2015年3月17日火曜日

葉酸が脳卒中を予防するらしい?


twitterのタイムラインでなんだか面白そうなのが流れていたのでチラっと読んでみた。

葉酸補充による脳卒中の1次予防だって。


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P 40-75歳の心筋梗塞や脳卒中の既往のない高血圧症の男女
I  エナラプリル10mg+葉酸0.8mg
C エナラプリル10mg単独
O 初発脳卒中

中国江蘇省と安徽省で20702人を約5年追跡したRCT

<割付>
MTHFR C677T の遺伝子多型(CC, CT, TT)で層別化して
4例づつのブロック割付。治験薬管理センターに電話して割付。
<盲検化>
患者:〇、治療者:〇、評価者:〇、解析:?
<その他>
ITTで解析 COX比例ハザードモデルでハザード比を推定
サンプルサイズ:20337
 →脳卒中の発生率0.7%/年として、HR=0.8を検出するのにα=0.05,power=80%で計算
脱落率・・・葉酸群:16.7%、単独群:16.9%

<outcome>
初発脳卒中
  エナラプリル+葉酸  282/10348  2.7%
  エナラプリル単独    355/10354  3.4%
  HR:0.79 (0.68-0.93), NNT(4.5年):141
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エナラプリル単独と比較して、葉酸を補充したほうが、
脳卒中が減少する傾向だそう。2次アウトカムの総死亡率はだいたい同程度だったみたい。
2万人のRCTってすごね。。

文中のMTHFRは、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の略だそうで、
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸 → 5-メチルテトラヒドロ葉酸
の反応を非可逆的に進める酵素だそう。
(図が分かりやすかった → http://epi.ncc.go.jp/mstudy/491/876.html
反応的にはビタミンB群を一緒にとったほうが良いのかも。

上記文献のSupplementary2で
MTHFRのCC(野生型)、CT(ヘテロ変異)、TT(ホモ変異)の遺伝子多型と
ベースラインの血中葉酸濃度で比較してみている表が面白い。
CC:葉酸足りていない人は取ったほうがよいかも?
CT:葉酸がよっぽど足りていない人は取ったほうが良いかも?
TT:全体的に補充したほうが良いけど、足りていそうな人の方が補充した場合の利益が大きい?

TTの表だけ腑に落ちないんだけど。。なんでそうなるのかね?


エナラプリルに追加の場合のNNTは114人(4.5年)だけど、
テレビでやっていたという食生活改善による活動だったらお金も余りかからないしよいのかなぁ。
脳卒中起こすと治療費も大きいから予防できたら、金銭的にもペイするのかも。
他の降圧薬への上乗せだったり、高血圧以外でも予防効果があるのかは不明。

そのうち検診で葉酸値を計ったりするようになったりして。笑




2015年3月15日日曜日

長時間作用型のベンゾジアゼピンの方が転倒が多いの?

 
 
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の半減期の違いを先日調べたが、
半減期の長短で転倒リスクが異なるか?が気になったので調べてみた。
 
高齢者には、ふらつき、転倒の原因になるので、
長時間作用型は避けた方が良いというのは本当?
 
 
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Arch Intern Med. 2004 Jul 26;164(14):1567-72.
 
P ニュージャージー州のメディケイドに登録していた65歳以上の人
I  長半減期(T1/2≧20hr)と短半減期(高力価、低力価)のベンゾジアゼピン
C BZDを使用しない人
O 股関節骨折
 
<コホート>
アメリカのニュージャージー州のメディケイドに
6ヶ月以上続けて登録していた65歳以上の125,203人
<期間>
1987.1~1990.6
<交絡因子>
年齢、性別、人種、疾患、併用薬、介護施設入所の有無、骨折既往の有無
<outcome>
・股関節骨折
BZD非使用          11.29(件/1000人年)
長半減期BZD        12.62(件/1000人年) 調整RR 1.13 (0.82 - 1.55)
短半減期BZD(高力価)  17.82(件/1000人年) 調整RR 1.27 (1.01 - 1.59)
短半減期BZD(低力価)  22.63(件/1000人年) 調整RR 1.22 (0.89 - 1.67)
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長半減期の方が、日中も体内に残るからふらつきがでやすい
転倒による骨折も多い、と思っていたけれど、
単純な半減期の違いによってそこまでの違いはないみたい。
 
 
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J Am Geriatr Soc. 2005 Feb;53(2):233-41.

