2014年12月17日水曜日

GISSIとJELIS(MRさんがEPA&DHAの説明会の資料に使ってた試験)


こないだのEPAとDHA(ロ〇リガ)の商品説明の際に使われていた
試験を探してみた。

どっちもLancetだって。



GISSI-Prevenzione trial
http://www.gissi.org/Egissip/T_Intro.php
(全文が見れないのでアブストのみ)
*************************
Lancet. 1999 Aug 7;354(9177):447-55.

P 3ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある人
I  ビタミンE、n-3系不飽和脂肪酸(n-3 PUFAs)、もしくはその両方
C 介入なし
O 死亡、非致死性の心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカム

11,324名を3.5年追跡したオープンラベルの4群比較のランダム化比較試験

1次エンドポイント
(介入なしと比較 4-way)
n-3 PUFAs群 RRR:15% (2-26) 
n-3 PUFAs+VE併用群 RRR:14% (1-26)
(n-3 PUFAsあり、なしで比較 2-way)
RRR:10% (1-18)
*************************

ビタミンEの併用による差はないそう。

全文が見れた同じ試験を時間経過により解析している
Circulation. 2002 Apr 23;105(16):1897-903. によると
1次アウトカムは2-wayで718 (12.7%) vs 795 (14.1%) だそうなのでARR=1.4, NNT=71

あとオープンラベルなので、明らかにハードなアウトカムの死亡のみを見てみると、
2-wayで477 (8.4%) vs 554 (9.8%) RRR=21% (7–34), ARR=1.4, NNT=71
あれ?死亡のARRが一緒だから、心筋梗塞や脳卒中の発生率は変わらないの??


どう考えればよいのか分からないけれど、
心筋梗塞既往で3.5年で1031名(9.1%)がなくなるようなハイリスク群では、
死亡率が減っているから、効果が期待できるのかな?



もう一方のJELIS
*************************
Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

P 総コレステロール 6.5 mmol/L以上(LDL 4.4mmol/L以上)の75歳以下の成人
I  スタチン(プラバスタチン、シンバスタチン)とEPA(1.8g/日)の併用
C スタチン単独
O 冠動脈イベント
  (心突然死、心筋梗塞、不安定狭心症、血管形成術、ステント術、冠動脈バイパス術)

18645名を5年追跡したオープンラベルのランダム化比較試験

<割付>
1ブロック4名の置換ブロック法。冠動脈疾患の有無で層別化
<マスキング>
オープンラベル。PROBE法(評価者のみブラインド)
<解析>
ITTで解析
α=0.05, power=80%で1次アウトカムの25%減少を検出
脱落率は8.5%と9.5%

<outcome>
冠動脈イベント
 EPA併用 262/9326 (2.8%)
 スタチン単独 324/9316 (3.5%)
 ハザード比 0.81 (0.69–0.95)
全死亡
 EPA併用 286/9326 (3.1%)
 スタチン単独 265/9316 (2.8%)
 ハザード比 1.09 (0.92–1.28)
*************************

JELISでは、対象患者がGISSIと異なり
6ヶ月以内に心血管障害や脳血管障害のあった人は除外している。

1次アウトカムの冠動脈イベントでは、有意差あり。
ただ、オープンラベルでDrの判断が関わる手術がアウトカムに含まれるのは、
バイアスが大きくなるので微妙。
全死亡では差なし。

全体的に少しEPA併用群の方が良さそうな傾向はあるような気もしないでもないから、
どう判断したらよいのかな?予防的な効果を見ているらしいけれど??

スタチン単独よりもEPAを併用したほうが中性脂肪は下がるみたい。




合わせて考えると、
循環器のDrがハイリスクな患者さんに出すような場合はメリットがあるのかも。

でも、MRさんが説明をしていたDrは消化器なんだよなぁ。。

2014年12月15日月曜日

EPAとかDHAってそんなに効果があるの?


ロドリガの製品説明でMRさんがやたらと血管障害の予防にプッシュしていて、
何かネガティブな意見も耳にした気もするけど本当かな?
と思ったので、お勉強。

n-3系とかω3脂肪酸というのの仲間。よくいう魚の油(fish oil)。


***********************
JAMA. 2012 Sep 12;308(10):1024-33.

P 成人に
I  ω3不飽和脂肪酸を摂取(食事、サプリメント問わず)
C 他の食事もしくは、プラセボを服用
O 全死亡率、心死亡、突然死、心筋梗塞、脳卒中

システマティックレビューとRCTのメタアナリシス

<検索>
Pubmed, Embase, CENTRAL

他のシステマティックレビューの参考文献まで検索
<対象>
ω3不飽和脂肪酸を摂取群と摂取していない群で比較したRCT
期間が1年以上。英語。

<Study selection >

検索者についての記載なし
検索:3635→全文:250→20
<risk of bias>
コクランのrisk of biasツールを使用。reviwerについては記載なし。
<Data extraction

2名が独立して行い、不一致は第三者が決定した

<出版バイアス>
ファンネルプロットとBegg-Mazumbar test

<outcome>

全死亡率 RR:0.96(0.91 to 1.02, I2 = 12%) RD:−0.004( −0.01 to 0.02,  I2 = 38%)
心死亡 RR:0.91(0.85 to 0.98, I2 = 6%) RD:−0.01(−0.02 to 0.00, I2 = 78%)
突然死 RR:0.87(0.75 to 1.01, I2 = 8%) RD:−0.003(−0.012 to 0.006, I2 = 91%)
心筋梗塞 RR:0.89(0.76 to 1.04, I2 = 35%) RD:−0.002(−0.007 to 0.002, I2 = 35%)
脳卒中 RR:1.05(0.93 to 1.18, I2 = 14%) RD:0.001(−0.002 to 0.004, I2 = 15%)
***********************


死亡率は17試験(63279名)を解析したもので、
累積メタアナリシスを見ると2007年以降は有効性を示せる試験がないみたい。

中性脂肪を下げたり、血流を良くしたりの作用はあるのだろうけれど、
介入により死亡などを改善するほどの作用はなさそう。
(というか、有用性は議論がいろいろあるようでよく分からない)


メーカーさんは漁村と農村の心血管障害の差がうんたらかんたら・・・と言っていたけど、
EPA、DHAの摂取量以外の原因もあるのかもしれない。



薬価(後発品はうちの薬局にあったやつの薬価)を見てみると

で安くない。。1日薬価200円超ってDPP-4阻害薬とかARB並。
こんなに値が張るなんて意識したことなかったなぁ。


そこまでプッシュするほどなの薬なのかは疑問。
魚の油だから、相互作用を気にしなくても良いし、安全性は高いから
いろいろ飲んでいるような人には使いやすいのかも?



効果があるよ!って説明をする際に
GISSI study と JELIS study というのを資料として使っていたから
今度読んでみようかな。

2014年11月20日木曜日

SGLT-2阻害薬ってどう違うの?


SGLT-2阻害薬がいろいろ発売になり、どう違うのか?
が気になったので調べてみた。

現在5成分が承認、販売されていて、1成分が申請中?

とりあえず構造をみると、
























1のダパグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、エンパグリフロジン
2のカナグリフロジン、イプラグリフロジン

がグルコースにくっついている置換基が似ている。


各インタビューフォームから薬物動態的なものを見ると












というような感じ。
(empagliflozinはアメリカの添付文書を参照した)


だいたい構造が似ていれば、動態の特徴も似ているかなぁ。。


蛋白結合率の差とか
SGLT-2とSGLT-1への選択性の違いは、治療上の差がでるのかな?

SGLT-1による取り込みが亢進するから、
だいたい効果的には上限があるという話なので変わらない?


新しい薬だから処方が来るとびびって応対してしまう。
勉強しよう。

2014年11月16日日曜日

ピロリ菌の除菌療法に整腸剤は有用?


