2017年2月22日水曜日

翌日の再検査でインフルエンザ陽性になるのはなんで?

インフルエンザの患者さんから、
「昨日検査をしたら陰性だったけど、
 インフルエンザっぽいから明日また来てと言われて受診したら、
 インフルエンザ陽性だった。なんで結果が違うの?」
と質問された。
 
偽陰性とか、日数経過によるウイルス量の上昇とか、
聞きかじったことで答えてみたけど
今後のためにお勉強してみようと思ったのでまとめ。
 
検体採取部位とか、キットの種類とかは、
専門外だし、薬局で患者さんから聞かれることはないのでスルー
 
1.陰性でも翌日陽性になるのはなぜか?
2.どの程度偽陰性が発生するのか?
 
の2点を調べてみた。
 
 
 
1.陰性でも翌日陽性になるのはなぜか?
 
インフルエンザの迅速診断キットは、イムノクロマト法が主流で、
検体のウイルス量が多い方が検出感度が上がることが推測できる。
 
  6時間未満 50.0%
    6~12時間 70.6%
  12~18時間 75.9%
  18~24時間 95.5%
  24~48時間 87.5%
  →出展記載なし
   pubmedなどで文献を探したけど私には見つけられなかった
 
  発熱後12時間以内に検査で陰性だった31名に
  12時間以降に再検査した所10名が陽性。偽陽性率29%
  12時間以降に陰性だった患者を再検査したら陽性は0だった
 
  発症からの時間による感度のちがいの表が書いてある
  12時間以降だと感度90%以上?
  参考文献の記載あるが、ネットで見つけられなかった。
 
  検体は、ウイルスの排出が最大となる発症後4-5日の間に採取
 
  富士ドライケムの開発でエスプラインと比較したデータ

(書いてあることを信用すると)
だいたい発熱から12~24時間経たないと、
感度が50-70%と添付文書表示(80-90%後半)より低くなるみたい。
 
発熱からの時間経過と共に感度が上がる(陽性が出やすくなる)、
という説明で患者さんには良いかな?
 
 
 
2.どの程度偽陰性が発生するのか?
 
有名なシステマティックレビュー
**************************************
P インフルエンザ様症状の人
I  インフルエンザ迅速診断キット(RIDT)
   (ウイルス抗原もしくは、ノイラミニダーゼ活性を利用した
    イムノクロマト法のもの)
C RT-PCR、もしくはウイルス培養
O 感度、特異度
 
<検索>
対 象:RIDTの精度を比較した試験
検 索:PubMed、EMBASE、BIOSIS、web of Science
言 語:英語、フランス語
その他:参考文献も調べた、メーカーへ未発表研究について連絡を取った
<試験選択>
1名が実施し、不確実な場合はもう1名とディスカッションを行い合意を形成した
市販前のデータと製品社内テストは除外した
<データ抽出>
2名で実施
1名がすべてのデータの抽出を行い、
もう1名は20%の22試験をランダムに選んでデータを抽出した
22件中、20件は2X2表の値が一致し、2件は値がわずかに異なった
<risk of bias>
<Outcome>
全体をプールした
感 度 62.3% ( 57.9% to 66.6% )
特異度 98.2% ( 97.5% to 98.7% )
**************************************
 
感度分析の表を見ると、感度は各キットでも差があり、
インフルエンザウイルスの型ではA型>B型で10%くらい違う。
スポンサーがメーカーだと感度も上がり、子供の方が感度高め?
あと、インフルエンザのシーズンではないときのほうが感度が高い傾向。
 
分かりやすくしてみると↓みたいな感じ?
診断薬の重要な基本的な注意に
「インフルエンザウイルス感染の診断は、本製品による検査結果のみでおこなわず、
 他の検査結果及び臨床症状を考慮して総合的に判断してください。」
と書いてあるのも納得? 事前確率が高いと陰性でも微妙な感じ。
 
