2014年5月26日月曜日

PPIの服用で骨折が増える?

PPIによる副作用が気になったシリーズ。

日常の業務時に気にするリスクの骨折について。
コホート研究のメタアナリシス2件。


Use of proton pump inhibitors and risk of hip fracture in relation to dietary and lifestyle factors: a prospective cohort study.
BMJ. 2012 Jan 30;344:e372.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22294756

P:30歳~55歳の女性に
I:PPIを投与することは
C:しない場合と比較して
O:股関節骨折のリスクは上昇させるのか?

害 前向きコホート試験 + 他の研究とのメタアナリシス

【Methods】
121700名の30歳~55歳の女性(看護師)を対象のコホート
1972年から2年に1回運動機能評価票を送り、4年に1度食物頻度アンケートを行った。
フォローアップは90%以上

1994年の調査からH2阻害薬の使用の有無を確認し
2000年からPPIの使用の有無も確認した

他、閉経の有無、体重、運動やレクリエーションの時間、飲酒、喫煙の有無
薬物治療(ホルモン補充療法、ビスホスホネート、チアジド系利尿薬、Ca製剤)、
骨粗鬆症の有無について確認した。

ベースラインには2000年のアンケートの時点でPPIを服用していた閉経後の女性を含み、
がんと股関節骨折の既往がある人は除外し、79899名を解析対象とした。
2年前の調査でPPIの使用があった人は、PPIユーザーと定義した。
2000年~2008年の股関節骨折を追跡Cox比例ハザードモデルを用いた。

この試験結果に加えて
FDAによって引用された7試験とMEDLINEを検索して追加した3試験
から不適合1試験(primary outcomeが脊柱骨折と股関節骨折だったため)を除外し、
メタアナリシスを行った。


【Results】
79899名 股関節骨折893件/565786人年
PPI使用率 2000年:6.7% → 2008年:18.9% ↑

PPI使用群(5341名)は非使用群より
より高いBMI、より低い運動量、
骨粗しょう症の既往も高い傾向があり、
ホルモン補充療法、チアジド系利尿薬、糖質コルチコイド、
ビスホスホネートを使用している割合も高い傾向があった。

PPI群   2.02件/1000人年
非PPI群  1.51件/1000人年

年齢調整ハザード比 1.35 (95%CI  1.13 - 1.62)

PPI服用群の中でも
非喫煙群 調整ハザード比 1.06 (95%CI 0.77 - 1.46)
喫煙群 調整ハザード比   1.51 (95%CI 1.20 - 1.91)

2年→4年→6-8年と期間が延びるごとにハザード比は上昇傾向。

複数試験をメタアナリシスした結果
heterogeneity  (Qstatistic=22.0; I2=50.0, P=0.02) で中程度の異質性
OR = 1.28 (1.19 - 1.37)


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PPI服用+喫煙で股関節骨折リスク↑
アンケート調査だからマスキングはされていない。

中止後2年以上経過すると
骨折リスクは非服用群とさほど変わらなくなるみたい。

長く飲んでいるほどリスクも上がるの?
60前の女性と普段骨折を気にする高齢者を一緒に考えても良いのかな?
メタアナリシスは、性別とか年齢そうがばらついてそうだけど、
統合しても大丈夫なのかしら?
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Proton pump inhibitors and risk of fractures: a meta-analysis of 11 international studies.
Am J Med. 2011 Jun;124(6):519-26.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21605729

P:?(解析の対象には、閉経後の女性と高齢の男性が多い)
I:PPIを服用すると
C:服用しない場合と比べて
O:骨折のリスクは上昇するのか?