ピロリ菌抑制に乳酸菌が良いなんて話をたまに耳にしたり、
以前の職場で除菌率を上げるなんて話を聞いたことを思い出したので調べてみた。


*****************************
Aliment Pharmacol Ther. 2007 Jan 15;25(2):155-68.

P ピロリ菌陽性で除菌療法をする人
I  プロバイオティクス製剤を併用する場合
C プラセボを併用する場合
O 除菌成功率

RCTのメタアナリシス

<検索>
Pubmed, Embase, Chochrane Library, Science Citation Index, Chinese Biomedical Databas
別にAGAやGASTRO、欧州へリコバクター会議の抄録を検索した
著者の何人かには出版されていない試験について問い合わせた
<対象>
ピロリ菌除菌療法に対する追加としてプラセボとプロバイオティクス製剤の比較をしたRCT
除菌療法:PPI+抗菌薬2種の3剤併用療法の1次2次除菌、ビスマス製剤含む4剤併用療法
言語:英語、中国語、他は翻訳できたもののみ

<Study selection >
2人が独立して評価。不一致は、第三者を交えて解消した。
382件→
31件→14件
<risk of bias>
2人のレビューアーが、Jadad scoreを用いて評価。

不一致は第三者がコンサルトして最終的なスコアを決定した。3未満がlow quality
<データの抽出>
ITT。他は不明?
<出版バイアス>

ファンネルプロットとEggerの回帰検定で検討

<outcome>
・除菌率 (11試験1074名, P = 0.65, I2=0%
 プロバイオティクス併用群  463/554  83.6%
 プラセボ併用群  389/520  74.8%
 OR = 1.84 (1.34 - 2.54)  

*****************************


プロバイオティクス製剤(いわゆる整腸剤)を除菌療法に併用することで、
除菌率は上昇し、下痢や腹痛、味覚障害といった副作用も減少傾向。

併用による除菌率の上昇は1.12倍で、NNT は11.4。
オッズ比だと1.84で効果が大きく見えるのはなんか不思議。

出版バイアスはなさそうだけど、
小規模で信頼区間が広くて、個別には有意差がない試験が多いので、
似たような試験を統合して母数が増えたことで有意差がついたのはあるかも知れない。


何で効果があるのかはよく分からないけれど、
整腸剤はそんなに安いし、常備薬として持っている人も多いから、
除菌療法する人が手持ちの整腸剤を一緒に飲むのは悪くないかも。

おなかの調子悪くなくても整腸剤飲むと良いですよと、すすめてみようかな。



あと、全文見れないので詳細不明だけど、

J Clin Gastroenterol. 2013 Jan;47(1):25-32.
Helicobacter. 2009 Oct;14(5):97-107. 

によると、Lactobacillus や Bifidobacterium で有効みたいなので、
ヨーグルト食べたり、ヤクルト飲んだりでも良いのかも?


キノロン使ったりする保険外の3次除菌以降については不明。

2014年11月9日日曜日

ピロリ菌の1次除菌にアルコールはよくないの?

日ごろピロリ菌除菌のパック製剤をお渡しする際に、
お酒は飲んで良い?と聞かれることが多い。

ピロリ菌の2次除菌はメトロニダゾールがアルデヒド脱水素酵素を阻害するから、
アルコール併用を避けるべきなのは明確だが、
1次除菌の場合はどうなのかな?と気になったので調べてみた。



よく避けるように言われている理由は、下のようなかんじ?

1.アルコールが胃酸分泌を増やし除菌率が下がる?
2.薬を飲む量が多いのでアルコールによる肝臓の負担が増える?
3.飲酒により酔っ払って薬を飲み忘れる?



1.アルコールが胃酸分泌を増やし除菌率が下がる?

アルコールが胃酸を増やすといわれるのは、
アルコールによる粘膜刺激→ガストリン遊離→壁細胞からの胃酸分泌↑ という感じ?
少量だと胃酸分泌は更新するけど、たくさん飲むと逆に減るんだっけ?

アルコールと除菌率の関連を見ている試験が2個見つけられた。
(どちらも全文見れないので詳細不明)

Adv Med Sci. 2008;53(2):310-5.
→アルコールと除菌率に関連なし。喫煙は関連あり
Eur J Gastroenterol Hepatol. 2002 Mar;14(3):291-6.
→除菌率:非飲酒者70.1%(n=107), 軽飲酒者79.3%(n=29), 飲酒者100%(n=20)
→治療の中断率は、飲酒者29.9%, 非飲酒者12.2%、調整OR=3.24 (1.12 to 9.20)

除菌率については一緒にPPIを飲んでいるからか、
顕著に低下するということは特になさそう。



2.薬を飲む量が多いのでアルコールによる肝臓の負担が増える?

ピロリ菌の除菌の副作用で肝機能障害が出たりするのはたまに耳にするけれど、
アルコールを呑んだから、頻度が増えるかどうかはよく分からないので保留。

よほどの大酒呑みじゃない限りは、
アルコールを気にするくらいなら、併用薬を気にしたほうが良いような気もする。



3.飲酒により酔っ払って薬を飲み忘れる?

1の文献でもあったが、アルコール呑んだほうが中止率が高いし、
普通に考えて酔っ払って薬を飲み忘れることはよくあることなので、
あながち間違ってはいないのかも知れない。


じゃあ、食前に除菌製剤を飲んでおけばお酒飲んでもよいのか?と気になって調べたが、
食前服用で試験をしているようなものが見当たらなかった。

アモキシシリンもクラリスロマイシンも空腹時で吸収が落ちる等はなさそうなので、
胃に物がないことによる胃内滞留時間が短くなることがどの程度影響するのか
よく分からなかったので、メーカーさんに聞いてみた。

メーカーさんに問合せたら、
ピロリ菌除菌における抗菌薬は、胃内滞留によるものと、粘液の分泌による2ルートで
抗菌作用が期待でき、粘液分泌に伴う方がphが高く効果が大きいと考えられるので、
一般論として食前服用して多少滞留時間が短くなっても影響は少ないと思われる。
というような回答だった。




食前に飲んでもよいから1週間飲み忘れなく、飲みきることを守れれば、
多少アルコール呑んでも問題はなさそうな感じがするかな。

結局、抗菌薬はコンプライアンスが大切というお話?

2014年10月27日月曜日

ビスホスホネートについてお勉強 その2


ビスホスホネートについて引き続きお勉強。


アレンドロン、リセドロン、ミノドロン等、
毎日だったり、週1回、月1回だったりいろいろあって良く分からなかったので、
どの程度値段が違うのかをまとめてみた。













こないだ発売したボナロンゼリーの薬価にびっくり。
製剤工夫で倍の値段がつくんだね。
特許切れ対策にしては、メーカーさん万々歳?
うちの地元の大きな病院も採用をゼリーに切り替えたしなぁ。

しかし、消化器系の副作用が減るとのデータもないし、
飲んだら一緒に水も180mL飲めって書いてあるし、
ゼリーを噛み砕くなと書いてあるし、倍の値段のメリットがあるのか疑問。



消化器の副作用は、毎日、週1、月1だと変わってくるのかな?
と気になったけど、あまり文献が見つけられなかった。

インタビューフォームを見ると副作用は大体変わらないと書いてある。


パッと見つけられたのは↓
********************
Ann Pharmacother. 2009 Apr;43(4):577-85.
(全文は見れないので詳細不明)

P 骨粗しょう症の女性
I  イバンドロネートを月1回服用
C アレンドロネート、またはリセドロネートを週に1回服用
O 重篤な胃腸障害

後向きコホート

月1回 45 (0.52%)  対 週1回 70 (0.81%)
OR = 0.64(0.44 to 0.93)
********************


薬剤に暴露する頻度が減るから、副作用は週1、月1のほうが多少減るのかな?

毎日飲むのも大変だし、週1回、月1回の製剤になってきている流れは、
患者さんにとっては悪くないのかも知れない。

2014年10月19日日曜日

ビスホスホネートについてお勉強 その1


今月の会社の勉強会は、
メーカーさんが来てビスホスホネート(ゼリーが発売したやつ)についてやるそうなので、
事前にお勉強。

Mindsに2011年発行のガイドラインあり。
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0046/G0000419/0001



ガイドラインやネットの情報を見ていると
FIT、FIT2、FLEX という一連の試験が有名らしいので読んでみる。


FIT
********************************
Lancet. 1996 Dec 7;348(9041):1535-41.

P 大腿頸部のBMDが0.68g/cm2以下の55~81歳の閉経後の女性(脊椎骨折既往あり)
I  アレンドロン酸5mgを連日服用(24ヶ月目の受診時から10mgに増量)
C プラセボ
O 脊椎骨折の発生数

2027人を平均2.9年追跡したランダム化比較試験
(両群ともに約82%はCaもしくはCa+VDのサプリメント併用)

<割付>
クリニカルセンターで層別化して10人ずつのブロックでランダム割付
<マスキング>
患者:〇、医療者:〇、評価者:〇、解析者:?
<解析>
ITTで解析
サンプルサイズは、年間の発生率を6.5%の仮定で、
α=0.05,power=99%で40%の脊柱骨折のリスク低下、power=90%で36%の低下を検出
どちらの群も脱落は5%未満

<outcome>
morphometric vertebral fracture
 アレンドロン酸   78/1022 (8.0%)
 プラセボ     145/1005(15.0%)
 相対リスク = 0.53 (0.41–0.68), NNT=14.3人
Any clinical fracture
 アレンドロン酸   139/1022 (13.6%)
 プラセボ     183/1005(18.2%)
 相対リスク = 0.72 (0.58–0.90), NNT=21.7人
********************************


ハイリスク患者に3年の服用で脊柱骨折を半分に減らしましたという結果はすごいね。。
これだけみれば処方が良く出るのも納得。
他の大腿骨とか手首は%が低いからインパクトは小さそうだけど。



FIT2
********************************
JAMA. 1998 Dec 23-30;280(24):2077-82.


