそうだ。
 
 
 
*****************************
P 16歳以上の寛解期の潰瘍性大腸炎の患者
I  メサラジンを1日1回
C メサラジンを1日複数回
O 憎悪率
<検索>
対  象:6ヶ月以上のRCT
検  索:PubMed, EMBASE,  CENTRAL,
言  語:制限無し。外国語の試験は翻訳した
その他:2002年~2011年の学会抄録を手検索
      未発表の試験を探すために専門家に連絡を取った
<文献検索、試験選択>
2名が独立して行い、不一致は第三者を加えて合意を形成して解決した
<データ抽出>
2名が独立して実施
<risk of bias>
コクランのrisk of bias ツールを使用
2名が独立して行い、不一致は第三者を加えて合意を形成して解決した
出版バイアスは、funnelプロットとEggerの検定
<結果>
再発の予防 7試験2745名
RR 0.94 (0.82 to 1.08, I 2=33%)
*****************************
 
 
対象になっている7試験の内訳は、
アサコール1日1回 対 複数回 3試験
ペンタサ 1日1回 対 1日2回 1試験
MMX1日1回 対 アサコール1日2回 1試験
MMX1日1回 対 1日2回 1試験
Salofalk1日1回 対 1日3回 1試験
 
 
<製剤特徴のおさらい>
ペンタサ・・・エチルセルロースコーティングによる放出制御
アサコール・・・ph依存性のフィルムコーティング
MMX・・・Multi Matrix System
      水溶性のマトリックスに両親媒性のマトリックス顆粒が分散
Salofalk・・・ph依存性のフィルムコーティング+マトリックスコア
 
MMXとSaloflalkは1日1回製剤。
 
 
MMXは、持田がライセンスを取得して開発。2015年10月に製造販売承認申請。
Salofalkは味の素がライセンス取得していたが、開発中止だそう。
 
 
製剤の違いがどの程度影響があるかはよく分からない。
アサコールも1日3回飲むのが大変だという人は多いので、
寛解維持に回数減らせるとよいのにね。

2016年1月15日金曜日

整腸剤でピロリ菌除菌療法の副作用はどの程度予防できるの?


先日3剤併用療法以外のピロリ菌除菌療法を調べた際に
プロバイオティクス(整腸剤)を併用すると、
副作用のリスクが小さくなる(ランクが高い)ようなので、
どのくらい減るのか?が気になったので、調べてみた。


World J Gastroenterol. 2015 Apr 14;21(14):4345-57.

**************************
P ピロリ菌陽性の人
I  ピロリ菌の除菌療法にプロバイオティクス併用
C ピロリ菌の除菌療法単独、もしくは除菌療法+プラセボ
O 除菌率、副作用、コンプライアンス
<検索>
対  象:RCT(riple therapy, quadruple therapy, sequential therapy)
検  索:PubMed, EMBASE, Ovid, Cochrane Library,
     Chinese Biomedical Literature Database, Chinese Medical Current Content, 
     Chinese Scientific Journals database
言  語:制限無し
その他:学会抄録と参考文献の検索。
      clinicaltrials.govを検索。全文が見れない場合は著者に連絡した
<文献検索、データ抽出と評価>
2名が独立して行い、不一致は第三者を加えて合意を形成して解決した
<risk of bias>
コクランのrisk of bias ツールを使用
2名が独立して行い、不一致はディスカッションで合意を形成
出版バイアスは、funnn、Eggerの検定とBeggの検定
<結果>
除菌率(ITT)
 プロバイオティクス併用 82.31%
 単独 or プラセボ    72.08%
 RR = 1.13 (1.10 - 1.16, I2=15.4%)
副作用
 RR = 0.59 (0.48-0.71, I2=81.6%, P < 0.001)
コンプライアンス
 RR = 0.98 (0.68-1.39, I2=0%)
**************************

risk of biasのテーブルは記載なし。
出版バイアスは可能性あるが、trim and fill法をで調整しても結果は変わらなかったそう。
3剤併用療法以外も含まれる点は注意かも。
あと、副作用メタアナリシスの異質性は高い。

サブ解析で副作用ごとに発生率が出ていたので、和訳。












本当にそんなに減るのかは、少し割り引いて考えたほうがよいかも知れないけれど、
副作用は減る傾向にあるみたい。

上記の表だと下痢のNNTは13人。


整腸剤併用するのは、安いし、副作用もほぼないから悪くないのかな?

2016年1月6日水曜日

3剤併用療法以外のピロリ菌の除菌療法ってあるの?

日本では、
ピロリ菌の除菌療法=3剤併用療法
というのが常識だけど、他の除菌療法もあるようなので調べてみた。


除菌率を比較しているちょうど良い文献があったのでチラ見。

BMJ. 2015 Aug 19;351:h4052.

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P 18歳以上のピロリ菌の1次除菌をした患者
I  各療法
C 3剤併用療法7日間
O 除菌率

<検索>
対  象:異なるピロリ菌の1次除菌療法を比較した50人以上のRCT
検  索:Cochrane Library, PubMed,  Embase
言  語:制限無し
その他:参考文献を手検索
<文献抽出>
2名が独立して行った。不一致はディスカッションで解決した
<データ抽出>
2名が独立して行い、不一致は他に2名を加えてディスカッションで解決
<risk of bias>
2名が独立して評価。
Jadad scaleとコクランのrisk of bias ツールを使用
出版バイアスは、funnelプロットで検討
<その他>
直接比較のメタアナリシス以外に、
bayesian frameworkの中でネットワークメタアナリシスを行い、効果推定値を算出

<結果>

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risk of bias は、blindingでhigh risk of bias が多め。



比較している除菌療法は↓














除菌療法にもいろいろあるんだね。
文中では、3剤併用療法7日間の除菌率は0.73 (0.71 to 0.75) となっているので、
日ごろの除菌率とそんなに差がないような感じ。


以前調べた3剤併用療法+整腸剤も意外と結果が良い。(特に10日以上)
レボフロキサシンのレジメンは、3次除菌で自費で実施している病院もあるから、
あえて1次除菌でやらなくてもよいような気もする。



3剤併用療法7日間以外は、日本では保健適応外で自費になるので、
整腸剤を自分で併用するくらいが一番負担がなくてよいかも?

認容性等も検討してランク付けしているようなので、
ご興味のある方は原文でご確認を。




ピロリ菌の除菌療法では、
PPI→ボノプラザンにすると除菌率が良いということで、
パック製剤→タケキャブ+抗菌薬の組み合わせへ処方変更をするDrが
うちの地方は最近多いんだけど、武田以外のデータないかしら?

あと、ベイズ統計はよく分からないので勉強してみようかな。。