2014年6月30日月曜日

前立腺肥大にタダラフィル?その2


前立腺肥大にタダラフィルはどの程度効果があるのか?の続き。


Efficacy and safety of tadalafil monotherapy for lower urinary tract symptoms secondary to benign prostatic hyperplasia: a meta-analysis.
Urol Int. 2013;91(1):10-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23816815

P:前立腺肥大症の人に対して
I:タダラフィルで治療することは
C:プラセボと比較して
O:IPSS、IIEF、Qmaxを改善させるのか?

治療 システマティックレビュー

<検索>
期間は、~2012.8
MEDLINE、PubMed、EMBASE、 Cochrane Library database、Web of Science.
補完的に欧州泌尿器科学会、アメリカ泌尿器科学会のwebを検索
<対象>
タダラフィルvsプラセボの2重盲検のRCT

<レビュー>
2名が独立して行い、相違は第三者と合意を形成した。
209件→30件→9件
<データ抽出>
2名が独立して行い、第三者がチェックした
必要なデータが文献中になかった場合は、著者に問合せた

<risk of bias>

<出版バイアス>
ファンネルプロットで検討(表とか、偏りの記載はない)

<outcome>
IPSSスコア 9試験4734人?
平均差 -2.19 (-2.58 to -1.81) p=0.63, I2=0%
IIEFスコア 5試験3702人?
平均差 +4.66 (4.02 to 5.31) p=0.54, I2=0%
Qmax(mL/秒) 6試験2818人?
平均差 +0.34 (-0.03 to 0.71) p=0.77, I2=0%



A systematic review and meta-analysis on the use of phosphodiesterase 5 inhibitors alone or in combination with α-blockers for lower urinary tract symptoms due to benign prostatic hyperplasia.
Eur Urol. 2012 May;61(5):994-1003.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22405510

※全文は有料なので、細かいところは不明

P:前立腺肥大症の人に対して
I:PDE-5阻害薬を使用すること(単独 または、α1阻害薬と併用)は、
C:プラセボやα1阻害薬単独と比べて
O:IPSS、IIEF、Qmaxを改善させるのか?

<検索>
 Medline, Embase,  Cochrane Library databases
<対象>
プラセボ vs PDE-5阻害薬単独 もしくは α1阻害薬単独 vs α1阻害薬 + PDE-5阻害薬 のRCT

<レビュー>
107件→12件

<outcome> 平均差?
プラセボ vs PDE-5阻害薬単独 7試験3214人
IIEFスコア +5.5 (p<0.0001)
IPSSスコア -2.8 ( p<0.0001)
Qmax    -0.00 (有意差なし)

α1阻害薬単独 vs α1阻害薬 + PDE-5阻害薬 5試験216人
IIEFスコア +3.6 (p<0.0001)
IPSSスコア -1.8 (p = 0.05)
Qmax    +1.5 (p<0.0001)


**********************************

IIEFスコアは、EDの評価指標で、1問5点で15問75点満点。
IIEF5は、簡易版で5問25点満点。
http://www.jssm.info/guideline.html


シアリスの10mgとか20mgより量が少ないとはいえ、やっぱりEDに効果があるんだね。
IPSSスコアをプラセボより2程度改善させる効果っていうのは、
強いのか、弱いのかちょっと勉強不足で分からない。


あと上の論文は、
20mgとか10mgとかの多い用量も解析に含まれているから、
結果が良いほうに引っ張られているのはあるかもしれない。
出版バイアスはなしでよいのかな?


ハルナールD0.2mgが134.1円(後発品だと60~70円)
ユリーフ4mgが81.3円で1日だと162.6円

ザルティア5mgが230.6円、2.5mgが118.3円
高いのか安いのかもいまいちよく分からない。
シアリスって1500~2000円くらい?アドシルカ20mgは1770円。
自費で買うよりは、保険使えたら圧倒的に安いのは確かだけど。


筋肉痛とか胃腸障害とか頭痛が主な副作用なのは、添付文書と同じ。


2.5mgと5mgでどの程度効果が違うのかは、もう少し調べてみようかな。

2014年6月27日金曜日

前立腺肥大にタダラフィル?その1

先日会社の勉強会があり、テーマが前立腺肥大症だった。

そんななかで2014年4月に、
ザルティア錠(タダラフィル:シアリス、アドシルカと同成分)が発売になったという話があり、
どの程度効くのかイメージがわかなかったので勉強。


Tadalafil once daily for lower urinary tract symptoms suggestive of benign prostatic hyperplasia: a randomized placebo- and tamsulosin-controlled 12-week study in Asian men.
Int J Urol. 2013 Feb;20(2):193-201.