P ケベック州の65歳以上で1年間ベンゾジアゼピンの使用歴のない
I  ベンゾジアゼピンを新規に使用
C ベンゾジアゼピンを非使用
O 非脊柱骨折、軟部組織損傷、転倒関連の入院、その他入院
 
<コホート>
カナダのケベック州の公的保険のデータベースから
1989年1月時点でベンゾジアゼピンを使用していない人からランダムに抽出
1989年の間にベンゾジアゼピンを使用、死亡、施設へ入所した人を除外
253,244人をフォローアップ
<期間>
1990.1.1~1994.12.31
<交絡因子>
年齢、性別、怪我の既往
転倒リスクのある既往症、転倒リスクのある薬剤、骨折リスクのある薬剤
<outcome>
障害発生件数(骨折、軟部組織損傷、入院の合計)※結果の一部
BZD非使用     43,043件 / 930,939人年  46.2件/1000人年
アルプラゾラム      72件 / 1,377人年    52.3件/1000人年  HR 1.13 (0.90–1.43)
ロラゼパム        830件 / 13,699人年   60.6件/1000人年  HR 1.31 (1.22–1.40)
フルラゼパム      113件 / 1,303人年     86.7件/1000人年  HR  1.88 (1.56–2.26)
ジアゼパム        57件 / 1,222人年     46.6件/1000人年  HR 1.01 (0.78–1.31)
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こちらの試験は、
ランダムに抽出後の除外率が高いこと、アウトカムに入院も含まれているのが気になるけれど、
半減期よりは個々の薬剤の違いによって転倒リスクが異なるという結果みたい。
上記試験では、4種類のモデルで使用暦、使用量等も考慮して分析しているけれど、
あまり理解できないので省略。。(英語勉強しよ・・・)


どのベンゾジアゼピンが転倒リスクが高いとかは今後の試験待ち?
単純に半減期の長、短で転倒リスクが予測できないのなら、
普段の仕事ではどうしたらよいのかな?


ベンゾジアゼピンが高齢者に対して処方されていたら
一律にふらつき等の注意喚起をしても良いのかもしれないと思った。

2015年3月8日日曜日

血管年齢?に対するサプリメントってどうなの?

知り合いのおじさまから
血管年齢が高いと言われたんだけれど、なんか良いサプリはないか?
既に血圧の薬は飲んでいるんだけど、心配だから何か飲もうと思っている。
と問い合わせが来たので調べてみた。


そもそも血管年齢が何かを指すのかを知らなかったのでお勉強。

〇血管年齢って?
  CAVIを測定し、動脈硬化既往なしの健常者群の平均値と比較した場合の年齢
  血管年齢75歳=CAVIの測定値が、健常者群の75歳の平均値と同程度
  参考↓
  http://www.fukuda.co.jp/medical/support/arteriosclerosis/vascular_age.html

〇CAVIって?
  動脈の弾力性の指標で、血圧変化に伴う血管径の変化量を数値化したもの
  <8 で正常、9≦ で動脈硬化の疑いあり。8~9は境界域。
  加齢,内臓肥満,喫煙,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病,腎透析,脂質異常症,
  メタボリック症候群,冠動脈疾患,脳血管障害,睡眠時無呼吸症候群などが上昇因子
  参考↓
  http://www.fukuda.co.jp/medical/support/arteriosclerosis/cavi.html
  http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_yamashina_d.pdf


血管年齢を改善→CAVIが下がる→動脈硬化が改善されているはず
という考え方でよいのかな?

血圧の薬はきっちり飲んでもらうことを前提にすると
病院で行う治療的な物を除くと
生活習慣の改善、食事の見直し、運動、減酒、禁煙が大切?



生活改善が重要でサプリメントは要らないよと答えるのも一手だとは思うが、
服用してみたいというご希望があるので、調べてみる。

なんかネットで検索するとたくさん引っかかってきてよく分からないなぁ。
EPA/DHA、ナットウキナーゼ、ラクトポリペプチド、葉酸、ルチン、イチョウ葉エキス、シトルリン・・・

主要な物を軽く調べてみた。


〇EPA/DHA
  有名なω3系の不飽和脂肪酸。医療用でもエ〇デールとか、ロ〇リガとかがある。
  JAMA. 2012 Sep 12;308(10):1024-33.
  
  システマティックレビューで、死亡と心血管イベントが減らないとされているので、
  血管年齢改善用サプリとしては微妙な気がする。

〇ナットウキナーゼ
  納豆に含まれる酵素で、血栓予防、血圧低下等が期待できるとのこと。
  日本ナットウキナーゼ協会より → http://j-nattokinase.org/nattokinase/
  Hypertens Res. 2008 Aug;31(8):1583-8.
  →プラセボ対照のRCTで盲検化もされていて、プラセボより血圧が低下したという結果

〇ラクトポリペプチド
  lactobacillus helveticusの産生するトリペプチド
  Val-Pro-Pro と Ile-Pro-Pro の総称で、血圧効果作用、血管機能改善等が期待できるそう
  カルピスが開発、商品化してる → http://www.calpis.co.jp/ameals/feature/about_ltp/
  Nutrients. 2015 Jan 20;7(1):659-81
  Am J Hypertens. 2013 Mar;26(3):442-9. 
  →RCTを対象にしたシステマティックレビュー(対象が限定なしと欧州)が2件あり、
   バラつきが大きかったり異質性が高かったりするけれど、血圧降下作用は多少期待できる?