害 コホート研究のシステマティックレビュー


【Methods】
1970年~2010.10.10までの期間で、
MEDLINE、EMBASE、Web of Science、BIOSISで検索した。
また、内分泌学会(1996-2009)とAACE(2002-2010)の年次総会プログラムを手で検索した。

EYとDBによってレビューを行い、相違は合意を形成した。
不一致の場合は第三者によって決定された。

Primary endpoint :股関節骨折(本人の申告、レントゲン、データベースのレビュー)
Secondary endpoints :他所の骨折や脊柱の骨折も含む

RRとORは対数変換し、同様に取り扱った
出版バイアスは、Begg’s and Egger’s tests を行い、funnel plotsを用いて対称性を検討した。


【Results】
文献:874文献を電子的に検索 → 11研究10文献をメタアナリシス
7件はデータベースを解析した症例対照研究、4件は前向きコホート研究

Primary endpoint
PPI(10試験)    合計:1084560件  PPI使用  :62210件  股関節骨折:71339件


PPI使用群の股関節骨折   RR 1.30(95% CI 1.19–1.43, I2=58%)

H2阻害薬(8試験)  合計:1018544件  H2R使用:58334件  股関節骨折:66997件
H2RA使用群の股関節骨折  RR 1.10(95% CI 0.94–1.30, I2=78%)

その他の骨折も増加傾向。

未発表データ1件を含めた感度分析では、
骨折のリスクは弱まった RR 1.15 (95%CI 0.88–1.50)

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女性や高齢者のような骨折リスクの高い人は気をつけたほうが良いのかもしれない。
ただ、異質性は中程度なのですこし割り引く必要があるかも。

PPIによる骨折リスク増加の原因は、ディスカッションを見ると
胃酸↓によるCaの吸収量低下にあるかもしれないとあった。


FDAからも注意喚起が出ていたり、周知のことだったとは知らなかった。
http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm213240.htm

長期使用で骨折のリスクの高い人には、
注意喚起をするなど日常でも活かせる様にしたい。

治療上必要な場合も多いだろうけど長期飲むならH2阻害薬なのかな?

2014年5月23日金曜日

ヨヤクスリって?

国との訴訟も辞さないケンコーコムさんの新しいサービス
ヨヤクスリ を貴方の地域でも開始しますよってFAXが来た。
「FAX転送を自動的に開始するから、嫌な場合は嫌だと連絡してね」という内容のFAXだった。


ヨヤクスリ
https://www.yoyakusuri.com/


便利っちゃあ便利。
今であった民間の薬局検索サービス+口コミサイト+処方箋写メ→FAX転送サービス。
斬新な発想で面白いけど。はてさて、普及するかな?


何となく心理的な抵抗があるのが、
ケンコーコムさんのマーケティングに使われる可能性があることと、
データ内容が匿名化されて利用される可能性があるって所かな?
リスクを負うのは利用する患者さんだね。


勝手に薬局を登録して転送を開始するっていうところが、薬剤師会を刺激しているみたい。



【参考資料】
神奈川県薬剤師会の疑義
日本薬剤師会からの通知
元になっている厚生労働省通知
電子メール等による処方内容の電送等について

2014年5月18日日曜日

PPIを服用していても市中肺炎は増えない?

前回はPPIで市中肺炎のリスクが増えるという論文だったので、
今度は増えないとういのがあったのでそちらを読んでみた。




Proton pump inhibitors and the risk of hospitalisation for community-acquired pneumonia: replicated cohort studies with meta-analysis.
Gut. 2014 Apr;63(4):552-8.

P:40歳以上でNSAIDsを初めて処方された患者に
I:予防的にPPIを併用することは
C:併用しない場合と比べ
O:市中肺炎リスクが上昇するのか?

8地域における後ろ向きコホート試験のメタアナリシス
期間:1997年1月1日~2010年3月31日

<include>

40歳以上で、初めてNSAIDsを処方された患者
フォローアップ期間は180日
28日以上PPIを予防的に処方されたNSAIDsを処方された患者を解析対象とした

<データベース>

カナダ(アルバータ、サスカチュワン、マニトバ州、オンタリオ州、ケベック州、ノバスコシア州)

アメリカ(MarketScan)

イギリス(General Practice Research Database)の8つのデータベースを対象
・カナダの6つのデータベースはそれぞれの地域の90%以上の人をカバー
 →66歳以上の患者のデータを解析(若い人はデータを取得できなかった)
 →軍人、受刑者等の公的基金で支給されるものは除外されている。
・GPRDはイギリスの人口の代表的なサンプルを含んでいる
MarketScanはアメリカの大規模な雇用者用の健康保険のデータを含む
 →40歳~65歳のデータを解析
  (高齢者はMedicareの対象なので完全なデータが取得できなかった)