P:45歳以上で6ヶ月以上前立腺肥大による中等度以上の下部尿路閉塞症状のある人に
I:タダラフィルで治療することは、
C:プラセボとタムスロシンで治療する場合と比較して、
O:IPSS(国際前立腺スコア)は改善するか?

治療 ランダム化比較試験(日本、韓国、台湾)

<割付>
2週間のプラセボによるwashout期間の後、
タダラフィル2.5mg:タダラフィル5mg:プラセボ:タムスロシン0.2mgに1:1:1:1で割付。
コンピューター生成の乱数表で、自動音声応答。
層別化:LUTSの重症度(IPSS<20かIPSS≧20)、国、α1阻害薬を12ヶ月以内に使用(あり、なし)
<baseline>
タダラフィル5mg群で65歳以上の割合がちょっと低いが、他はだいたい同じ

<masking>
患者:されている
治療者:されている
outcome評価者:IPSSは患者自身が付けるので、されている?
解析者:?
<解析>
ITTとPPS(治療完了した人)で解析
サンプルサイズ計算あり:137例 α=0.05 power=90

<primary outcome>
ベースラインと12週服用後のIPSSスコアの合計の差
プラセボ      -3.0 ± 0.4 (145/154 追跡率94.2%)
tadalafil 2.5mg   -4.8 ± 0.4 (136/151 追跡率90.1%) p=0.003
tadalafil 5.0mg   -4.7 ± 0.4 (137/155 追跡率88.4%) p=0.004
tamsulosin 0.2mg -5.5 ± 0.4 (143/152 追跡率94.1%)

<他のoutocome>
IPSSスコア(PPS)、BIIスコア(前立腺肥大症影響スコア)、最大尿流率
PGI-IとCGI-Iスコア、副作用、PSA、残尿量について検討している

*****************************

IPSSスコア(国際前立腺症状スコア)
7項目に0-5点をつけて、35点満点
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0014/G0000033/0005
軽度:0~7、中等度:8~19、重度:20以上 が目安
BIIスコア
不快度や生活制限などの4項目について回答
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0014/G0000310/0022


この試験だと他のアウトカムを見ても2.5mgと5mgでそこまで大きな違いが見られないから、
添付文書上だと5mgが通常量だけど、2.5mgでもよいのかな?
用量依存的に効果は変わるのかな?

そもそもタムスロシンの数値の改善具合と比較すると
どの項目もあまり変わらないかタムスロシンの方が良いようなので第一選択にはならなさそう?
α1阻害薬が合わないときや併用して使うのかしら?

あと、なんとなくなんだけどED治療薬と同じ成分が、
それに困ってそうな人を含む患者群に保険で処方されてくることにすこし抵抗を感じるなぁ。

システマティックレビューが2件あったので、あとで読んでみようと思う。

2014年6月25日水曜日

HbA1cの下げすぎも良くない?


高血圧の勉強会のときにACCORD BPという試験をみて、
有名なACCORD試験というのをまだ読んだことがなかったので、チラ見。

HbA1cを基準にして、予後を比較する試験だったのね。


Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes.
N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18539917

P:2型糖尿病患者で心血管リスクの高い人に対して
I:強化療法(目標HbA1c<6.0%)は、
C:標準療法(7.0%<目標HbA1c<7.9%)と比較して
O:心筋梗塞、脳卒中、心血管死を減少させるのか?

治療 ランダム化比較試験


<治療に使えた薬剤の系統>
市販されているもので特に制限なし。
・ビグアナイド系
・血糖降下薬(SU剤、速攻型インスリン分泌促進薬)
・チアゾリジン系
・α-グルコシダーゼ阻害薬
・インスリン

<割付>
強化療法と標準療法にセンターでランダム割付
LipdとBPにも同時に層別化して割付
<baseline>
ほぼ同じ

<masking>
オープンラベル(PROBE法)
outcome評価者:されている
解析者:?
<解析>
ITT
α=0.05, power=89%

<primary outcome>
非致死性の心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死の複合アウトカム
標準療法 371人/5123人(7.2%) 2.29%/年
強化療法 352人/5128人(6.9%) 2.11%/年
HR 0.90 (0.78 - 1.04)