日数経過に伴うウイルス量増加による感度上昇と
インフルエンザ流行期はと偽陰性も多いんだよということで患者さんの疑問は解決しそう。
 
今度、患者さんから質問されたら、上手く説明できると良いな。

2017年2月17日金曜日

抗凝血薬+抗血小板薬の出血リスクは1剤と2剤ではどのくらい違うの


他病院でステントを入れて、抗血小板薬2剤を飲んでいるところへ
リバーロキサバンが追加になったおばあちゃんが、
別件で薬局をご利用いただいた際に顔が真っ青だった。
(転んだらしい)

付き添いの家族も心配していたので、
「高齢で歩様も怪しいので、また転ぶかもしれない。あざもひどいよ」
的な情報提供書をDrへ出したけれど、
抗血小板薬は1種類じゃダメなのか?が気になったのでお勉強。

DOACはあまり見つからなかったので、ワーファリンの試験をよんでみる。

RCT
*************************************************
P 18歳-80歳の1年以上抗凝血薬を服用しているPCIが適応となる冠動脈閉塞のある患者
I   double-therapy:クロピドグレル75mg+ワーファリン(目標INR 2)
C triple-therapy:クロピドグレル75mg+アスピリン80-100mg+ワーファリン(目標INR 2)
O 出血エピソード
<割付>
1:1でランダム割付
配列はコンピュータで生成し、センターごとにブロック割付。
割付の隠蔽:封筒法
ベースライン:
<追跡>
ITT解析(フォローアップ98.3%)
1年追跡(中央値:365日、平均:358日)
1年後の治療継続率
 double-therapy
   ワーファリン  92.5%
   クロピドグレル 80.6%
 triple-therapy
   ワーファリン  91.2%
   クロピドグレル 78.9%
   アスピリン   66.5%
<盲検化>
オープンラベル
<Outcome>
出血エピソード 
 double-therapy   54 / 279 (19.4%)
 triple-therapy  126 / 284 (44.4%)
 ハザード比 0.36 (0.26 - 0.50)
*************************************************
データベース解析のコホート研究
*************************************************
P 2001/1/1~2011/12/31の期間に
  心筋梗塞またはPCIで入院した心房細動患者
E ビタミンK阻害薬 and/or 抗血小板薬(1種類 or 2種類)
C ビタミンK阻害薬
O 有効性:心筋梗塞死・心血管死、致死性/非致死性の血栓症
  安全性:致死性/非致死性の出血
<データベース>
デンマークの全国的なEHR
<追跡期間>
平均3.3年
<脱落・マスキング>
データベース解析のためなし
<交絡因子調整>
年齢、性別、組入年, 心筋梗塞/PCIの状態、
薬物治療、CHA2DS2-VAS、HAS-BLEDスコア
<Outcome>
出血(無調整)
VKA       3.9 (3.3–4.6) /1000人年
VKA+A+C 10.1 (6.8–14.9) /1000人年  調整HR 2.81 (1.82 - 4.33)
VKA+C    7.0 (4.4–11.3) /1000人年   調整HR 1.84 (1.11 - 3.06)
VKA+A    5.2 (4.7–5.8) /1000人年   調整HR 1.50 (1.23 - 1.82)
※VKA:ビタミンK阻害薬、C:クロピドグレル、A:アスピリン
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出血イベントは、当たり前だけど抗血小板薬2剤>1剤。
コホートの方が発生率は低め。
抗血小板薬2剤の方が1剤に比べて、死亡率も高そうなのは意外だけど、
RCTでもデータベース解析でも同じような傾向。
情報提供にプラスαして、
一緒にHAS-BLEDスコア(高齢、抗血小板薬併用、出血エピソードで3点)を記載したり、
何かしらのエビデンスを参考としてつけた方がより良かったのかも知れない。
あと、リバーロキサバンでこんなんもあるけど全文は見れない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27959713