<exclude>
1.40歳未満の患者(市中肺炎の罹患率が低い)
2.コホートに登録するまでの6ヶ月以内にPPI、H2阻害薬、NSAIDsが処方されていた
3.コホートへのエントリー前に市中肺炎による入院もしくは、救急利用があった
4.コホートへのエントリー時に入院していた
5.結核の治療を受けていた
6.コホートへのエントリー前にがんの既往、もしくは肺炎のリスクを高める治療を受けていた
7.コホートへのエントリー前に市中感染で3日以上30日以下の入院をしていた
8.病歴を把握するためにコホートエントリー前の期間が1年以下

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初発症状バイアスと交絡バイアスを減らすため
2は、GERDによる影響をなるべく除外するためみたい。
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<primary outcome>
NSAIDsによる治療を開始してから6ヶ月以内の市中肺炎による入院(HCAP)リスク

<分析>
多重ロジスティック回帰分析で、ORと95%CIを推定した。


【結果】
<母集団>
PPI暴露群:96871
PPI非暴露群:4141634

PPI暴露群では、非暴露群に比べ高齢層、女性、合併疾患の割合が少し高かった。
インフルエンザ予防接種割合も高かった。

H2阻害薬暴露群:47344
H2阻害薬非暴露群:4342733

<primary outcome>
PPI暴露によるHCAPリスク 調整OR = 1.05 (95% CI 0.89 - 1.25; I2=0%)
PPIとNSAIDsの新規使用者のHCAPリスクのフォレストプロット

H2阻害薬暴露によるHCAPリスク 調整OR = 0.95 (95% CI to 0.75 - 1.21; I2=0%)


H2阻害薬とNSAIDsの新規使用者のHCAPリスクのフォレストプロット



ディスカッションでは、
・初期の市中肺炎症状の誤診?による初発症状バイアスの可能性
・市販薬のH2阻害薬やPPIを使用した可能性は除外できない
・NSAIDsとの併用している患者に限るため一般化できるかは不明
・適応症のGERDの有無に関する情報は得られなかった
などと触れている。

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PPIの服用で増えるのか?増えないのか?私の理解力だと正直よく分からない。。

GERDの人が市中肺炎等のリスクが高ければPPIによる影響は少ないんじゃないかと
考えることは出来そうだけど、そういった文献は探してないので不明。

単純にPPIを飲むことよりも、
PPIを飲む状況自体が市中肺炎リスクが高い状態というのもなんとなく納得はできるけど。


2014年5月16日金曜日

PPIを服用していると市中肺炎が増える?

PPIがホントよく処方されていて飲んでいる人が多く、
8週の制限もあってないような印象。

日ごろ患者さんの応対をして、長期で服用しても特に健康上問題ないのかな?
と気になったので、PPIの副作用について調べてみる。

色々あるようなので何回かに分けて勉強。
今回は肺炎について。

肺炎のリスクが上がるというのと、上がらないというのがあった。
今日は上がるという方。


Confounding in the association of proton pump inhibitor use with risk of community-acquired pneumonia.
J Gen Intern Med. 2013 Feb;28(2):223-30.

P:30歳以上の成人に対し
I:PPIを使用することは
C:使用しない場合と比べて
O:市中肺炎を始めとするリスクは上昇するのか?

後向きコホート試験

【Methods】
6つの雇用者用医療保険のうちのどれかに
1997~2007で連続で加入していた30歳以上の人54490人を対象
四半期ごとに保険の請求データをもとに評価。

11年間のいずれかの四半期で、PPIを使用したことがある人をPPI群とした。
PPI使用群:26,436人(1,163,184 人四半期)
→罹患率は、PPI使用期(320,981四半期)、非PPI使用期(842,203四半期)で別々に計算した。
PPI非使用群:28,054人(1,234,376人四半期)
※群間の調整はロジスティック回帰分析で推定した