※強化療法群の死亡率上昇により早期中止を勧告され、予定より早く中止

<他のoutcome>
死亡
標準療法 203人/5123人(4.0%) 1.14%/年
強化療法 257人/5128人(5.0%) 1.41%/年
HR 1.22 (1.01 - 1.46)

10kg以上の体重増加
標準療法 713人/5042人(14.1%) 
強化療法 1399人/5036人(27.8%) 

HMA:Hypoglycaemic event requiring Medical Assistance(医療支援の必要な低血糖)
標準療法 179人/5123人(3.5%)
強化療法 538人/5128人(10.5%)

HA:Hypoglycaemic event requiring Any assistance(何らかの支援を必要とした低血糖)
標準療法 261人/5123人(5.1%)
強化療法 830人/5128人(16.2%)



(低血糖との関連を見たサブ解析。)

The association between symptomatic, severe hypoglycaemia and mortality in type 2 diabetes: retrospective epidemiological analysis of the ACCORD study.
BMJ. 2010 Jan 8;340:b4909.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20061358

死亡率
標準療法 HMAなし1.0%/年 HMAあり4.9%/年 調整HR 2.87 (1.73 - 4.76)
強化療法 HMAなし1.3%/年 HMAあり2.8%/年 調整HR 1.28 (0.88 - 1.85)

標準療法 HAなし1.0%/年 HAあり3.7%/年 調整HR 2.30 (1.46 - 3.65)
強化療法 HAなし1.2%/年 HAあり2.8%/年 調整HR 1.41 (1.03 - 1.93)

******************************

最近のDPP-4阻害薬とかGLP1誘導体とかは、使用薬剤に入ってはいない。
新しい薬が発売されて治療方法が変わると結果も変わってくるのかな?

下の方は、重篤な低血糖が多いほど死亡率が上昇傾向というのはわかるんだけど、
あとは難しくて私にはよく分かりません。。
何で低血糖イベントがあった方では標準療法の方が死亡率が高いの?
母数が少ないから誤差かな?なにか理由があるの?

ADVANCEというのも有名なようだから読んでみようと思う。


あと下記を見ると、
死亡率の増加は、低血糖に起因する心血管リスクの増加とか夜間低血糖などが
原因として最近では考えられてるみたい。。
http://www.diabetes.org/newsroom/press-releases/2014/the-link-between-hypoglycemia.html
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24895268


恥ずかしいけれど、
インスリンを打っている人に夜間の血糖値についていままで指導したことはなかったな。
低血糖が死亡率に関係するなら普段の低血糖についてのモニタリングとか指導を
(可能ならDrへのフィードバックも)薬局で一生懸命やる意義があるかな。


日本糖尿病学会のガイドラインだと
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
糖尿病診断の基準のひとつが、HbA1cが6.5以上。
治療目標が8.0、7.0、6.0の3段階で、合併症予防のためには7.0以下が推奨。

下げることのリスクも考慮するとどうするのが良くて、
Drの意図を損ねないようにどう対応するかは良く考えないといけないと思う。



体重増える→血糖値上がる→薬物療法で血糖値下げる→体重増える
のスパイラルから上手く抜け出すのは、ダイエット(食事運動療法)がんばるしかない?
こないだ出た、SGLT-2阻害薬は体重が増えるコントロール不良例なんかには良いのかも。

2014年6月20日金曜日

便秘に食物繊維は効果があるのか?

この間読んだのに
便秘に対する食物繊維が出てきたので、他にもないか調べてみた。

世間の常識の便秘に食物繊維はどの程度効果があるのかな?



Effect of dietary fiber on constipation: a meta analysis.
World J Gastroenterol. 2012 Dec 28;18(48):7378-83.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23326148

P:便秘の患者に対し
I:食物繊維を多くとることは
C:プラセボ(少ない場合?)と比べて
O:便秘症状は改善させるのか?