P 大腿頸部のBMDが0.68g/cm2以下の55~81歳の閉経後の女性(脊椎骨折既往がない人)
I  アレンドロン酸5mgを連日服用(24ヶ月目の受診時から10mgに増量)
C プラセボ
O 臨床骨折?

4432人を平均4.2年追跡したランダム化比較試験
(両群ともに82%はCaもしくはCa+VDのサプリメント併用)

<割付>
クリニカルセンターで層別化して10人ずつのブロックでランダム割付
コンピューター生成のコードで割り当て
<マスキング>
患者:〇、医療者:〇、評価者:〇、解析者:?
<解析>
ITTで解析
α=0.05,power=90%,4000人発生率4%で25%のリスク低下を検出
どちらの群も脱落は5%未満

<outcome>
Clinical fractures
 アレンドロン酸  272/2214 (12.3%)
 プラセボ     312/2218 (14.1%)
 相対ハザード比 0.86 (0.73-1.01) 
vertebral fracture
 アレンドロン酸  43/2214 (2.1%)
 プラセボ     78/2218 (3.8%)
 相対ハザード比 0.56 (0.39-0.80),  NNT=58.8人
********************************


骨折既往歴がない人を対象に全骨折を見たら、有意差なし。
FITと同じ脊柱骨折を見ると有意差はあるけれど、だいぶNNTが見劣りする感じ。
BMDは上がっているので、「骨密度の上昇=骨折の減少」という単純な関係ではないみたい。

FITは骨折既往歴のある人、FIT2は骨折既往歴のない人で対象が異なる。

腰の曲がったばあちゃんには良いみたいということでよいのかな?
日ごろの処方では、併用よりもビスホスホネート単独の人が多い気がするんだけど、
カルシウムやビタミンDの併用をするのとしないのでは違うのかな?


FLEX
********************************
JAMA. 2006 Dec 27;296(24):2927-38.

P FITとFIT2のアレンドロン酸群で3年終了時に継続して服用していた人
I  アレンドロン酸5mg、アレンドロン酸10mgを連日服用
C プラセボ
O 股関節のBMD

アレンドロンを5年服用した人1099名をさらに平均5年追跡したランダム化比較試験
(CaとVDのサプリメント併用)

<割付>
センターで層別化して置換ブロック法でランダム割付
<マスキング>
患者:〇、医療者:〇、評価者:〇、解析者:?
<解析>
ITTで解析
どの群も脱落は10%程度

<outcome>
total hip BMD
 アレンドロン酸  −1.02% (SE=0.18)
 プラセボ      -3.38% (SE=0.22)
 MD = 2.36% (1.81%-2.90%)
Any clinical fractures
 アレンドロン酸  132/662 (19.9%)
 プラセボ     93/437 (21.3%)
 RR 0.93 (0.71-1.21) 
Clinical vertebral fracture
 アレンドロン酸  23/662 (2.4%)
 プラセボ     16/437 (5.3%)
 RR 0.45 (0.24-0.85) , NNT = 34.5人
********************************


ビスホスホネートを中止(FLEXプラセボ群)は、BMDは緩やかに下がるのに、
脊柱骨折以外の骨折頻度は変わらないみたい。


勉強不足で初耳のFDAの諮問?が2011年にあったみたい。
アポネットR研究会さんの記事が詳しい↓
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/110908.html

長期服用で大腿骨の骨折が増えるような話もあるみたいだけど、
おなか一杯なので、また今度。



何年も長期で飲んでいるおじいちゃん、おばあちゃんたくさんいる中で、
本当は飲まなくても良い人がいるかもしれないんだね。

カルシウムとかVDのサプリメントは併用を薦めてみようかな。

2014年10月5日日曜日

エホニジピンは腎機能保護によい?

エホニジピン(ランデル)が腎保護に良いとチラ聞きしたので、調べてみた。
高血圧のガイドラインなんかでも腎保護作用ありと書いてあった。


あまり処方見かけなくて詳しくないのでおさらい。

インタビューフォーム によると
エホニジピンは、日産化学工業開発の国産のCa阻害薬。
効能:高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症
血中半減期:2時間前後
代謝排泄:主にCYP3A4で代謝、胆汁を介し主に糞便中に排泄(90%以上?)、代謝物の活性あり


Keio J Med. 2010;59(3):84-95. によると
Keio J Med. 2010;59(3):84-95. より
エホニジピンは、
CaチャネルのL型とT型を阻害する L/Tタイプとされる。

アゼルニジピン(カルブロック)ニルバジピン(ニバジール)

が同じような阻害傾向で、
L型単独(アムロジピンやニフェジピンなど)
に比べ糸球体の血管を広げ、
血流量を増やしやすいそうだ。

ベニジピン(コニール)は、さらにN型も阻害し、L/T/N型と。




試験では JATOS というのが、規模が大きいようだけれど、
エホニジピンをベースに血圧の厳格管理群と緩和管理群で比較するという試験みたいなので、
とりあえずスルー。
サブ解析で腎機能を見たのがあるようだけれど全文見れないからよく分からない。


小規模なのはいくつか見つけられたので、見てみた。


Hypertens Res. 2007 Jul;30(7):621-6.
P 血清クレアチニン濃度が30mg/dL以下の慢性糸球体腎炎の患者
I  エホニジピン20mg~60mgを1日2回
C アムロジピン2.5mg~7.5mgを1日1回
O 尿たんぱく?血清アルドステロン値?

21名のランダム化クロスオーバー比較試験
ランダム化や盲検化の方法については詳細記載なし。

エホニジピン期は、アムロジピン期に比べ
GFRや血圧、脈拍などは差がなかったが、
尿蛋白量 1.7 ± 1.5 vs. 2.0 ± 1.6 g/g creatinine, p=0.04
血清アルドステロン値 52 ± 46 vs. 72 ± 48 pg/mL, p=0.009


Int Heart J. 2010 May;51(3):188-92.
P 維持透析実施の末期腎疾患患者
I  エホニジピン20mg~60mgを1日2回
C アムロジピン2.5mg~7.5mgを1日1回
O 血清アルドステロン値?

20名のランダム化クロスオーバー比較試験
ランダム化や盲検化の方法については詳細な記載なし。

エホニジピン期はアムロジピン期にくらべ
平均血圧、脈拍 血漿レニン活性および血漿アンジオテンシンIIに差はなかったが、
血清アルドステロン値 123 ± 118 versus 146 ± 150 pg/mL, P = 0.027


Am J Hypertens. 2003 Feb;16(2):116-22.
エホニジピン vs ACEI 68(43?)名のランダム化比較試験
両群ともに蛋白尿を改善傾向?(全文見れないから詳細不明)



上のは、獨協大学と慶応大学の研究で、小規模な試験だけれど
尿蛋白減少やアルドステロン値の減少が見込めるかも知れない。

不勉強であまり理解できていないけれど、
腎不全の患者さんはアルドステロン値が高値になるよ
→アルドステロンの高値は血圧も上がるし、腎機能や心血管に良くない影響を与えるよ
→ARBやACEIの他にCCBの一部でもアルドステロン下げるのがあるよ
→L型のよりはL/T型とかL/T/N型のCCB使ったらよいんじゃない?

という感じなんだろうか。

薬が切り替わった場合に、患者さんへカルシウム阻害薬のタイプから
どういう風に変わったと交付時に話すのは、アドヒアランスの向上的に悪くないかも。


他のカルシウム阻害薬でL/TとかL/T/N、L/Nの物では、
腎機能をアウトカムにした規模の大きな試験はあるのかな?


2014年9月20日土曜日

過敏性腸症候群に整腸剤は効果があるの?

気質的に異状がなくても、便秘、下痢、ガスなどで困っている
過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)の方は良くいらっしゃり、
よく整腸剤単独でも、何かとセットで処方されているのも良く見かける。

普段交付をしていて、本当に整腸剤は効くのかな?と疑問に思ったので調べてみた。


******************************
Gut. 2010 Mar;59(3):325-32.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19091823

P 16歳以上の過敏性腸症候群(IBS)の患者
I  プロバイオティクス製剤
C プラセボ もしくは 無治療
O IBS症状の改善


RCTのシステマティックレビュー

<検索>
MEDLINE (1950 ~ 2008.6), EMBASE(1980 ~ 2008.6)
Cochrane Controlled Trials Register (2007)
言語の制限は特になく、英語以外は適宜翻訳した。
2001 ~ 2007 の会議の議事録を手検索した。各参考文献まで検索した。
<対象>
プロバイオティクス vs プラセボ(または無治療)で7日以上介入をしたパラレルRCT
16歳以上の大人を対象とし、併用療法についての制限はなし

<Study selection >
2人が独立して評価。不一致は、第三者のサポートを受けて合意を形成した。
185件→29件→18件
<risk of bias>
2人のレビューアーが、Jadad scaleを用いて評価。大きな問題はなさそう。
 <データの抽出>
2人が独立して行い、第三者がチェックした。ITTで抽出した。
<出版バイアス>
ファンネルプロットとEggerテストで検討
出版バイアスによる多少の偏りと小規模試験の影響があるかも

 <outcome>
・治療により2値評価で改善しなかった人の割合(10試験)
 プロバイオティクス製剤群 281/553 (50.8%)
 プラセボ または無治療群  252/365 (69.0%)
 RR = 0.71 (0.57 to 0.88, p=0.001, I2=68%)  NNT = 4 (3 to 12.5)
・各群の治療終了時の症状スコアの差
 全体(14試験1351人) SMD = - 0.34 (-0.60 to - 0.07, p<0.001, I2 =79%)
 外れている1試験を除いた感度分析 SMD = - 0.18 ( -0.29 to - 0.06, p=0.52, I2=0%)
 Lactobacillus(4試験200人) SMD = 0.03 (- 0.25 to 0.31, p=0.41, I2=0%)

******************************

プロバイオティクス製剤は過敏性腸症候群の症状改善に良い影響を与える傾向があるみたい。
異質性が高いのは、小さい試験が多いからしょうがない?母数が少ないから不正確かも?