市中肺炎(CAP)、変形性関節症、胸痛、尿路感染症(UTI)
深部静脈血栓症(DVT)、皮膚感染、関節リウマチについてそれぞれフラグを立てた。
最初の四半期からCAPの診断を受けた人やPPIの処方があった人を除外はしなかった。


【Results】
未調整の四半期ごとの各疾病の発生率
調整された四半期ごとの各疾病の発生率

深部静脈血栓症(DVT)、皮膚感染、関節リウマチについても、
調整後に比較すると統計学的に有意に多い。
DVT (25 vs. 16 cases per 10,000 persons per year, p<0.001),
skin infection (143 vs. 124 cases per 10,000 persons per year, p<0.001)
rheumatoid arthritis (85 vs. 68 cases per 10,000 persons per year, p<0.001)

***********************
調整後の市中肺炎のリスク比は、
RR = 111/68 = 1.63
でも発生率自体が低いからそんなに大きな差ではないのではないのかしら?
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服用期間順に並べて1/3づつに分けた場合の発生率の比較
短い方の1/3 PPI服用期間平均 = 1.64 (SD 0.77) 四半期
まん中の1/3 PPI服用期間平均 = 8.6 (SD 3.5) 四半期
長い方の1/3 PPI服用期間平均 = 25.9 (SD. 7.10) 四半期
全体の平均 12.1 (95 % CI 12.0–12.3)  四半期

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服用期間が長いほど発生率が上がるのは、
PPIより元の疾患とか併用薬とかの影響が大きいんじゃないのかなぁ。。
全体を通してPPIを服用したほうが、疾病リスクが上がるという結果みたい。
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Are proton pump inhibitors associated with the development of community-acquired pneumonia? A meta-analysis.
Expert Rev Clin Pharmacol. 2012 May;5(3):337-44.

P:成人に
I:PPIを使用することは
C:使用しない場合に比べて
O:市中肺炎を増加させるのか?

2件の後向きコホート研究と7つの症例対照研究のメタアナリシス
全体で120863例

1988年~2011年11月の期間で英語の論文を検索
2名のレビューアーが検討し、意見の相違は合意を形成した。
小児、ピロリ菌除菌療法、重症治療のものは除外した。

【結果】
全体:OR 1.39, 95% CI 1.09 - 1.76; I2=98%; 9試験
高用量:OR 1.50, 95% CI 1.33 - 1.68; I2=4%; 4試験
低用量:OR:1.17, 95% CI 1.11 - 1.24
短期間(30日):OR 1.65, 95% CI 1.25 - 2.19; I2=91%; 6試験
長期間(180日):OR 1.10, 95% CI: 1.00-1.21

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全文が見れなかったので詳細不明。
高用量、短期間でORが高い。


どちらも肺炎のリスクは高まるという結果だが、
服用期間でのリスクについては矛盾する。
180日=2四半期だから、比較するのは適切じゃないのかな?
はたしてどうなのかしら?

PPIでは肺炎のリスクは増えないというのが2014年に出たみたいなので、次に見てみようと思う。

2014年5月11日日曜日

最近の日本人のピロリ菌の保菌率

普段いる薬局が消化器のクリニックの近くにあるので、
ピロリ菌の除菌療法の患者さんが必ず1-2名いらっしゃる。

そういえば、そもそもピロリ菌に感染している人が
どのくらいの割合でいるのかを知らなかったので勉強。


Prevalence of Helicobacter pylori infection measured with urinary antibody in an urban area of Japan, 2008-2010.
Nagoya J Med Sci. 2012 Feb;74(1-2):63-70.

J-MICC study(日本多施設共同コホート研究)の中の
Daiko sutudy(名古屋大学が行っている大幸研究)のコホートにおけるピロリ菌の陽性率の比較。
コホート研究のベース時点での横断研究。

J-MICC study
大幸研究

2008年6月~2010年3月に名古屋大学大幸医療センターで、
名古屋市在住の35歳~69歳の5167名(男性1467名・女性3700名)を対象に調査。
ピロリ菌感染の有無は、尿中抗体を大塚製薬のラピアンを使用し検査した。