RCTのシステマティックレビュー

<検索>
MEDLINE (1946~2011.10)、Cochrane Library (2011)、Pubmed
重要な試験の参考文献は手検索を行った


<対象>
便秘に対して食物繊維摂取時の
有効性(排便回数、便の硬さ、治療成功、下剤の使用、消化器症状)を検討しているRCT
食物繊維:ファイバー、セルロース、植物抽出物、穀物、ブラン、オオバコ、シャゼンソウ


<レビュー>
2名で独立して行い、不一致は第3者とディスカッションを行い解決
1322件→19件→5件


<outcome>
・1週間の排便回数 5試験 250名
 MD = 1.19 (0.58 - 1.80, P = 0.77, I2 = 0)
・便の硬さ 3試験 154名
 MD = 0.43 (-0.24 - 1.11, P < 0.1, I2 > 75%)
・治療成功 2試験 134名
 OR = 2.21 (0.35 - 12.69, P < 0.1, I2 > 50%)
・下剤の使用 2試験 134名
 OR = 1.07 (0.51 - 2.25, P = 0.84, I2 = 0%)
・痛みのある排便 2試験 79名
 OR = 0.54 (0.15 - 1.91, P = 0.19, I2 = 42%)


***************************
優位差がついているのは排便回数のみ。
便秘症状の改善する傾向にはあるのかな?
対象とされた試験は、子どもの試験が4つに大人が1つ。
異質性は低いのもある
けど、どの試験もサンプルサイズが小さめ。
あとフォレストプロットの記載がなんだか変。

***************************


The treatment of chronic constipation in adults. A systematic review.
J Gen Intern Med. 1997 Jan;12(1):15-24.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9034942

P:慢性便秘を持つ成人に対して
I:下剤や繊維療法を1週間以上行うことは、
C:プラセボと比較して
O:便秘は改善するのか?

RCTのシステマティックレビュー

<検索>
MEDLINE (1966 –1995)、Biological Abstracts (1990 –1995)、Micromedex searches
他、図書目録、教科書、製造業者、専門家へ調査した

<対象>
成人に対し下剤や繊維療法を1週間以上行って経過を見ているRCT

<レビュー>
2名で独立して行い、不一致は合意を形成した
733→113→36件(20試験:プラセボ対象、16試験:他の薬が対象)


<outcome>
・1週間の排便回数 13試験(単剤 vs control)
 治療群:5.0回 対象群:3.5回
 加重平均差 1.4 (1.1 - 1.8)
・食物繊維と膨張性下剤
 腹痛と便の硬さを改善。

***************************
昔の文献だからか、結果が読みづらくてよく分からなかった。
あと、食事も下剤も一くくりにしている。


食事指導で便通の回数が改善するなら、
薬を飲むのと併用もしくは、先行して、試してみるのも悪くないかもしれない。
他の疾患の食事療法でも同じで、なかなか食生活の改善は難しいけど、
野菜ジュースでトクホがついているのも発売になっているしできることはあるのかな。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があって、
便秘時に不溶性食物繊維の取りすぎは良くないとも言うけどどうなんだろうか?


あと腹筋とかの筋肉量増加もよいとも言うけど、
なかなか薬局の日常では指導しにくい。


緩下薬は、合う合わないだったり、好みが大きい気もする。

センナ系の下剤を連用すると色素沈着が起こる
大腸メラノーシスってどうなのかしら?反応性低下とかは聞くけれど。
いろいろ分からない事だらけ・・・

2014年6月14日土曜日

痔に下剤



痔の治療は、重度であれば手術検討。
軽度であれば軟膏または、座剤継続が、うちにくる処方では多い。

便秘や下痢がない痔の方も沢山いるんだけど、
痔がある場合に便秘への対処も必ずされているので、
どの程度効果があるのか疑問に思ったので調べてみた。


Laxatives for the treatment of hemorrhoids.
Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct 19;(4):CD004649.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16235372

P:痔の既往がある人が
I:下剤を服用することは
C:プラセボまたは、無治療と比較して
O:痔の症状は改善するのか?

治療 RCTのシステマティックレビュー

<検索>
CENTRAL、MEDLINE、 EMBASE、CINAHL、BIOSIS、AMEDを検索。
別途、出版されていない情報も検索した。

<対象>
下剤とプラセボ(もしくは無治療)を比較したランダム化比較試験

<レビュー>
2名で行った。

<Outcome>
fiber群とnon-fiber群の378名比較で、
fiber群は痔に対して RR = 0.47 (0.32 to 0.68)
出血に対して RR = 0.50 (0.28 to 0.89)

<出版バイアス>
中程度

**********************************

全文が読めなかったので、あまりよく分からなかった。

Laxatives → fiber に変わってしまっているのはなぜなの?
食物繊維は下剤?他の痔に対する下剤の論文がなかったのだろうか?