1種類よりも複数菌種を取ったほうが良いのかはよく分からない。
副作用について差は認められなかった様子。


以前しらべた 整腸剤の違いについて を見ると
普段良く見るビオフェルミン、ラックビー、ミヤBMとかは、Lactobacillus属ではないし、
NNTが3~12で有用性が高そうな割には薬価も安いので、
とりあえず整腸剤をだして様子を見るというのは理に適っているのかな。


ヤクルトは、Lactobacillus casei YIT 9029 だから、
過敏性腸症候群にはあまり向かない?


そういえば整腸剤って1日1回服用じゃだめなのかな?
3回とか2回に分けた方が効果が期待できるの?

 
 
 

2014年9月2日火曜日

エゼチミブってどの程度効果が期待できるの?


エゼチミブ(ゼチーア)ってスタチンと併用されたり、単独で処方されたりとまま見かけるが、
スタチンと比較してどのような立ち位置なのかが、よく分からなかったので調べてみた。


エゼチミブ単独とプラセボを比較した試験はあまり見つけられなかった。
(あってもLDLの下がり具合を見るものがほとんど?)

エゼチミブ10mg単独 vs プラセボ のシステマティックレビュー
J Intern Med. 2009 May;265(5):568-80.  によるとRCT8件2722人で
LDL -18.58%  (95% CI: -19.67 to -17.48)
T-Chol -13.46%  (95% CI: -14.22 to -12.70)
だそうだ。

10%以上コレステロール値が下がるのは悪くないのかな?
単剤でよく処方されれている気がするけれど、それを強く肯定するほどの理由は少ない?



あとパッと調べて多いのが、スタチン+エゼチミブ vs スタチンの試験で、
シンバスタチン + エゼチミブの試験が多くみられる気がする。

ENHANSSEASARBITER6-HALTSSHARP
といった大規模試験が行われているみたいだけれど、
エゼチミブにとっては微妙な結果が続いているみたい。

中でも当時のインパクトが大きかった様子のENHANSという試験を読んでみた。

****************************
Simvastatin with or without ezetimibe in familial hypercholesterolemia.
N Engl J Med. 2008 Apr 3;358(14):1431-43.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18376000

P 30歳~75歳の家族性高脂血症患者
I  シンバスタチン40mg + エゼチミブ10mg
C シンバスタチン40mg + プラセボ
O 頚動脈の内膜中膜複合体(IMT)の変化量

シンバスタチン+プラセボ357人、シンバスタチン+エゼチミブ363人を24ヶ月治療したRCT

<割付>
プラセボによる6週間のrunin期間の後
コンピュータ生成のコードを用いて、臨床センターで層別化してランダム化割付
<Baseline>
だいたい一緒。頚動脈IMTもだいたい一緒。
エゼチミブ併用群の方がBMIと高血圧比率が高く、心筋梗塞既往は少ない。

<マスキング>
被験者〇、医療者〇?、判定者〇、解析者〇
<解析>
ITTではない
0.05mmの差を検出するのに、α=0.05 power=90%
脱落:シンバスタチン+プラセボ11.5%、シンバスタチン+エゼチミブ17.6%

<outcome>
頚動脈(総頚動脈、内頚動脈、頚動脈洞)のベースラインとの平均差(24ヶ月)
 シンバスタチン+プラセボ   0.0058 ± 0.0037 mm 
 シンバスタチン+エゼチミブ   0.0111 ± 0.0038 mm  (P=0.29)
LDLコレステロール(24ヶ月の試験終了時)
 シンバスタチン+プラセボ   192.7 ± 60.3 mg/dL
 シンバスタチン+エゼチミブ  141.3 ± 52.6 mg/dL 

****************************

アウトカムがいわゆる代用アウトカムで直接的に心血管障害の頻度を見たわけではないので、
エゼチミブの追加により本当に予防効果がないのかは分からない。
LDLの下げ幅は、シンバスタチン単独が約40%、エゼチミブ併用が約60%。
LDLが下がっただけでは動脈硬化予防にはならないの?

あと、日本よりシンバスタチンの用量が多い(日本での最大量は20mg)ので、
高用量の試験結果を低用量で使用している日本も同じように考えてよいのかも分からない。



IMPROVE-IT
http://clinicaltrials.gov/ct/show/NCT00202878
という試験が、シンバスタチン40mg + エゼチミブ10mg vs シンバスタチン40mg、
心血管イベントをアウトカムとして行われていて、2014年に終わるそうなので、
その結果が出てくると面白いのかもしれない。




第一選択のスタチンでコレステロールが下がらないような方の選択肢として使うのが主目的?
単剤の試験があまりないのは何で?


動脈硬化等の血管障害予防については有効性があるかどうかは分からないけど、
患者さんに単剤または併用でコレステロールが下がりますと言ってよいのは確かみたい。

2014年8月18日月曜日

バファリンとバイアスピリンはどう違うの?

血栓の2次予防などでよく処方を見かけるアスピリン製剤。


バイアスピリンとバファリンの2種類があるけれど、
ふと気になったので、どう違うのか?を調べてみた。


各インタビューフォームより。

バイアスピリン錠100mg
アスピリン 100mg
腸溶性のフィルムコート錠(Enteric Coated Aspirin)
→胃で溶けないようにすることで、胃への負担軽減
単回投与時 Cmax:455.3(μg/L), Tmax:4.0(hr), AUC:542.2(μg・hr/L), T1/2:0.44(hr)

バファリン配合錠A81
アスピリン 81mg
ダイアルミネート(ジヒドロキシアルミニウム アミノアセテート + 炭酸マグネシウム)33mg
2層性の素錠(Buffered Aspirin)
→ダイアルミネートにより胃のpHが4-6に上昇し、アスピリンの溶解を促進、胃での吸収促進
単回投与時 Cmax:1185(μg/L), Tmax:0.39(hr), AUC:999(μg・hr/L), T1/2:0.40(hr)



バファリン330のインタビューフォームに
胃でのアスピリン結晶析出により胃壁障害と書いてあったけど、そんなの起こるんだね。
腸での吸収とか胃での吸収ってのも知らなかった。

調剤では、バイアスピリンは裸錠でも比較的安定で
バファリンは湿度、温度で外観変化と含量低下が起こる点が異なる。
フィルムコートと添加剤、ダイアルミネートによる影響?
あと一包化するときにバファリンのラミネート包装はあけるのが面倒。

名前の由来は、
Bayer's Aspirin → Bayaspirin
Buffered Aspirin → Bufferin
だって。

アスピリンのバイオアベイラビリティは高く、COX-1阻害作用も非可逆なので、
微妙な用量の違いはあまり気にしなくても良いかな?
(単回投与時のAUCが異なるのはバイアスピリンの吸収が遅いから?なんで?)



で、気になる胃腸障害については、

Int J Clin Pharmacol Ther. 2014 Mar;52(3):181-91.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24472400

というのを見つけたけど、全文が見れないので探したら
同じ先生が書いている↓があった。

****************************
医療薬学 Vol. 39 (2013) No. 8 P 471-481
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/39/8/39_471/_article/-char/ja/

P 日本の保険診療を受けた人
I  腸溶性製剤を服用
C 制酸緩衝製剤を服用
O 消化管障害の頻度(傷病名の付与率)

害 後向きコホート

<期間>
2010年1月~12月
<データベース>
厚生労働省提供の
医科(入院外)と調剤のレセプトデータ

<結果>
全体  87,129,127人
腸溶性製剤を期間内に服用   3,935,743人
制酸緩衝製剤を期間内に服用 655,553人

PPIの併用率(年間平均)
 腸溶性製剤   24.0%
 制酸緩衝製剤 17.2%

傷病名付与率
・消化管障害全体
 腸溶性製剤   25.0%
 制酸緩衝製剤 23.2%
  ・胃潰瘍
   腸溶性製剤   23.0%
   制酸緩衝製剤 21.5%
  ・出血性胃潰瘍
   腸溶性製剤   0.31%
   制酸緩衝製剤 0.26%
  ・下部消化管出血
   腸溶性製剤   0.085%
   制酸緩衝製剤 0.062%

****************************

傷病名付与≠実際の有害事象の発生
なので、どっちが消化器障害を起こしやすいのか?を直接判断は出来ないかも。

全文が有料なので細かくは分からないが↓のようなのもあった。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8937281
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21501103
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22749649

多少、腸溶性製剤のほうが障害が多いかもしれない?
(それが日常で差が認識できるようなレベルかは分からないけれど)



そういえば、アスピリンとPPIの併用は上記でも併用率見ているし
なんか良くみるけど、問題ないのかな?
武田が合剤を何か出してたような。。

考えてみれば、よく見かける割に分からない事だらけ。

2014年7月29日火曜日

ドキサゾシンは何で高血圧に推奨されていないの?