ピロリ菌の感染率
35歳~39歳 19.6%(95% CI 16.8-22.6%)
40歳~49歳 25.8%(95% CI 23.5-28.2%)
50歳~59歳 39.4%(95% CI 36.8-42.1%)
60歳~69歳 50.3%(95% CI 47.8-52.7%)
 全  体   36.4%(95% CI 35.1-37.7%)


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試験への組入が該当施設を受診している人の中で同意が得られた人なので、
感染率が社会一般と比較して妥当かどうかはちょっと分からない。
ピロリ菌の感染率自体は、衛生環境の向上で年々低下傾向とのこと。
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Helicobacter pylori infection in Japan.
Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2013 Jan;7(1):35-40.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23265147





日本へリコバクター学会のパンフレット
http://www.jshr.jp/pdf/info/topics/jshr_pylori01.pdf

厚生労働省 がん臨床研究事業
ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済評価に関する研究から



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どれもだいたい示す感染率は同程度。
30代で20~30%で、60代以降は50%前後くらいかな。

検査方法についても知識不足なので次に勉強しよう。

2014年5月9日金曜日

高血圧ガイドラインをチラ見(NICE)

今月末の社内の勉強会に向けた予習、その3。

イギリスの公的医療サービスを提供しているNHSの機関のNICE(National Institute for Health and Clinical Excellence:国立医療技術評価機構)の2011年の高血圧のガイドライン


Hypertension (CG127) : clinical management of primary hypertension in adults
http://guidance.nice.org.uk/CG127


<定義>
Stage 1
診察時の血圧が140/90mmHg以上で、
24時間自由行動下血圧(ABPM)または家庭血圧(HBPM)の平均値が135/85mmHg以上

Stage 2
診察時の血圧が160/100mmHg以上で、
24時間自由行動下血圧(ABPM)または家庭血圧(HBPM)の平均値が150/95mmHg以上

重症高血圧
診察時の収縮期血圧が180mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上

stage2以上は無条件に治療開始
stage1は、臓器傷害、心血管障害、腎疾患、糖尿病、心血管リスクが10年で20%以上の人は治療


<降圧目標>

・80歳未満の人は、診察時血圧で140/90mmHg未満
・80歳以上の人は、診察時血圧で150/90mmHg未満

・白衣高血圧が疑われる人は、補助的に
 ABPMまたはHBPMで80歳未満は135/85mmHg未満、80歳以上は145/85mmHg未満


<Step1 treatment>

・55歳未満の場合、ACEIもしくは、低価格のARBが第一選択として推奨。
 咳などでACEIが使用できない場合は、低価格のARB
・ARBとACEIは、併用しないほうが望ましい

・55歳以上の人と黒人(アフリカやカリブが起源の人)は、CCB(Caチャネル阻害薬)を推奨
 CCBが浮腫、過敏症などで使用が不適切な場合や心不全やそのリスクがある人には、
 チアジド系利尿薬を推奨

・β阻害薬は高血圧の初期治療としては推奨されない
 しかし、若い人では考慮しても良いかもしれない。
 ARBやACEIが使えない人、出産の可能性のある人、交感神経が亢進している人など


<Step2 treatment>

・Step1の治療で上手く血圧がコントロールできない場合は、
 CCBをARBやACEIと組み合わせて使用することを推奨。

・Step2の治療としてCCBが不適当(浮腫や過敏症などで)な場合や心不全やそのリスクがある人
 に対しては、チアジド系利尿薬を推奨

・黒人(アフリカやカリブが起源の人)の人に対しては、
 CCBと組み合わせて使用する場合、ACEIよりも優先してARBを検討したほうがよい。
 

<Step3 treatment>
・Step3の治療をする前に、step2の治療薬の用量が最適または最良かどうか確認する

・3剤併用療法を行う場合は、ARBもしくはACEI + CCB + チアジド系利尿薬を推奨


<Step4 treatment>

・3剤併用療法を行っても140/90mmHgを達成できない場合は、
 4剤目の追加や専門家への助言を求める

・治療抵抗性高血圧に対するStep4
  ・血清K濃度が4.5mmol/L未満の場合は、スピロノラクトン(25mg X1)を追加して
   さらなる利尿を促すことを検討
   高K血症のリスクがあるため、eGFRが低下しているような患者には注意が必要
  ・血清K濃度が4.5mmol/L以上の場合は、チアジド系利尿薬の追加を検討
  →利尿剤を追加する場合は1ヶ月Na,K,腎機能に注意を払い、必要に応じて検査継続