便秘が改善すると痔の症状や出血が改善する傾向は、
普段接する患者さんの像と離れていないので、間違ってはいないのかな?
下剤も、運動も、食事も大切?便が柔らかくなると出血は減るよね。

結構便秘を持っていない痔の方も多いので、
あとは、なるべくいきまないようにする生活習慣も大切か。

2014年6月9日月曜日

dapagliflozinの血糖降下作用


最寄のクリニックのDrが、
SGLT2阻害薬のフォシーガ(dapagliflozin)を処方するかもとのことなので、
あまり知識がないのでとりあえず勉強。



The efficacy of dapagliflozin combined with hypoglycaemic drugs in treating type 2 diabetes mellitus: meta-analysis of randomised controlled trials.
BMJ Open. 2014 Apr 7;4(4):e004619.

P:18歳以上の2型糖尿病の患者に対し
I:dapagliflozinを既存の治療に併用することは、
C:併用しない場合と比べて
O:HbA1c、FPG(空腹時血糖)、体重は改善するのか?

治療、RCTのシステマティックレビュー


<検索>
MEDLINE、EMBASE 、Cochrane Library, Google Scholar、ClinicalTrials.gov
雑誌の手検索も行っている。

<対象>
既存治療にdapagliflozinを併用で、HbA1cを観察している期間が8週以上のRCT
(dapagliflozinとplaceboの試験は除外)

<レビュー>
2名で行い、相違点は合意を形成した
380件→12件

<risk of bias>
コクランの評価表で各試験を評価。

<出版バイアス>
ファンネルプロットとエッガーの回帰テストで検討。
体重には出版バイアスが考えられる。
HbA1c、FPGの出版バイアスは小さい

<outcome>
・HbA1c
 12試験(3986人)
 MD = -0.52% (-0.60 to -0.45) 
  I2=56% (Q=29.54, p=0.0055)
・FPG
 12試験(3620人)
 MD = -1.13 mmol/L (-1.33 to -0.93)
  I2=53.8% (Q=23.81, p=0.0135)
・体重
 12試験(4008人)
 MD = -2.10 kg  (-2.32 to -1.88)
 I2=12% (Q=14.73, p=0.32)

<感度分析>

risk of bias の高そうなもの、を除外しても大きな差なし。
 


********************************

異質性が少し高そうなのと、メーカーの資金が入っている試験が多いのと
追跡期間が12週~104週で幅があるのと、短期間であるのが、限界としてあるみたい。
SGLT2阻害薬って長期飲む薬なの?

何か使っていて血糖コントロールが不良な人への追加薬としては、
体重も減るし悪くないのかな?


死亡率などを見ている試験は、ちょっと調べたけど見つけられなかった。


DECLARE-TIMI58(2013年1月開始~2019年4月終了予定)
Primary outcome:心血管死、心筋梗塞、虚血性脳梗塞の複合エンドポイント

という試験も進んでいるみたいだし、他の試験の結果も出るだろうから
SGLT2阻害薬の立ち位置もそのうち決まるのかなぁ。


ある程度若くて血圧高そうで太めな人をメインに処方がでるんだろうか。
ある程度体重落ちたら止める選択肢もあるのかな?


いまいちよく分かんないから、もう少し勉強しよう。

2014年6月4日水曜日

高血圧の勉強会で気になったやつ その2


高血圧の勉強会できになった文献、その2。

MRさんが盛んに脳梗塞が減るからと積極的降圧をプッシュするのに使っていたんだけど、
本当にそうなのかな?と疑問に思ったので読んでみることにした。


ACCORD試験の追加として行った、ACCORD BPという試験らしい。

ACCORD試験って血糖を厳格にコントロールしても、
標準治療と比べて効果がなかったという試験だっけ??
(あやしいから今度調べてみよう)



Effects of intensive blood-pressure control in type 2 diabetes mellitus.
N Engl J Med. 2010 Apr 29;362(17):1575-85http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20228401

P:糖尿病患者(HbA1c7.5以上)で心血管リスクを持つ人に対し
I:収縮期血圧を120未満にコントロールすること(強化療法)は
C:収縮期血圧が140未満(標準療法)と比べて
O:心血管イベントを減らすのか?

治療 オープンラベルのランダム化比較試験

<ランダム割付>
ランダム割付されている。
隠蔽化するためwebサイト上で一元管理されたブロック割付
<Baseline>
だいたい同じ

<盲検化>
オープンラベル(PROBE法)
outcome判定者:されている
解析者:?