ガイドラインでは第一選択は、ARBかACEIかCa阻害薬か利尿薬。

あまり推奨されていないドキサゾシン(カルデナリン)。
処方はたまに第2、第3選択でくるようなイメージが(個人的に)ある。

何でかな?と気になったので調べてみた。

最近は、血圧に対してはあまり臨床試験も行われていないようで、
ALLHAT試験というのが契機になっているらしい。


***************************

JAMA. 2002 Dec 18;288(23):2981-97.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12479763

P 55歳以上のCHD(冠動脈性心疾患)のリスク因子を持つ1度~2度の高血圧患者に対して
I  chlorthalidone(チアジド系利尿薬)を使用することは
C 他の薬(アムロジピン、リシノプリル、ドキサゾシン)と比較して
O 致死性CHDと非致死性の心筋梗塞は減るのか?

<割付>
電話により臨床センターでランダム化割付
コンピューターで生成したスキームを使用
42418人を5-9のブロックで層別化して割付
クロルタリドン:アムロジピン:リシノプリル:ドキサゾシン =  1.7:1:1:1
<Baseline>
だいたい同じ

<治療>
試験薬(見た目が同じCAP)で140-90未満を目指し、達成できない場合はDrの裁量で薬を追加
step2:アテノロール、レセルピン、クロニジン
step3:ヒドララジン
※臨床の必要性があれば少量のstep1の薬を使用する事は許可
<盲検化>
被験者:〇
医療者:〇
判定者:〇?
解析者:?
<解析>
α=0.0178, power=83%
ITTで解析

<primary outcome>
致死性CHDと非致死性の心筋梗塞
クロルタリドン 1362 / 15255  11.5%(6年間)
アムロジピン    798 / 9048   11.3%(6年間)  RR = 0.98 (0.90 - 1.07)
リシノプリル    796 / 9054   11.4%(6年間)  RR = 0.99 (0.91 - 1.08)
ドキサゾシン  早期中止

***************************

中止されたドキサゾシン群の途中解析
JAMA. 2000 Apr 19;283(15):1967-75.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10789664

<primary outcome>
致死性CHDと非致死性心筋梗塞
クロルタリドン 608 / 15268  6.30%(4年間)
ドキサゾシン   365 / 9067    6.26%(4年間)  RR = 1.03 (0.90 - 1.17)

<other outcome>
収縮期血圧 ドキサゾシン群の方がクロルタリドンに比べて期間中通じて2mmHg高い
全死亡 RR = 1.03 (0.90 - 1.15)
複合心血管疾患 RR = 1.25 (1.17 - 1.33)
  内、うっ血性心不全(CHF) RR = 2.04 (1.79 - 2.32)

***************************

クロルタリドンと比較して、
心血管関連死や心筋梗塞、全死亡等では有意差がつかなかったが、
複合心血管疾患や脳梗塞でリスク上昇が認められ、その後も差が開きそうだったから
中止になったみたい。

プラセボのないアクティブコントロールのみの試験なので、
ドキサゾシンで心血管疾患や脳梗塞が増えるのか減るのかは不明。


他に良い薬がたくさんあるんだから、まずは他の薬を使った方が・・・
というのが、高血圧に対するドキサゾシンの立ち位置?


寝る前にドキサゾシン追加するというJMS-1というオープンラベルのRCTで、
尿中アルブミン/クレアチニン比が改善するというのもある様子。
(全文は有料なので詳細不明。)
J Hypertens. 2008 Jun;26(6):1257-65.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18475166
↑は、血圧が下がること自体でアルブミン/クレアチニン比が改善する可能性もあるので、
プラセボ対照だし、ドキサゾシン独自のものかは私には分からない。
夜にCa阻害薬とかではダメなのかな? 探せばありそう。
 


あとはα阻害薬だから前立腺肥大のある人なんかにはよいのかな?

2014年7月22日火曜日

抗菌薬の下痢に整腸剤は効くのか?


下痢に整腸剤(プロバイオティクス製剤)は効果があるのか?の続き。

抗菌薬とセットで整腸剤が処方されてくることは多いので、
抗菌薬による下痢に対して整腸剤は効果があるのか?を調べてみた。


用語の定義が不安だったのでおさらい、

・プロバイオティクス probiotics
 腸内フローラを改善し人に良い影響を与える微生物
・プレバイオティクス prebiotics
 腸内細菌の栄養になったり、腸内環境を改善する物質(オリゴ糖、食物繊維など)
・シンバイオティクス synbiotics
 probiotics + prebiotics 

参考:健康用語の基礎知識(ヤクルト) http://institute.yakult.co.jp/japanese/dictionary/



******************************

Probiotics for the prevention and treatment of antibiotic-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis.
JAMA. 2012 May 9;307(18):1959-69.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22570464

P:抗菌薬を服用している人に対し
I:プロバイオティクス製剤を併用することは
C:プラセボや無治療と比較して
O:抗菌薬による下痢(AAD)の頻度を減少させるのか?

<検索>
DARE, Cochrane Library of Systematic Reviews, CENTRAL, PubMed, EMBASE,
CINAHL, AMED, MANTIS, TOXLINE, ToxFILE, NTIS, AGRICOLA
言語は特に規定しなかった。
clinicaltrials.govも検索し、International Journal of Probiotics and Prebiotics.を手検索した
<対象>
プロバイオティクスによるAADの治療や予防に関するRCT
菌種:Lactobacillus, Bifidobacterium, Saccharomyces, Streptococcus, EnterococcusBacillus

<Study selection >
2名が独立して行った。
不一致はレビューチームによるディスカッションで解決した。
15214件→2426件→82件
 <risk of bias>
コクランのrisk of biasツールを用いて行った。
試験の質は低。59試験で評価するための情報が不足していた。
 <データの抽出>
2名が独立して、規定の形式にのっとって行った。
不一致はディスカッションにより解決した。
<出版バイアス>
Eggerの回帰検定とBeggの順位検定で検討した。

<primary outcome>
下痢の発生数 68試験11811人
RR = 0.58 (0.50 to 0.68),  RD = -0.07 (-0.10 to -0.05),  NNT = 13 (10.3 to 19.1)
(異質性:I2 = 54%, 出版バイアス:Egger regression test P = .26; Begg rank test P = .34)
※risk of bias の低い2重盲検RCT 44試験だと RR = 0.61 (0.52 to 0.73, I2 = 50%) 
※資金提供等を明示し、利益相反のない12試験だと RR = 0.63 (0.42 to 0.92, I2 = 68%)


******************************
試験によるバラつきや各試験のサイズ、試験の質の問題はあるものの、
抗菌薬による下痢に対してよい効果を期待しても良いみたい。
隠蔽化されていなくて下痢かどうかの評価をするのが適当なのかは疑問だけど、
risk of biasは細かく書かれていないのでなんとも分からない。

文中にあったが、ピロリ菌の除菌率向上にプロバイオティクスを使用するのは一般的?
NNTが13で、整腸剤は安いから悪くないのかも知れない。

あと、AADの中のClostridium difficileによる下痢症にはコクランレビューがあった。
Cochrane Database Syst Rev. 2013 May 31;5:CD006095.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23728658


規模のおおきなRCTがあったので、読んでみる。

******************************

Lactobacilli and bifidobacteria in the prevention of antibiotic-associated diarrhoea and Clostridium difficile diarrhoea in older inpatients (PLACIDE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial.
Lancet. 2013 Oct 12;382(9900):1249-57.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23932219

P:65歳以上の入院患者で抗菌薬(経口、静注問わず)を使用している人に対し
I:ビフィズス菌、乳酸菌(Lactobacilli )製剤を使用することは
C:プラセボと比較して
O:下痢を減らすのか?