・利尿薬の追加が、禁忌や無効な場合はαもしくはβ阻害薬を検討


****************************
糖尿病の患者、18歳未満、妊婦などはガイドラインの対象外と記載があり。
家庭血圧をみるのはJSHと同じ。
だいたい薬の推奨も同じような感じ。

高齢者の定義がJSHは75歳、JAMAは60歳、NICEは80歳と異なるのはなんでだろ?
高齢者は150/90mmHgの管理でよいというのは共通なのに。

2014年5月6日火曜日

高血圧ガイドラインをチラ見(JSH)

日本高血圧学会の
高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)をチラ見。
http://www.jpnsh.jp/guideline.html の電子版というやつ。
http://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf



<治療開始>
140-90mmHg以上で治療検討。
リスクに応じて、即時治療~経過観察を行う。
予後リスク因子

<薬剤選択時の注意>
①1日1回投与のものを優先する
②低用量から始める(特にサイアザイド系利尿薬は半錠程度から)
③20/10mmHg以上の降圧を目指す場合には初期から併用療法を考慮する
④副作用をきたすことなく降圧効果を高めるために適切な組み合わせで併用する
⑤投与した降圧薬の降圧効果がほとんどない場合や忍容性が悪い場合には
  作用機序が異なる他の降圧薬に変更する

⑥合併する疾患や病態により積極的適応を考慮し,禁忌や慎重投与に配慮し,
  さらに降圧薬以外の併用薬との相互作用に注意し適応する降圧薬を選択する

<第一選択>
積極的適応がない場合は、
Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬の中から選択。

β阻害薬は、糖尿病惹起作用、臓器障害・心血管病抑制効果で他の4つよりエビデンスで劣る
積極適応・慎重投与

<治療目標>
特にリスク因子がなければ140/90mmHg未満
後期高齢者は、臓器の血流障害をもたらす可能性があるため150/90mmHg未満
(認容性がある場合は140/90mmHg未満を目標)
糖尿病、CKD患者は130/80mmHg未満

2009年のガイドラインより目標値が緩和されている。

JSH2009降圧目標

JSH2014降圧目標




  






<糖尿病既往の場合>
130/80mmHg以上で治療検討。
第一選択薬は、ARBもしくはACE阻害薬を推奨。
効果不十分時は、1剤目増量もしくは、Ca拮抗薬もしくは利尿薬追加で2剤併用
さらに効果不十分時は、ARB or ACEI + Ca拮抗薬 + 利尿薬 の3剤併用を推奨

<CKD既往の場合>
尿蛋白+の場合は、RA系阻害薬を第一選択薬として推奨。
130/80mmHg未満を目標。日本人CKD患者では、脳卒中発症が多く、尿蛋白はCVD、ESRDの危険因子のため目標低め。
降圧目標に到達するためには多剤併用になることが多い。


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JAMAのものに比べると、微に入り細に入りという感じ。
細かいところは違うのだろうけれど、大枠では同じか?
150/90っていうのが、JAMAだと60歳以上、JSHだと75歳以上だけど。

2009年のものと比べ
降圧目標は、緩和されている。
第一選択薬が、明記されるようになっている。という点がパッと見の違いかしら?


メタボリックシンドロームについて記載があるが、こんなに言っているのは日本だけ?
食事・運動療法は大切だと思うけど、腹囲に拘りすぎるのはどうなのかなと少し疑問。
Drはどのように考えていらっしゃるのかしら?

2014年5月4日日曜日

高血圧ガイドラインをチラ見(JAMA)

5月の終わりに会社の勉強会で、
改訂された日本高血圧学会の高血圧ガイドラインについて行うそうなので、勉強。

日本の改訂されたのはwebで見れないので他国のを見てみる。
と思いきや最近日本のも見れるようになったらしい。
http://www.jpnsh.jp/guideline.html の電子版というやつ。


2014 Evidence-Based Guideline for the Management of High Blood Pressure in Adults

JAMA. 2014 Feb 5;311(5):507-20
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1791497


【焦点を当てた3つの質問】

1.高血圧の成人に薬物治療を特定の閾値で開始することは、健康アウトカムを向上させるのか?