<解析>
ITTで解析
<追跡率>
平均追跡は4.7年
intensive therapy(≧160(1回)または≧140(2回)増量、≦130(1回)または≦135(2回)減量)
2362人 脱落101人 追跡率95.7%
standard therapy(≧120で増量)
2371人 脱落90人  追跡率96.2%
<サンプルサイズ>
計算されている。α=0.05、power=96

<primary outcome>
非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳卒中、心血管関連死亡の複合アウトカム
intensive群 208例 1.87%/年
standard群 237例 2.09%/年
ハザード比 0.88(0.73 - 1.06)

<他>
重篤な副作用
intensive群 77例 3.3%/年
standard群 30例 1.3%/年

脳梗塞
intensive群 36例 0.32%/年
standard群 62例 0.53%/年
ハザード比 0.59(0.39 - 0.89)

*****************************

ACCORD試験というのは、血糖の強化療法と標準療法の2群を、
血圧かコレステロールで同様に2群に分ける試験だったのね。
       血糖強化   血糖標準
血圧強化    〇        〇   → ACCORD BP
血圧標準    〇        〇
脂質強化    □        □   → ACCORD Lipid
脂質標準    □        □
          ↓        ↓
         ACCORD  study


メーカーさんは、
日本人は脳卒中が多いから、ガイドラインに示された値よりも
認容性があれば積極的に降圧した方がよいとだいぶ言っていたけど、
副作用とトレードオフだから、そこまでプッシュしても大丈夫なのかな?
そもそも糖尿病既往と普通の高血圧患者では比較の直接性が成り立つのか?

脳梗塞のNNTが476人/年、重篤な副作用のNNHが50人/年だから、
医師や患者さんの価値観が大切だと思う。
1次アウトカムは変わらないけど、長期の治療になるとどうなのかな?

日常では、多剤併用の注意と副作用モニタリングが大切か。

2014年6月2日月曜日

高血圧の勉強会で気になったやつ その1

先日の会社での高血圧の勉強会をして頂いたMRさんが使っていた資料で、
気になった論文を読んでみよう。その1。

有名らしい、ONTARGET study というやつ。


Telmisartan, ramipril, or both in patients at high risk for vascular events.
N Engl J Med. 2008 Apr 10;358(15):1547-59.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18378520

P:心筋梗塞や脳血管障害、糖尿病による末梢傷害がある患者に対し
I:Telmisartan 80mg または Telmisartan 80mg + ramipril 10mg で治療すると
C:ramipril 10mg を服用する場合と比べて
O:死亡(心血管障害、心筋梗塞、脳卒中による)と心不全による入院は減るのか?

治療:ランダム化比較試験

<ランダム割付>
されている。中央での自動電話応答により、層 別化されてブロック割付
<baseline>
同じ

<盲検化>
患者:なし?
医療者:なし?
判定者:あり
解析者:わからない
PROBE法?

<ITT>
ITTで解析されている
<追跡>
25620例 のうち 25577例を試験終了かアウトカム発生までフォローアップ(99.8%)
ramipril群 8576人 → 2年間で2029人(23.7%)が中止
telmisartan群 8542人 → 2年間で1796人(21.0%)が中止
combination群 8502人 → 2年間で1929人(22.7%)が2剤中止、566例(6.7%)が1剤中止

<primary outcome>
死亡(心血管障害、心筋梗塞、脳卒中による)と心不全による入院
ramipril群 1412人(16.5%)
telmisartan群 1423人(16.7%)  vs ramipril  RR = 1.01 (0.94 - 1.09)
combination群 1386人(16.3%)  vs ramipril RR = 0.99 (0.92 - 1.07)

<other outcome>

renal impairment
ramipril群 871(10.2%)
telmisartan群 906(10.6%)    vs ramipril RR = 1.04(0.96 - 1.14)
combination群 1148(13.5%)   vs ramipril RR = 1.33(1.22 - 1.44) ARR = 3.3 NNH = 33


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非劣性の下限は0.89と定めているみたなので、
telmisartanはramiprilと比較して劣ってはいないかもと。
2万人規模の大規模スタディーで有意差がつかなかったってのは、
残念な試験だったのかな。


ガイドラインでもARB+ACEIの併用はあまり推奨しないといっていた、
理由としてあげていたので確かにそうなのかも。

例外として併用する場合は・・・とついていたので、
腎機能保護になるって論文もあるのかしら?


単純に血圧高いだけの人にあえて併用する必要はないのではないかと思った。
他の選択肢も沢山あるわけだし。