<使用製剤>
1Cap中に凍結乾燥した生菌6 × 1010 を含むCAP or プラセボ(マルトデキストリン)CAPを1日1回
Lactobacillus acidophilus (CUL60とCUL21)
Bifidobacterium bifidum (CUL20)
Bifidobacterium lactis (CUL34)

<割付>
1:1になるようにコンピューター生成のランダムシークエンスを用いて、
センターで層別化して、ブロックサイズが変わるブロック割付
割付順序は独立した統計学者により生成され、
データベースが完成してロックされるまでは使用できなかった。
<baseline>
だいたい同じ

<masking>
被験者:〇
医療者:〇
outcome判定者:〇
解析者:〇
<解析>
FAS(ランダム化後、介入を受けていない人を除外)
サンプルサイズ計算:α=0.05, power=80%
追跡率98.7%

<outcome>
8週間以内のAAD
微生物製剤群 159/1487 (10.7%)
プラセボ群 153/1487 (10.3%)
RR = 1.04 (0.84 to 1.28)


******************************
菌の量は、摂取する菌の量は十分だと思う。
ちなみに、ビオフェルミン錠だと1錠中1*106~1*109 くらい。

上記のシステマティックレビュー見ても
サンプルサイズがここまで大きいRCTは他にないのでインパクトは大きい?
高齢者だからとか、小児だからとか、対象によっても効果は変わるのかな?
上記のシステマティックレビューの有効性は少し割り引いて考えたほうがよいのかも知れない。 

あと、Streptococcus faecalisとかBacillus属、Clostridium属だと違う結果が出る可能性もある?
抗菌薬が処方されていたらビオフェルミンR、ラックビーR、ミヤBMとかにしてもらえるように
疑義照会をするのは正しい行動なのかもしれないと思った。

2014年7月12日土曜日

整腸剤(プロバイオティクス製剤)の違い


いわゆる整腸剤として使われるプロバイオティクス製剤の
それぞれに含まれる菌はどう異なるのか?が気になったので調べてみた。













google スプレッドシート → 整腸剤菌種一覧


色々違っていて面白い。

意識していなかったけれど、
よく処方が来るラックビーとビオフェルミンは、菌の種類が違ったのね。
ビオフェルミン錠とビオフェルミン散もまったく別物じゃない。


あと、ラクトミンは
「Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、またはLactobacillus bulgaricusの生菌菌体を集め、乾燥した後、殿粉、乳糖、白糖など適当な賦形剤またはそれらの混合物と混合したもの」
らしい → http://ja.wikipedia.org/wiki/ラクトミン
乾燥させてるってことは、生きてるの?死んでるの?
死んでるなら何で効くのかがよく分からないなぁ。


Bacillus属とClostridium属は芽胞形成するから抗菌薬にも強いでしょうか。
そういえば同僚が近所のDrに働きかけて、
ニューキノロンの場合はビオフェルミンRではなくて、ミヤBMになったことがあったな。


経口で取った菌はどのくらいがそのまま腸内に常在菌として定着するの?
生きていても、死んでいても効果は変わらない?
学生のころもう少しまじめに勉強しておけば良かったかな。。


いまいちよく分からないことが多いけれど、
抗菌薬に起因する下痢に対する文献もあったからまた読んでみようと思う。

2014年7月11日金曜日

下痢に整腸剤


下痢の患者さんに、整腸剤。

良く見かける処方だけど、
効果があるのかな?と疑問に思ったので調べてみた。



大人の下痢に対するプロバイオティクス(菌製剤)のコクランレビュー。

********************************
Probiotics for treating acute infectious diarrhoea
Cochrane Database Syst Rev. 2010 Nov 10;(11):CD003048.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21069673

P:感染性の急性下痢の人に対し
I:プロバイオティクス(菌製剤)は、
C:プラセボもしくは、無治療とくらべて
O:下痢を改善させるのか?

<検索>
CIDG SR、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE
未発表データ等のためにプロバイオティクスの製薬会社へもコンタクトをとった
<対象>
感染性の急性下痢に対するRCT
抗菌薬による下痢、慢性の下痢は除外

<Study selection >
SAとLDの2名が独立して行い、相違点はディスカッションにより合意を形成した。
不明な点は著者に対して連絡をとった。試験の重複もチェックした。
<risk of bias>
EMとCGの2名が、文献の情報を知らされずに独立して評価した。
不一致は、LDが解決した。
<データの抽出>
SA, BO, SP, SAの4名が独立して行った。
ITT
<出版バイアス>
ファンネルプロットで検討。大きな偏りなし。

<outcome>
下痢の継続期間 35試験4555人
MD -24.76 時間(95%CI 15.9 to 33.6, I2=97%, p<0.00001)
4日以上続く下痢 29試験2853人
RR 0.41 (95%CI 0.32 to 0.53, I2=71%, p<0.00001
介入2日後の排便回数 20試験2751人
MD -0.80 (95%CI 0.45 to 1.14, I2=75%, p<0.00001

********************************
他にもいろいろサブグループ解析していたが省略。
整腸剤は下痢を改善する方向に働くようではあるみたい。
一つ一つの試験の大きさが小さかったり、異質性が高いのはしょうがないのかな。
感度分析でも異質性はあまり変わらない様子。



小児対象のも何件か見つけられたので見てみた。

********************************
Aliment Pharmacol Ther. 2011 Nov;34(9):1079-87.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21899584

P:小児の入院患者に対し
I:LGG( Lactobacillus rhamnosus GG)は、
C:プラセボや無治療と比較して
O:医療関連下痢(HAD:healthcare-associated diarrhoea)を改善させるのか?

<検索>
 MEDLINE, EMBASE, Health Source, Cochrane Library
<対象>
医療関連下痢へのLGGとプラセボ(もしくは無治療)を比較したRCT

<Study selection >
2名が独立して行った。
1681→8→3
<risk of bias>
複数名が独立して評価した
ジャーナル、著者名等は隠蔽化されなかった。
<データの抽出>
複数名が独立して行った。
<出版バイアス>
ファンネルプロットで検討。

<outcome>
下痢(HAD)の発生 2試験823人
RR 0.37 (95%CI 0.23–0.59, P = 0.26, I2 = 21%)、 NNT 12 (95%CI 8 - 21)




Meta-analysis: Lactobacillus GG for treating acute diarrhoea in children.
Aliment Pharmacol Ther. 2007 Apr 15;25(8):871-81.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17402990


P:小児の急性下痢に対し
I:LGG( Lactobacillus rhamnosus GG)は、
C:プラセボや無治療と比較して
O:下痢を改善させるのか?

<検索>
 MEDLINE, EMBASE, CINAHL, Cochrane Library
<対象>
小児の急性下痢へのLGGとプラセボ(もしくは無治療)を比較したRCT

<Study selection >
各著者が独立して行い、不一致は合意を形成した
<risk of bias>
複数名が独立して評価した
ジャーナル、著者名等は隠蔽化されなかった。
<データの抽出>
HSが行った。
<出版バイアス>
ファンネルプロットで検討。

<outcome>
下痢の期間 7試験876人
MD −1.1 日 (95%CI −1.9 to −0.3,  P = 0.26, I2 = 97.4%)

↓アップデート

Aliment Pharmacol Ther. 2013 Sep;38(5):467-76.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23841880
(全文は有料なので詳細不明)

<outcome>
下痢の期間 11試験2444人
 MD -1.05 日 (95%CI -1.7 to -0.4)




J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2001 Oct;33 Suppl 2:S17-25.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11698781

P:急性下痢(抗菌薬によるものを除く)の小児に対し
I:プロバイオティクス(菌製剤)を服用させると
C:プラセボと比べて
O:下痢が改善するのか?

<検索>
MEDLINE,Cochrane Library
教科書や製薬会社の資料を手検索した。英語以外の文献も検索。
<対象>
小児の急性下痢に対するプラセボ対照のRCT
抗菌薬による下痢は除外

<Study selection>
2名が独立して行い、不一致は合意を形成した。
<データ抽出>
1名で抽出を行い、別の人がチェックした
<risk of bias>
jadadスケールを用いて2名が独立して評価、不一致は合意を形成した。
各研究は3~5の範囲で、2者の評価の差はkappaスコア0.78
<出版バイアス>
検討していない

<outcome>
3日以上の下痢の持続(8試験731人)
RR 0.43 (95%CI 0.34–0.53,  P=0.12)

下痢の期間(8試験773人)
MD −18.2 時間 (95%CI −26.9 to −9.5, P=0.15)  

********************************

異質性が高いとか、サンプルサイズが小さいとかは同じだが、
全体的に下痢に良い効果があるような感じ。

もし下痢が収まるのが半日~2日早まるのなら、
安いし大きな副作用もないし、良いのではないか?と思う。
抗菌薬がたくさん出るよりは、怖くないかな。


一口にプロバイオティクスといっても色々な菌がいるようで、それぞれ効果はちがうのかな?