2.高血圧の成人へ薬物治療で目標血圧に下げることは、健康アウトカムの向上に繋がるのか?

3.高血圧の成人へ使う降圧薬や種類の違いによって、有効性や害は異なるのか?


Recommendation
※収縮期血圧:SBP、拡張期血圧:DBP

Recommendation 1
一般的な60歳以上の人に対しては、SBP≧150mmHg or DBP≧90mmHg で治療を開始し、150-90未満を目標とする(Strong Recommendation – Grade A
また、薬物治療により十分血圧が下がり(例SBP<140)、健康やQOLに影響を与える副作用がない場合は、治療の調節をしなくても良い(Expert Opinion – Grade E)

Recommendation 2
一般的な60歳未満の人に対しては、DBP≧90mmHg で治療を開始し、DBP<90mmHg を目標とする。(30-59歳:Strong Recommendation – Grade A / 18-29歳:Expert Opinion – Grade E)

Recommendation 3
一般的な60歳未満の人に対しては、SBP≧140mmHg で治療を開始し、SBP<140mmHg を目標とする。(Expert Opinion – Grade E)

Recommendation 4
CKD既往の18歳以上の人に対しては、SBP≧140mmHg or DBP≧90mmHg で治療を開始し、140-90未満を目標とする(Expert Opinion – Grade E)

Recommendation 5
糖尿病既往の18歳以上の人に対しては、SBP≧140mmHg or DBP≧90mmHg で治療を開始し、140-90未満を目標とする(Expert Opinion – Grade E)

Recommendation 6
黒人でない人(糖尿病既往の人も含む)に対して治療を開始する場合は、チアジド系利尿薬、Caチャネル阻害薬(CCB)、ACE阻害薬(ACEI)、アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)を含むべき。Moderate Recommendation – Grade B

Recommendation 7
黒人(糖尿病既往の人も含む)に対して治療を開始する場合は、チアジド系利尿薬、Caチャネル阻害薬(CCB)を含むべき。(黒人:Moderate Recommendation – Grade B / 黒人の糖尿病患者:Weak Recommendation – Grade C

Recommendation 8
CKD既往の18歳以上の人に対して治療を開始(もしくは追加)する場合は、腎機能を改善させるためにACEIかARBを含むべき。人種や糖尿病既往に関わらず、すべての高血圧を伴うCKDに適応される。Moderate Recommendation – Grade B

Recommendation 9
高血圧治療の主な目的は、目標血圧への到達とその維持をすること。
治療を開始して1ヶ月で目標血圧へ至らない場合は、開始した薬を増量するか、推奨6で示した薬(チアジド系利尿薬、CCB、ACEI、ARB)の中から他のタイプを1種類追加する。臨床医は、目標血圧に到達するまで、血圧を評価し、レジメンを調整しなければならない。2剤で目標血圧に到達できない場合は、(チアジド系利尿薬、CCB、ACEI、ARB)の中からもう1種類追加する。ACEIとARBを一緒には使わないように。
薬剤に対する禁忌や3剤で効果不十分で目標血圧に到達できない場合は、他の種類の降圧薬を使用してもよい。高血圧治療の専門家への紹介は、上記の方針で目標血圧に到達できない患者や追加のコンサルが必要な患者の複雑なマネジメントに対して示すことが出来る。(Expert Opinion – Grade E)




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人種による治療選択肢の差異があるのが面白い。
あと治療開始になる血圧のカットオフ値がTable6にあるように色々異なるのは知らなかった。

ARBとACEIの併用が良いとか一時期言ってたような気もするが、
現在は腎機能を低下させる可能性から推奨されないんだね。

時間を見つけて日本のも読んでみよう。

2014年5月1日木曜日

FDに対する六君子湯(2)