〇葉酸
  核酸やアミノ酸合成の際に補酵素として働くビタミン
  ホモシステイン→メチオニンの反応を触媒して、
  ホモシステインを減らすことで動脈硬化予防になるとテレビでやったらしい
  http://www.tv-tokyo.co.jp/shujii/backnumber/140818/
  代謝反応をみるとビタミンB12を一緒に取ると効果的?
  Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jul 19;7:CD003285. 
  →コクランレビューによると臨床上のエンドポイントに関する結果はないが
   1件のRCTでABIの改善が認められたそう。

〇ルチン
  柑橘フラボノイド配糖体。ソバに含まれているので有名?
  昔から血行改善、血栓予防等が期待されるそう。
  Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;4:CD005626.
  Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;4:CD005625. 
  →コクランレビューでは、血栓予防、血栓治療に今のところ有効な試験はないみたい

〇イチョウ葉エキス
  イチョウ葉由来のギンコライド類の血小板活性因子阻害による血栓予防が期待できるそう。
  認知症や偏頭痛に対して試験は行われているみたい。
  動脈硬化に対しては不明。



自分が調べた感じだと上記のような結果だった。
月2000円~3000円かかるような場合が多いのかな?(個人的な感覚だと高い・・・)


とりあえず相談を頂いたおじさまには葉酸でも勧めてみようかな。
お酒飲む人だし、水溶性ビタミンで取りすぎの問題も少ないだろうし、
良く売っているサプリだから単価も安いし(2ヶ月分で500円くらい?)。

2015年3月3日火曜日

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の力価と半減期の比較


先日、地元基幹病院の薬薬連携の勉強会で
精神科のDrが、エチゾラムは依存が形成されやすいという話をしていた。

頓服、寝れないときなら良いけれど、
肩こりで1日3回飲んでいるような人はなかなか止められない。
エチゾラムは飲むと効いた感じと効果の切れる感じが自分でも分かるようなので、
患者さん自身が希望してリピーターになり、止めにくいと。

作用強度が強く(力価が高く)、半減期が短いものほど
依存が形成されやすいというのはよく聞く話なので
エチゾラムが他の薬と比べてどの程度か比較しようと思い調べてみた。


半減期は、インタビューフォームにほぼ載っていた。
 
作用強度については、GABAA受容体に対するIC50で比較しようと思ったら、
どのインタビューフォームにも載っていない。
IC50は調べるのが大変そうなので、ジアゼパム換算というのを参考にした。

ジアゼパム換算
 →ジアゼパム5mgと等価な各ベンゾジアゼピン化合物の用量。
   ベンゾジアゼピン化合物の用量をジアゼパムの用量に変換することで
   どのくらい服用しているか?が分かり易くなる。


<海外>
NHSのベンゾジアゼピンの等価量表
ベンゾジアゼピン離脱のためのアシュトンマニュアルを出しているところの等価量表
国内で使用されている物と使われている化合物が違うので、網羅できない。。
 
<国内>
一般社団法人 日本精神科評価尺度研究会
が2014年版の向精神薬等価換算を出しているらしいけれど、会員じゃないので見れない。。
ネット上に落ちていた2006年版というのを使ってみた。


 
 
↓まとめた表
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

↓グラフ化してみた
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
↓半減期24hr、等価量2.5mg以下くらいが、ゴシャっとして見づらいので軸を対数表示に
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
↓商品名の方が分かり易い?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


左下が高力値・短半減期、右上が低力値・長半減期。
左下に近いものの方が、依存が形成されやすいとされる。
(参考にした資料の数値が正しければ)エチゾラムはなかなかの左下ぐあい。


最寄のDrに相談してみるとしたら、
肩こりとか日中の慢性的なものに処方するような場合は
エチゾラムに代えてセルシン2mgでいかがでしょう?とかかなぁ。
処方日数制限も90日だし。鎮痙薬としても使われてるし。


ベンゾジアゼピン(チエノジアゼピンも)はよく処方されるだけに、難しいかなぁ。
相談するなら、短時間型と長時間型で転倒リスクが異なるか?を調べてみよう。