そもそも日常的に調剤している、
ビオフェルミンにしろミヤBMにしろ中の菌がどう違うか?を詳しく説明できるまでは知らないので、
これを機会にすこし勉強してみようかと思った。乳酸菌やら酪酸菌くらいなら分かるけど。

2014年7月3日木曜日

前立腺肥大にタダラフィル?その3


前立腺肥大に対するタダラフィルを調べていて、
Int J Urol. 2013 Feb;20(2):193-201. で2.5mg/日と5mg/日の効果が、
そこまで大きく違わなかったような感じだったので、もう少し調べてみる。


http://clinicaltrials.gov/ct2/home
で検索したら、2.5mgでBPHへの効果を検討している試験は、
pubmedで探して見つけられた分は、Eli Lilly による臨床試験だった。




ちゃんとMethodの部分だけじゃなく、
お尻の方も読んでどこの人が試験しているか、スポンサーはどこかも
読まなくてはいけないんだなぁと思った。

その2 のシステマティックレビューは一部試験が重複して統合されている?


ついでに気になったので、
この間教わったRevMan5.0の操作練習もかねて、結果をあわせてみた。
http://tech.cochrane.org/Revman







5mgの方が2.5mgより効果があるみたいだけど、差が大きいのかは私には判断がつかない。
常用量が5mgなのは、2.5mgだと改善が悪いということなのかな?
(5mg vs placebo は同じ試験の結果で、-1.82 [-2.42, -1.23] (P = 0.36, I² = 7%) だった)

インタビューフォームには2.5mgの血中濃度の比較は載っていなかったので、
どのくらい体内の動態がちがうのかは分からない。


EDに対しても、PDE5阻害薬の低用量連日服用の試験が行われて、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24119319
IEEF-EFスコアの改善がみられるようだから、
自費で買って連日飲むような人も出てくるのかな?


薬が効くとか効かないとかは、数字だけ見ても、考えても良く分からないな。。
そもそも論だと、うちの薬局に泌尿器の処方はほとんど来ないんだけど・・・

2014年6月30日月曜日

前立腺肥大にタダラフィル?その2


前立腺肥大にタダラフィルはどの程度効果があるのか?の続き。


Efficacy and safety of tadalafil monotherapy for lower urinary tract symptoms secondary to benign prostatic hyperplasia: a meta-analysis.
Urol Int. 2013;91(1):10-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23816815

P:前立腺肥大症の人に対して
I:タダラフィルで治療することは
C:プラセボと比較して
O:IPSS、IIEF、Qmaxを改善させるのか?

治療 システマティックレビュー

<検索>
期間は、~2012.8
MEDLINE、PubMed、EMBASE、 Cochrane Library database、Web of Science.
補完的に欧州泌尿器科学会、アメリカ泌尿器科学会のwebを検索
<対象>
タダラフィルvsプラセボの2重盲検のRCT

<レビュー>
2名が独立して行い、相違は第三者と合意を形成した。
209件→30件→9件
<データ抽出>
2名が独立して行い、第三者がチェックした
必要なデータが文献中になかった場合は、著者に問合せた

<risk of bias>

<出版バイアス>
ファンネルプロットで検討(表とか、偏りの記載はない)

<outcome>
IPSSスコア 9試験4734人?
平均差 -2.19 (-2.58 to -1.81) p=0.63, I2=0%
IIEFスコア 5試験3702人?
平均差 +4.66 (4.02 to 5.31) p=0.54, I2=0%
Qmax(mL/秒) 6試験2818人?
平均差 +0.34 (-0.03 to 0.71) p=0.77, I2=0%



A systematic review and meta-analysis on the use of phosphodiesterase 5 inhibitors alone or in combination with α-blockers for lower urinary tract symptoms due to benign prostatic hyperplasia.
Eur Urol. 2012 May;61(5):994-1003.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22405510

※全文は有料なので、細かいところは不明

P:前立腺肥大症の人に対して
I:PDE-5阻害薬を使用すること(単独 または、α1阻害薬と併用)は、
C:プラセボやα1阻害薬単独と比べて
O:IPSS、IIEF、Qmaxを改善させるのか?

<検索>
 Medline, Embase,  Cochrane Library databases
<対象>
プラセボ vs PDE-5阻害薬単独 もしくは α1阻害薬単独 vs α1阻害薬 + PDE-5阻害薬 のRCT

<レビュー>
107件→12件

<outcome> 平均差?
プラセボ vs PDE-5阻害薬単独 7試験3214人
IIEFスコア +5.5 (p<0.0001)
IPSSスコア -2.8 ( p<0.0001)
Qmax    -0.00 (有意差なし)

α1阻害薬単独 vs α1阻害薬 + PDE-5阻害薬 5試験216人
IIEFスコア +3.6 (p<0.0001)
IPSSスコア -1.8 (p = 0.05)
Qmax    +1.5 (p<0.0001)


**********************************

IIEFスコアは、EDの評価指標で、1問5点で15問75点満点。
IIEF5は、簡易版で5問25点満点。
http://www.jssm.info/guideline.html


シアリスの10mgとか20mgより量が少ないとはいえ、やっぱりEDに効果があるんだね。
IPSSスコアをプラセボより2程度改善させる効果っていうのは、
強いのか、弱いのかちょっと勉強不足で分からない。


あと上の論文は、
20mgとか10mgとかの多い用量も解析に含まれているから、
結果が良いほうに引っ張られているのはあるかもしれない。
出版バイアスはなしでよいのかな?


ハルナールD0.2mgが134.1円(後発品だと60~70円)
ユリーフ4mgが81.3円で1日だと162.6円

ザルティア5mgが230.6円、2.5mgが118.3円
高いのか安いのかもいまいちよく分からない。
シアリスって1500~2000円くらい?アドシルカ20mgは1770円。
自費で買うよりは、保険使えたら圧倒的に安いのは確かだけど。


筋肉痛とか胃腸障害とか頭痛が主な副作用なのは、添付文書と同じ。


2.5mgと5mgでどの程度効果が違うのかは、もう少し調べてみようかな。

2014年6月27日金曜日

前立腺肥大にタダラフィル?その1

先日会社の勉強会があり、テーマが前立腺肥大症だった。

そんななかで2014年4月に、
ザルティア錠(タダラフィル:シアリス、アドシルカと同成分)が発売になったという話があり、
どの程度効くのかイメージがわかなかったので勉強。


Tadalafil once daily for lower urinary tract symptoms suggestive of benign prostatic hyperplasia: a randomized placebo- and tamsulosin-controlled 12-week study in Asian men.
Int J Urol. 2013 Feb;20(2):193-201.

P:45歳以上で6ヶ月以上前立腺肥大による中等度以上の下部尿路閉塞症状のある人に
I:タダラフィルで治療することは、
C:プラセボとタムスロシンで治療する場合と比較して、
O:IPSS(国際前立腺スコア)は改善するか?

治療 ランダム化比較試験(日本、韓国、台湾)

<割付>
2週間のプラセボによるwashout期間の後、
タダラフィル2.5mg:タダラフィル5mg:プラセボ:タムスロシン0.2mgに1:1:1:1で割付。
コンピューター生成の乱数表で、自動音声応答。
層別化:LUTSの重症度(IPSS<20かIPSS≧20)、国、α1阻害薬を12ヶ月以内に使用(あり、なし)
<baseline>
タダラフィル5mg群で65歳以上の割合がちょっと低いが、他はだいたい同じ

<masking>
患者:されている
治療者:されている
outcome評価者:IPSSは患者自身が付けるので、されている?
解析者:?
<解析>
ITTとPPS(治療完了した人)で解析
サンプルサイズ計算あり:137例 α=0.05 power=90

<primary outcome>
ベースラインと12週服用後のIPSSスコアの合計の差
プラセボ      -3.0 ± 0.4 (145/154 追跡率94.2%)
tadalafil 2.5mg   -4.8 ± 0.4 (136/151 追跡率90.1%) p=0.003
tadalafil 5.0mg   -4.7 ± 0.4 (137/155 追跡率88.4%) p=0.004
tamsulosin 0.2mg -5.5 ± 0.4 (143/152 追跡率94.1%)

<他のoutocome>
IPSSスコア(PPS)、BIIスコア(前立腺肥大症影響スコア)、最大尿流率
PGI-IとCGI-Iスコア、副作用、PSA、残尿量について検討している

*****************************

IPSSスコア(国際前立腺症状スコア)
7項目に0-5点をつけて、35点満点
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0014/G0000033/0005
軽度:0~7、中等度:8~19、重度:20以上 が目安
BIIスコア
不快度や生活制限などの4項目について回答
http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0014/G0000310/0022


この試験だと他のアウトカムを見ても2.5mgと5mgでそこまで大きな違いが見られないから、
添付文書上だと5mgが通常量だけど、2.5mgでもよいのかな?
用量依存的に効果は変わるのかな?

そもそもタムスロシンの数値の改善具合と比較すると
どの項目もあまり変わらないかタムスロシンの方が良いようなので第一選択にはならなさそう?
α1阻害薬が合わないときや併用して使うのかしら?