ツムラさんに電話で聞いたら、FAXで文献をいただけたので勉強。
日本での六君子湯でのFDに対する試験。


運動不全型の上腹部愁訴(dysmotility-like dyspepsia)に対するTJ-43六君子湯の多施設共同市販後臨床試験
医学のあゆみ 187 : 207-229, 1998
https://drive.google.com/file/d/0B_f7wHNXdqyWWUYyeVprT1REZVk/edit?usp=sharing

P:上腹部愁訴が4週以上持続、もしくは断続的に訴える患者に対し
I:六君子湯で治療することは
C:低用量群(含量:2.5%)と比較して
O:症状が改善するのか?
T:治療、ランダム化比較試験


二重盲検および隠蔽化してランダム割付。

ツムラ43番 六君子湯 2.5g/包(TJ-43群)と乳糖に2.5%の六君子湯と香料、嬌味剤を添加(外装、包装等も製品と同じ)2.5g/包(低用量群)を比較。

1日3回毎食前もしくは毎食間で2週間服用。
消化器の薬は、他の薬の併用は認めなかった。
(整腸剤はのぞく)

296例登録(TJ-43群143例、低用量群149例)
61例除外(TJ-43群29例、低用量群32例)
追跡率79.4%


<主要評価項目>
運動不全型(食欲不振、胃部膨満感、胃部不快感、胃もたれ、吐気)と潰瘍症状型(上腹部痛、胸やけ、げっぷ)の類型別総合改善度を医師が5段階(1.著明改善、2.改善、3.やや改善、4.不変、5.悪化)で評価
〇運動不全型症状類型別総合改善度(DDGI)
→運動不全型症状の改善度
〇最終改善度(FGI)
→運動不全型、潰瘍症状型を総合した全ての上腹部症状の改善度


<解析>
解析対象群で主解析を行い、
副解析としてITTで解析を行った。
判定委員会で、解析対象症例の決定を行った。
有効性は、U検定とFisherの正確確立検定を行った。


<結果>
DDGI
改善以上率 TJ-43群59.3% 低用量群40.2%(p=0.004)
著明改善率(ITT) TJ-43群45.2% 低用量群25.2%
改善以上率(ITT) TJ-43群51.4% 低用量群37.2%(p=0.001)

FGI
改善以上率 TJ-43群60.2% 低用量群41.0%(p=0.004)
著明改善率(ITT) TJ-43群43.7% 低用量群22.8%
改善以上率(ITT) TJ-43群52.7% 低用量群38.3%(p=0.001)

層別解析:漢方選択基準の差異による有意差
虚証条件1を満たす(p=0.001)、満たさない郡(p=0.442)
腹壁の緊張が弱い(p=0.001)、普通(p=0.363)
腹部振水音なし(p=0.004)、あり(p=0.028)
気力・体力が低下している(p=0.003)、普通(p=0.065)

※虚証条件1:腹壁の緊張低下、自・他覚的な腹部振水音、あるいはX線検査による下垂胃傾向のいずれかの傾向が認められる患者

症状別のTJ-43群の改善以上率
運動不全症状型
胃もたれ68.5%、胃部膨満感67.5%、吐気64.4%
潰瘍症状型
上腹部痛64.9%、胸や63.6%、げっぷ64.0%


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中国のでは比較していたので、症状別でどの程度改善度が違うか気になるところ
あまり証に関係なく処方されていても、本来の証に近いほうが改善率がよさそう。
低用量群の改善率が思ったより良いのは、
自然経過がよいから?それともプラセボ効果?
味覚とか嗅覚による影響もあるのかな?
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症状が重いと複数要因が関わることも多いので、
単剤よりは他の薬と併用したほうが改善が良いのかもしれない。

証が合わない人で改善が不十分な場合も患者さんにDrへ効果不十分を伝えるように
指導したほうがよいのかもしれない。

漢方はやっぱりお湯で溶いて飲んだほうがよいのかな。


補気剤としての、
四君子湯
→六君子湯(漢方で言うところの湿痰が強いもの?)
→補中益気湯(気虚が強いとか発熱、下垂のあるもの?)
はよく見かける処方なのでもう少し勉強したい。

あと押さえたいのは、瀉心湯系かなぁ。