あと、なんとなくなんだけどED治療薬と同じ成分が、
それに困ってそうな人を含む患者群に保険で処方されてくることにすこし抵抗を感じるなぁ。

システマティックレビューが2件あったので、あとで読んでみようと思う。

2014年6月25日水曜日

HbA1cの下げすぎも良くない?


高血圧の勉強会のときにACCORD BPという試験をみて、
有名なACCORD試験というのをまだ読んだことがなかったので、チラ見。

HbA1cを基準にして、予後を比較する試験だったのね。


Effects of intensive glucose lowering in type 2 diabetes.
N Engl J Med 2008; 358: 2545-2559.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18539917

P:2型糖尿病患者で心血管リスクの高い人に対して
I:強化療法(目標HbA1c<6.0%)は、
C:標準療法(7.0%<目標HbA1c<7.9%)と比較して
O:心筋梗塞、脳卒中、心血管死を減少させるのか?

治療 ランダム化比較試験


<治療に使えた薬剤の系統>
市販されているもので特に制限なし。
・ビグアナイド系
・血糖降下薬(SU剤、速攻型インスリン分泌促進薬)
・チアゾリジン系
・α-グルコシダーゼ阻害薬
・インスリン

<割付>
強化療法と標準療法にセンターでランダム割付
LipdとBPにも同時に層別化して割付
<baseline>
ほぼ同じ

<masking>
オープンラベル(PROBE法)
outcome評価者:されている
解析者:?
<解析>
ITT
α=0.05, power=89%

<primary outcome>
非致死性の心筋梗塞、非致死性脳卒中、心血管死の複合アウトカム
標準療法 371人/5123人(7.2%) 2.29%/年
強化療法 352人/5128人(6.9%) 2.11%/年
HR 0.90 (0.78 - 1.04)

※強化療法群の死亡率上昇により早期中止を勧告され、予定より早く中止

<他のoutcome>
死亡
標準療法 203人/5123人(4.0%) 1.14%/年
強化療法 257人/5128人(5.0%) 1.41%/年
HR 1.22 (1.01 - 1.46)

10kg以上の体重増加
標準療法 713人/5042人(14.1%) 
強化療法 1399人/5036人(27.8%) 

HMA:Hypoglycaemic event requiring Medical Assistance(医療支援の必要な低血糖)
標準療法 179人/5123人(3.5%)
強化療法 538人/5128人(10.5%)

HA:Hypoglycaemic event requiring Any assistance(何らかの支援を必要とした低血糖)
標準療法 261人/5123人(5.1%)
強化療法 830人/5128人(16.2%)



(低血糖との関連を見たサブ解析。)

The association between symptomatic, severe hypoglycaemia and mortality in type 2 diabetes: retrospective epidemiological analysis of the ACCORD study.
BMJ. 2010 Jan 8;340:b4909.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20061358

死亡率
標準療法 HMAなし1.0%/年 HMAあり4.9%/年 調整HR 2.87 (1.73 - 4.76)
強化療法 HMAなし1.3%/年 HMAあり2.8%/年 調整HR 1.28 (0.88 - 1.85)

標準療法 HAなし1.0%/年 HAあり3.7%/年 調整HR 2.30 (1.46 - 3.65)
強化療法 HAなし1.2%/年 HAあり2.8%/年 調整HR 1.41 (1.03 - 1.93)

******************************

最近のDPP-4阻害薬とかGLP1誘導体とかは、使用薬剤に入ってはいない。
新しい薬が発売されて治療方法が変わると結果も変わってくるのかな?

下の方は、重篤な低血糖が多いほど死亡率が上昇傾向というのはわかるんだけど、
あとは難しくて私にはよく分かりません。。
何で低血糖イベントがあった方では標準療法の方が死亡率が高いの?
母数が少ないから誤差かな?なにか理由があるの?

ADVANCEというのも有名なようだから読んでみようと思う。


あと下記を見ると、
死亡率の増加は、低血糖に起因する心血管リスクの増加とか夜間低血糖などが
原因として最近では考えられてるみたい。。
http://www.diabetes.org/newsroom/press-releases/2014/the-link-between-hypoglycemia.html
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24895268


恥ずかしいけれど、
インスリンを打っている人に夜間の血糖値についていままで指導したことはなかったな。
低血糖が死亡率に関係するなら普段の低血糖についてのモニタリングとか指導を
(可能ならDrへのフィードバックも)薬局で一生懸命やる意義があるかな。


日本糖尿病学会のガイドラインだと
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
糖尿病診断の基準のひとつが、HbA1cが6.5以上。
治療目標が8.0、7.0、6.0の3段階で、合併症予防のためには7.0以下が推奨。

下げることのリスクも考慮するとどうするのが良くて、
Drの意図を損ねないようにどう対応するかは良く考えないといけないと思う。



体重増える→血糖値上がる→薬物療法で血糖値下げる→体重増える
のスパイラルから上手く抜け出すのは、ダイエット(食事運動療法)がんばるしかない?
こないだ出た、SGLT-2阻害薬は体重が増えるコントロール不良例なんかには良いのかも。

2014年6月20日金曜日

便秘に食物繊維は効果があるのか?

この間読んだのに
便秘に対する食物繊維が出てきたので、他にもないか調べてみた。

世間の常識の便秘に食物繊維はどの程度効果があるのかな?



Effect of dietary fiber on constipation: a meta analysis.
World J Gastroenterol. 2012 Dec 28;18(48):7378-83.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23326148

P:便秘の患者に対し
I:食物繊維を多くとることは
C:プラセボ(少ない場合?)と比べて
O:便秘症状は改善させるのか?


RCTのシステマティックレビュー

<検索>
MEDLINE (1946~2011.10)、Cochrane Library (2011)、Pubmed
重要な試験の参考文献は手検索を行った


<対象>
便秘に対して食物繊維摂取時の
有効性(排便回数、便の硬さ、治療成功、下剤の使用、消化器症状)を検討しているRCT
食物繊維:ファイバー、セルロース、植物抽出物、穀物、ブラン、オオバコ、シャゼンソウ


<レビュー>
2名で独立して行い、不一致は第3者とディスカッションを行い解決
1322件→19件→5件


<outcome>
・1週間の排便回数 5試験 250名
 MD = 1.19 (0.58 - 1.80, P = 0.77, I2 = 0)
・便の硬さ 3試験 154名
 MD = 0.43 (-0.24 - 1.11, P < 0.1, I2 > 75%)
・治療成功 2試験 134名
 OR = 2.21 (0.35 - 12.69, P < 0.1, I2 > 50%)
・下剤の使用 2試験 134名
 OR = 1.07 (0.51 - 2.25, P = 0.84, I2 = 0%)
・痛みのある排便 2試験 79名
 OR = 0.54 (0.15 - 1.91, P = 0.19, I2 = 42%)


***************************
優位差がついているのは排便回数のみ。
便秘症状の改善する傾向にはあるのかな?
対象とされた試験は、子どもの試験が4つに大人が1つ。
異質性は低いのもある
けど、どの試験もサンプルサイズが小さめ。
あとフォレストプロットの記載がなんだか変。

***************************


The treatment of chronic constipation in adults. A systematic review.
J Gen Intern Med. 1997 Jan;12(1):15-24.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9034942

P:慢性便秘を持つ成人に対して
I:下剤や繊維療法を1週間以上行うことは、
C:プラセボと比較して
O:便秘は改善するのか?

RCTのシステマティックレビュー

<検索>
MEDLINE (1966 –1995)、Biological Abstracts (1990 –1995)、Micromedex searches
他、図書目録、教科書、製造業者、専門家へ調査した

<対象>
成人に対し下剤や繊維療法を1週間以上行って経過を見ているRCT

<レビュー>
2名で独立して行い、不一致は合意を形成した
733→113→36件(20試験:プラセボ対象、16試験:他の薬が対象)


<outcome>
・1週間の排便回数 13試験(単剤 vs control)
 治療群:5.0回 対象群:3.5回
 加重平均差 1.4 (1.1 - 1.8)
・食物繊維と膨張性下剤
 腹痛と便の硬さを改善。

***************************
昔の文献だからか、結果が読みづらくてよく分からなかった。
あと、食事も下剤も一くくりにしている。


食事指導で便通の回数が改善するなら、
薬を飲むのと併用もしくは、先行して、試してみるのも悪くないかもしれない。
他の疾患の食事療法でも同じで、なかなか食生活の改善は難しいけど、
野菜ジュースでトクホがついているのも発売になっているしできることはあるのかな。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があって、
便秘時に不溶性食物繊維の取りすぎは良くないとも言うけどどうなんだろうか?


あと腹筋とかの筋肉量増加もよいとも言うけど、
なかなか薬局の日常では指導しにくい。


緩下薬は、合う合わないだったり、好みが大きい気もする。

センナ系の下剤を連用すると色素沈着が起こる
大腸メラノーシスってどうなのかしら?反応性低下とかは聞くけれど。
いろいろ分からない事だらけ・・・